「スリー・キングス」のデヴィット・O・ラッセル監督最新作。実在のプロボクサーミッキー・ウォードと、その兄ディッキー・エルクンドの半生を、マーク・ウォールバーグ主演で映画化。
実話がベースとはいえ、どこまで真実かは存じ上げないが、それにしたって素晴らしい。派手さこそないものの、アカデミー賞をはじめ数々の映画賞受賞も肯ける、文句なしの傑作。
過干渉な母親と兄のために、いまいちその才能を発揮できず、長年くすぶり続けてきたボクサーと、ヤク中でいつも問題ばかり起こすも、実は誰より家族を愛する兄が、家族、あるいはお互いとの衝突やすれ違い、時には決裂を経験しながら、いつしか真の絆に目覚めていく姿を描いた本作。
スポーツ映画としてはもちろん、家族の在り方や、殻を破る勇気、人生の再挑戦等、様々な要素が渾然一体となった最高のヒューマンドラマとしても機能、成功している。
紆余曲折を経た二人の想いが、ようやくリング上で実を結ぶラストシーンは、苦難の果てにこそ掴み得る無上の優しさに満ち溢れた、実に感動的な結末であったと称したい。
主演のマーク・ウォールバーグが、また素晴らしい。
冴えないイモ兄ちゃん然とした男が、徐々に自信を取り戻し、成功していく様子を完璧に演じてみせたのはもちろん、いつぞやの「あしたのナントカ」など比べ物にならない、本物と見紛う迫力の拳闘戦をみせてくれる。
本作のため撮影前から数ヶ月に渡り、本格的なボクシングのトレーニングを行ってきたそうだが、あまりに役作りに熱中するあまり、結果的に本作の出演で受け取ったギャラに50万ドル上乗せした金額を、トレーナーに支払ったというお茶目なエピソードもステキすぎるが(笑)、今後の彼の役者人生においては、いい投資だったに違いない。
「名前は聞いたことあるが、何に出てたかよく思いだせない俳優」なんて部門があれば、間違いなく上位に入るであろう彼だが、ようやくそのレッテルを剥がせる時がきたようである。
クリスチャン・ベールも、負けてはいない。
ガン=カタを使いこなす第1級クラリック、あるいはゴッサム・シティの闇を司る暗黒騎士から一転、自らの髪の毛を抜き、歯並びまで悪くする徹底した役作りで、無意識に弟に依存してきたダメ兄が、家族のために一念発起、人として成長・再生していく様を熱演。アカデミー助演男優賞受賞も納得の、まさしく圧倒的な存在感を披露している。
元々この役にはブラッド・ピットがキャスティングされていたそうだが、結果論でいえば、今の配役でベターだったと小生は思う。
(というか、ファンとしてはブラピに髪の毛抜いてほしくないし 笑)
それにしても、三国連太郎氏がまだ若手の頃、老人を演じるために自分を歯を抜いたという話しを聞いた事があるが、役者とはそこまでやるものなのかと、改めて驚愕した。
まったく、役者が務まるような顔に生まれなくて、本当に良かった(笑)。
なお、実際には兄を演じたクリスチャンより、ウォールバーグの方が3つ年上だったりする。豆知識な。
個人的には、同じくアカデミー助演女優賞を受賞したメリッサ・レオもさることながら、エイミ-・アダムスのハジけた演技、特にミッキーの姉にマウントパンチをかますアグレッシブっぷりも評価しておきたい。
最後の本人登場はちょっと蛇足のような気がする以外、特に文句も苦言も言う事ナシ。もうほんとんどの映画館では上映が終了してしまったが、未見の方はDVDでも良いので、ぜひぜひご鑑賞を。
超々オススメ!!
そんなわけで、小生の、この映画に対する評価は…、
☆☆☆☆★
星4つ!!
注:↑の動画で華麗なガンアクションを披露している人と、本作でダメ兄を演じている人は、同一人物です。
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