昭和から平成になって間もないころ、私は年1~2回、九州に「乗り鉄」に出かけていた。
当時は、車内販売には特に興味はなかったが、急行「火の山」3両編成にワゴン販売があったのには驚いた。この時が、販売員と話をした最初だった。
当時は、「九州グリーン豪遊券」という現在では信じられない最強の切符が発売されていた。JR九州の特急グリーン車を、回数制限なしで、3日間何回でも乗れて19800円だった。(価格は時期によって若干変動した)
初期のころはグリーン車に加えて、夜行急行「かいもん」「日南」のB寝台も利用できた。寝台特急「富士」で九州入り、3日間思いっきり乗ったことがある。1日目は「日南」、2日目は「かいもん」と、B寝台3連泊をしたこともあったっけ。
博多発の「日南」B寝台で、私の上の段の客とは、宮崎から肥薩線経由博多行の急行でもすぐ近く、鳥栖で降りて長崎行の特急かもめのグリーン車も同じで、「この豪遊券、ありがたいですね」と盛り上がったことを覚えている。
上の切符は、「あそBOY」の指ノミ券。乗車記念証明書は、ずいぶん素朴なものだった。グリーン車を続けて利用していた合間に「あそBOY」に乗ったので、座席がショボイと感じたものだ。
さて、当時の最新車両は「つばめ型車両」とも呼ばれる787系だ。飲み物が無料サービスで、車両も快適だったから、西鹿児島(今の鹿児島中央)と博多の間を1日2往復したこともある。
この時は、西鹿児島を午後7時ごろ出る最終つばめに乗った。終点博多には、午後11時過ぎに着く列車だ。
「つばめ」には、グリーン車の乗客に飲み物を提供したり、ひざ掛けなどのサービスを行う「つばめレディ」という客室乗務員が乗務していた。JR北海道が客室乗務員を導入する際には、JR九州に視察に行って参考にしたから、他社にも広がる元祖が、この「つばめレディ」と言って良いと思う。
この日のつばめは空いていて、熊本を発車した時点でグリーン車の乗客は私だけだった。
午後10時が近づいたころ、「つばめレディ」が私のところに来て、こう案内された。
『恐縮ですが、午後10時以降は、客室の巡回は控えさせていただきます。何かありましたら、今のうちにお申し付けください。』
更に小声で続けた。
『10時以降もそちら(準備室)に控えておりますので、何かありましたらお声掛けください』
当時は、女性の午後10時から午前5時までの深夜勤務は、原則として禁止されていた時代だった。
平成11年4月からは、女性の深夜勤務が可能になるが、それ以前は、客室乗務員もギリギリの対応をしていたことになる。
現在は、女性の深夜勤務は午後10時以降も可能になっている。
新幹線だと、たとえば東京22:04発の最終長野行「あさま555号」には車内販売があるが、これに女性販売員が乗務することもできるわけだ。
本数は首都圏の普通列車グリーン車の方が圧倒的に多い。たとえば東京駅発の東海道線だけでも、午後10時以降に13本もある。上り電車や、高崎線など他の路線も入れると、50本は超える。
50人以上の男性アテンダントを毎日そろえるのは無理だ。だから、女性の深夜労働が解禁されたからこそ、今のグリーン車システムが成り立つと言える。
深夜労働をするわけだから、弊害をなくす対策は、必要だ。現在も「早朝深夜は警備員も乗車する」「連続の深夜労働(泊まり勤務)はない」といった対策がなされている。
深夜の仕事は大変だとは思う。大変な仕事をしているアテンダントさん、客室乗務員の皆さんに、感謝!