・・・「正解」のない医療問題・・・ | 卵巣がんになった`zaki‘の空間遊泳

卵巣がんになった`zaki‘の空間遊泳

2006年秋「悪性卵巣腫瘍の疑い」と告げられ、治療→再発転移を幾度も繰り返す。
◆受けた治療:手術4回・化学療法5ライン・放射線1回・がんカテーテル治療15回
◆現在: リムパーザ錠服用中
♫ 卵巣がんと長~くお付き合いしている、現役患者です。


私は、がん患者として何回も再発しながらも

かなり人手不足の薬剤師業界に居られる免許を持っている為に

体調不良でも、そこそこ仕事をしております。
(でも、本当に留守番程度しかできません)

で、嫌でも白衣を着れば「自分がカウンターの向こう側」の人間になります。


私が調剤薬局薬剤師ホヤホヤの新人時代は、GE品などはダンボール箱(大)3箱分で

4-5万円の値段でした。

先発品でさえ100錠一箱が↑だったのは、抗がん剤でした。

時は流れ年を追うごとに、倍倍倍・・・となり「1錠ぅン万円」の薬が登場してきております。


どんどん新薬が出るのは、大変喜ばしい事ですがハート

一方白衣を着たオバサンは??

数多くの疑問も感じているのが正直な感想です。

正解がない問題が、今を生きている私達には数多くあります。

政治・経済・福祉等々は、いろいろな方法から考えれば考えるほど

「正しい答え」は遠のくばかりの様に思ってしまいそうです。


今回紹介する記事は、大変重たい記事です。

答えは正直見つかっていません。

また、立場によっていろいろな意見も出るでしょう。

私がこの記事を載せる理由はひとつです。

「皆様お一人お一人が、考えて欲しい現実が起こっている」

受け止め方は様々でありますが、それでも考えてください。

答えはご自身お一人。家族一緒などと話し合っても・しなくても

全く良いと感じています。


長いです。



   <日経メディカルより>


緊急リポート◆薬剤費   新薬の薬剤費に学会が震撼

第56回日本肺癌学会学術集会(11月26~28日、パシフィコ横浜)

2016/1/7  小崎丈太郎   

ここ数年の新薬ラッシュにわく肺がん医療に、近く話題の免疫チェックポイント阻害薬が登場する。期待の半面、薬剤費の膨張への懸念も広がっている。第56回日本肺癌学会学術集会(会長:弦間昭彦・日本医大教授)のシンポジウム「肺癌治療法の費用対効果」(座長・國頭英夫氏、山中竹春氏)ではこの問題が取り上げられた。


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 「今日は気分がよくなる話は一切ありません。会場にお集まりいただいた皆さんは、絶望して帰っていただきたい」

 シンポジウムの冒頭、企画の責任者と座長を務めた國頭英夫氏(日赤医療センター化学療法科部長)は大ホールを埋め尽くした聴衆に語りかけた。「がんの医療費の高騰という問題について、私たちは既に周回遅れ、ここでこの問題を語り合っても結論がでないことは分かっている。でも何かやらないといけない。問題を直視して正しく絶望することが今、私たちにできること」

 がん診療は、遺伝子検査による標的の検索とそれにマッチした分子標的治療薬を選択することで、従来の殺細胞型抗がん薬だけでは得られなかった高い奏効率と長期生存を可能にしてきた。しかし、精密医療の道を歩みだす一方、高額な分子標的治療薬の長期間の使用が増えることで、医療財源や患者への負担が問題視されるようになってきた。

 そうした懸念がくすぶり広がる中、免疫チェックポイント阻害薬が登場した。先行した悪性黒色腫では手術不能になった患者の約2割に長期生存例が出ており、肺がん領域でもその登場を心待ちにしている患者は多かった。

 そして11月30日、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会ではニボルマブ(商品名:オブジーボ)について「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対する効能・効果」を追加することが了承された。近く、肺がん診療に使用することができるようになる。しかし400~500名という悪性黒色腫の対象患者数に比べ、非小細胞肺がんの想定対象患者数は約5万名。

