「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」感想

　１８４４年の発表以来、世代を越えて愛されるアレクサンドル・デュマ・ペール原作の小説を大胆アレンジ。「バイオハザード」シリーズのポール・W・S・アンダーソン監督、「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」のローガン・ラーマン主演で３Ｄ映画化。

　西部開拓時代にエイリアンが襲来し、チンパンジーが地上を支配しようと画策。我が国においても、空飛ぶ海賊船（＋変形合体機能付き）に乗った宇宙海賊がド派手に暴れまくっているこのご時勢。
　今さら少々の大胆アレンジがなされていようと大した驚きはなく、むしろ時代劇で「南蛮渡来の」とか「平賀源内先生考案」と言えば何が出てきても通用するように、某宇宙戦艦の真田さんが「こんなこともあろうかと」と言えばどんなピンチも切り抜けられるように、ダヴィンチが設計したといえば、時代考証もへったくれもなく、全て罷り通るのかといった既視感すら漂う。

　とはいえ、物語自体は原作の骨組みを守りつつ、テンポのよいストーリー構成と、ほぼ無理矛盾のないシナリオ、そして、ワイヤーやＶＦＸを用いた目にも鮮やかなアクション、観客を飽きさせない戦術劇と仕掛けの数々で、老若男女楽しめる娯楽作品に仕上げてある点は、理屈抜きに評価したい。
（前置きは随分理屈っぽいが）
　
　猪突猛進のカッペ少年・ダルタニアンの成長劇もさる事ながら、何故かチョイ悪（死語？）~~スケベオヤジ~~風味にアレンジされた三銃士と、悪役であるバッキンガム公爵とミレディ、その陰で暗躍するリシュリュー枢機卿との相関もまた面白い。
　個人的には、若き国王ルイ１３世のヘタレDTっぷりと、その妻であるアンヌ王妃の愛くるしさと聡明さとの対比が、策略と陰謀が渦巻くドス黒い世界観の中にあって、ちょうどいいクッションになっており、実に良かった。
　その後二人は、結構波乱万丈な夫婦生活を送ることになるのだが、まあその辺は「これが…若さか…！」という事で。（ﾄﾞﾕｺﾄ？）

　この手のオーバーテクノロジーものは「ツッコんだら負け」みたいな風潮があるので、「ヘリウムはおろか水素も発見されていない時代に、どうやって飛行船の浮力を得てるんだ？」とか、「そもそも、どうやって進んでるの？風力？」とか、「てか連射式も何も、フリントロック式のマスケットが実用化されたの、ダヴィンチが死んだ後だし」とかは、あえて言わない事とする。

　しかし、それを差し引いても、何でコンスタンスをあんな計算高いヤな女に設定したのか、いまいち納得がいかない。
　いくら王妃のピンチとはいえ、あれだけ田舎モノと馬鹿にし、話しかけられるのも嫌がっていたダルタニアンに助けを求め、あまつさえ接吻までブッかますとは。ヘタすりゃ、ミレディよりよっぽどの悪女ではないか。
　おかしい、アニメだともっとお淑やかで可愛らしい女の子だったはずなのに。これだから都会に染められた女は…（意味違）。

　
　さておき。
　３Dの必然性はこの際置いといて、通な映画ファンの方にはアレかもしれないけど、無条件にスカッとしたい人、剣戟戦と銃撃戦両方観たい欲張りな人には断然オススメ。
　ところでネタバレ…というほどではないが、ラストカットを観る限り、どうやら本作も続編を作る気満々らしい。いい加減、作らなかった時に恥をかくだけなので、あの手の演出はどうかと思うが、もし実際に制作されるのなら、次はやはり「鉄仮面編」をやるのだろうか。
　その際は、あのヘタレ国王が一人二役をやるのだろうか。ダヴィンチが発明した鉄仮面から、ビームか怪電波の一つも放射されるのか。いっそ、飛行船が変形合体して三銃士ロボに（以下略）。
　とにかく、期待せずに待っていよう。

　そんなわけで、小生の、この映画に対する評価は…、

　☆☆☆★★＋＋

　星３つプラスプラス！！

　好きだったなー、コレ。歌ってる人は、いろんな意味で残念なことになっちゃったけど…。てか小生、長い事アラミスは原作でも男装の麗人なんだと思ったわ。
　アレって、アニメオリジナル設定だったのね。

　ん？そういやアニメだと、バッキンガム公爵って確かミレディに暗殺されｹﾞﾌﾝｹﾞﾌﾝ…。

三銃士　王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船 (竹書房文庫)/アレクサンドル・デュマ原作