車内販売を利用したくなる時 | 車内販売でございます。

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車内販売を15年半で11000回を利用してきた「車内販売大好きな乗客」が書くブログです。 多数の観光列車に乗り鉄しています。

 私は車内販売を利用しまくるマニアだ。九州に出かけた2/5~7の3日間で、計25回も車内販売を利用した。

 でも、10年くらい前は、さほど車内販売を利用しない普通の乗り鉄だった。車内販売だと、少し値段が高いから、駅の売店で買う時が多かった。今回は、その時の話。


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 10年くらい前、JR東日本には、新幹線を含めて特急乗り放題の切符が何種類かあった。

 現在の「週末パス」 のように、JR東日本の青森・岩手・秋田を除いた地域が乗り放題。値段は16000円とか18000円と高かったが、追加料金なしで新幹線を含めて特急乗り放題だったから、非常に重宝した。

 土曜には、東京から仙台まで往復、日曜は、東京から山形往復、更に長野往復なんてこともしたものだ。長野に行ったら1時間滞在で、善光寺に参拝するくらいで、あまり観光はしなかった。完全な乗り鉄である。


 比較的よく乗ったのは、停車駅の多い「やまびこ」だ。現在もそうだが、空いている列車に乗って、ボーッと外の景色を見ているのは、とても気分が良い。特に1両に他の客がいない状態になると、貸切だ!やったね!と叫びたくなったものだ。少しくらい座席が豪華でも、満席の列車だと、気分的にくつろげないのだ。



 ある日曜日のこと。乗り放題切符で、寒くて天気が悪かったこともあり、1日中列車に乗っていることにした。


 午前8時ごろ、空いている「やまびこ」に乗っていた。「車内販売で御座いま~す」とワゴンが通る。駅の自動販売機で、ペットボトルを買っていたこともあり、何も買わずに見送った。何もせずに、ぼーっと外を見ていたかったのだ。

 当時は車内販売に興味はなかった。値段がやや高かったから、売店で買えるなら売店を利用していた。

 

 乗り鉄をずっと続けて、この日の夜・午後8時ごろ、仙台から東京行き「やまびこ」に乗った。停車駅が多いタイプの「やまびこ」で、これなら自由席が比較的空いている。

 この列車に乗って、駅で買った弁当を食べ終わった。一緒に買ったお茶を全部飲み、更にコーヒーか何か飲み物が欲しくなった。

 私は、次の駅(記憶によると郡山)で、「はやて」に抜かれて4分ほど停車すると知っていたので、この4分停車でホームに降りて、自動販売機で飲み物を買おうと思った。

 「はやて」に抜かれる少し前に、車内販売のワゴンが、私の横を通った。でも、買わなかった。少し高いし、自動販売機が待っているからだ。

 まもなく「はやて」に抜かれる駅に到着。

 ホームの自動販売機の前まで小走りに走った。しかし・・・・買う気が急になくなった。

 そして席に戻り、折り返してきたワゴンから、コーヒーを買ったのだった。



 何しろ10年くらい前のことなので、一部は頭から抜けているのだが、急に自動販売機ではなく、高くても車内販売で買いたくなったのだ。 



 これには、こんな背景があった。

 当時の私は複数の仕事をしていたが、前日の土曜日には、元気な小学生たちに算数を教える仕事をしていた。可愛いけど、なかなか話を聞いてくれない。注意をひくために、分かりやすいプリントを用意して、指導前に思いっきり話したいことを聞いてあげて、受けそうな冗談も用意して・・・・・・でもうまくいかない。「はい、話聞こうね」「悪口言っちゃだめだよ」「ねえ、落書きしてちゃ、問題解けないよ」

 叱ると、大声で泣き出しかねないから、叱るわけにもいかない。もの凄くエネルギーが必要だった。ずっと全身を使ってしゃべり続けるから、終わったら、体力も気力も使い果たした状態になっていた。

 こういう仕事をした翌日の、乗り鉄だ。午前中は、もう何も話をしたくなくなるのだった。ボーッと外の景色を見ていたいのだ。

 ところが、1日中ボーッとしていると、逆にその反動が出てしまう。朝起きてから、話した言葉は、みどりの窓口で『次の東京行の指定席、禁煙・窓際空いてますか?』、これだけだったりする。売店では、レジに品物を無言で持っていくだけ。朝起きて12時間以上経つのに、みどりの窓口での一言しか会話しない状況だったわけだ。


 こういう状況だから、夕方になると、人恋しくなってしまったようだ。自動販売機で買うのは、何か虚しい気持ちになった。車内販売で、人から買いたくなった。

 この日の「やまびこ」では、車内販売でコーヒーを買っただけだ。

「砂糖とミルクお使いですか?」に対して「はい両方よろしく」

「500円玉でよろしく」に対して「200円のお返しになります。ありがとうございました」

交わした会話は、このくらいの事務的な会話だけだった。「寒いですね」とか「東京にお帰りですか?」といった特別な会話があったわけではない。

 でも、これだけでホッとしたのを覚えている。


 売店や自動販売機の優れている点も、もちろんある。でも、一人で長時間、列車に乗る乗客にとって、車内販売の販売員と話をするだけでホッとするのである。

 案外言われていないが、車内販売の側面には、こんな点もあるのだ。



【参考】※今回のことを明確に気づかせてくれたのが、私のお気に入りブログの「自信がなくて仕事がつらい アテンダントと鉄道員のお悩み相談室」です。↓

http://ameblo.jp/n-fujishiro/entry-11986563510.html