 “進行がんを治癒させる”という、がん医療を異次元の世界へと導きつつある免疫チェックポイント阻害薬が医療財源を圧迫するという問題は、既に欧米でも問題視されている。今年の米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO)プレナリーセッションでは、消化器領域の腫瘍内科医として著名なMemorial Sloan Kettering CancerCenterのLeonard Saltz氏が、医師や患者が求める画期的な新薬とその費用の高騰をがん医療の大問題として講演するまでになっている。


知っておきたいICERとQALY
 シンポジウムは、前半が医療経済の専門家による医療経済の基本知識の解説、後半が肺がん臨床家による講演という構成だった。

 国立保健医療科学院医療・福祉サービス研究部の福田敬氏が医療技術の費用対効果の評価法を講演した。その中で同氏は医療の介入による追加的な効果を得るためにどの程度の費用がかかるかを表す指標として増分費用効果比(Incremental Cost Effectiveness Ratio:ICER)を解説(表1)。
         


さらに治療の成果を表す指標として、生存期間の延長をQOL(生活の質)を表す効用値で重みづけした質調整生存年(QualityAdjusted Life Years:QALY)を使用する例が増えており、英国国立医療評価技術機構(NICE)では2~3万ポンド/QALYを医療費の公的保険償還の目安としていると紹介した(表2)。


表2●NICEの判断方法   


 続いて登壇した北里大学大学院薬学研究科の成川衛氏は、薬価を決める仕組みを説明。薬価は画期的な新薬については原価計算方式で、同様の作用機序と適応を持ち後から登場する薬剤については、類似薬効比較方式で算定されるとして、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんの治療薬クリゾチニブの薬価は原価計算方式により決定され、同じ適応でクリゾチニブ抵抗性となった患者にも著効を示すアレクチニブは類似薬効比較方式で決定されたと成川氏は説明した。



「国家ぐるみのネズミ講」

 前半は比較的静かに推移したシンポジウムは後半、臨床家らが登壇すると白熱したものになった。
 国立がん研究センター中央病院呼吸器内科の後藤悌(やすし)氏は、「ニボルマブが肺がんに適応拡大された場合その薬剤費が莫大なものになる」と指摘した。

 後藤氏はがん治療費は高額化しているにも関わらず、高額療養費制度によってその負担が国民に見え難くなっている構造に言及、「その薬剤費は税金で賄われている。
 しかも国内総生産額の2倍の1035兆円に膨れ上がった財政赤字の最大の要因は社会保障費である。
 そのツケは子どもや孫などの将来世代の負担となり、これはある意味国家ぐるみのネズミ講に等しい」と厳しく指摘した。


 では薬価を下げれば問題は解決するのか?


 後藤氏は「新薬の開発コストは過去9年間に倍増したとされており、
 この問題はステークホルダーだけが頑張っても解決することができず、
 医療関係者、製薬企業、メディア、政策立案者がそれぞれの役割を果たすことが大切」と述べ、
 解決策として医療関係者と製薬業界には
 エビデンス・コスト・社会を意識した医療、完治を目指した研究、医療費削減を目的とした研究、類似医薬品への価格競争の導入、
 メディアには世代間格差を認識すると同時にポピュリズムの排除、政策立案者には政策の誤りに即座に対応するような“無謬性の排除”、経済成長と医療のバランスが取れた政策の立案を求めた。


「あえて高価な治療のトライアルを行う合理性」

 臨床家の2人目は、国立病院機構九州がんセンター呼吸器腫瘍科の瀬戸貴司氏。
 座長から求められた講演テーマは「あえて高価な治療のトライアルを行う合理性」。
 國頭氏が俎上に載せたのは、NPO法人西日本がん研究機構(WJOG)が進めるWJOG5610L「上皮成長因子受容体遺伝子変異がない、または不明である非扁平上皮非小細胞肺がんに対するカルボプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ併用療法実施後のペメトレキセド+ベバシズマブ併用療法をベバシズマブ単剤と比較する第3相試験」(COMPASSStudy)。
 非扁平上皮肺がんに対して、標準的な導入療法(カルボプラチンとペメトレキセドの2剤併用化学療法にベバシズマブを併用する治療を4コース実施)の後に維持療法として、標準的なベバシズマブ単独とベバシズマブ+ペメトレキセドを併用する治療法のどちらが有効かを比較することを目的とした試験である。
 かねてから國頭氏は、この試験を意義不明な試験と批判してきた。
 そして、シンポジウムでその説明のために白羽の矢を立てられたのが、肺がん診療論客として知られる瀬戸氏だった。

 COMPASS Studyでは両群の抗がん薬の総投与量を症例報告書(case report form:CRF)で収集、薬剤費を比較する計画であることを同氏は強調した。
 「現実の問題としてコストのシミュレーションはあくまでもシミュレーションであり、正確な評価はできない。
 試験に関わる薬剤コストはCRFで収集することは可能である」と同試験を“あえて”実施する合理性を力説した。

 その上で今後の課題として、承認試験の段階で臨床的ベネフィットに基づく薬価の決定と薬剤の市販後に医師主導型臨床試験を行い、その結果とコスト研究から適切な薬価の改定を行うべきであると主張した。


「国破れてがん医療はない」

 冒頭の挨拶に続き、シンポジウムの最後に再びマイクの前に立った國頭氏は、「がん治療のコストが国家を破綻させようとしている」と熱弁を振るった。

 まず國頭氏は、有効性が否定された高価な治療の放棄を求めた。
 さらに後藤氏や瀬戸氏が求めた適正な薬価算定の仕組みづくりや安上がりな治療の研究は社会的、政治的なレベルの議論が必要で、すぐに着手すべきと語った。
 患者を選択する個別化の試みは既に国民のコンセンサスが得られているものの、「見込みの薄い」あるいは「エビデンスがない」治療の選択を打ち切ることは困難を伴うと指摘。
 一定の効果はあるもののICERの良くない、高価な治療を誰が負担するのかの議論を国民レベルで話し合ってコンセンサスを得るも難しい問題であると指摘した。


 「このシンポジウムを企画した際に、効果の乏しい治療法を撃てば良いと考えた。
 しかし本当に問題なのは免疫チェックポイント阻害薬のような良く効く薬であり、使い続けなければならない薬であった。
 本当の“闇”はここにある。
 問題はより深刻なものであることが分かった」


 ニボルマブについては、従来の分子標的治療薬とはケタ違いの患者1人3500万円/年の薬剤費がかかると同氏は独自に試算した(表3)。
「有効な集団を事前に特定できず、有効例にいつまで使うか不明。無効でもpseudo-progressionがあるため止めるべきタイミングが分からないなどの問題点がある」

表3●肺がん治療薬の薬剤費の比較
      



 國頭氏が試算した3500万円/人/年(体重60kgと想定)を非小細胞肺がん患者5万人が使うと仮定すると1兆7500万円/年という巨額になる。
 しかも、ニボルマブはこの先、腎細胞がんや胃がんなど多くのがんへの適応拡大が見込まれている(表4)。
 つまり肺がんは同薬の適応拡大の嚆矢となったに過ぎないのだ。

表4●ニボルマブの主な開発状況
  


 本学術集会の抄録で國頭氏は肺癌学会の会員に次のように呼びかけている。

 「『肺がんの治療成績はまだまだ不十分であり、それを少しでも改善させるために、コストがどうかなどということは考える必要もないし、倫理的に考えるべきではない』。もし先生がそうお考えなのであれば、私は不同意である。国破れて山河は残るかも知れないが、がん医療は残らない。そして国は破れつつある。これに目を背ける人を私は医者としてというより国民として認めない」
     



土曜日夕方のシンポジウムだったがパシフィコ横浜の大ホールに立ち見が出るほどの盛況をみせた。


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これは、医療ライターさんの記事です。

ただ、このような議題で学会が行われた事は事実です。

その辺りも充分踏まえて、御一考して下さい