加護亜依さん,ジャズを歌う ジャズへの真摯な傾倒ぶりと取り組みに脱帽 | SwingJournalStaff(スイングジャーナル スタッフ)のブログ

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 3月6日にご紹介した加護亜依さんのジャズ・アルバム『AI KAGO meets JAZZ-The first door』のお披露目ともいうべきライブ・ステージが,4月5日に渋谷“JZ Brat”で行われました。
 桜,春をイメージしたまばゆいばかり白さが印象的な衣装に身を包んだ加護さん。やはり華があります。存在感もそう。オープニング<ハウ・ハイ・ザ・ムーン>は緊張のせいか,スタートにややぎこちなさも感じられましたが,これが愛くるしさにかわってしまうのが,加護さんの存在感のなせる技。しかも,瞬時に軌道修正しながら自分の世界に引き戻し,着地点は完璧というのが,浅田麻央のスケーティングのようです。
 お次は,「月」をテーマにというMCから<ブルー・ムーン>に・・・しかし,メンバーとの打ち合わせの曲順ではなかったよう・・・でも,メンバーとの一瞬のアイコンタクトで「青い月」がステージ上に見事に現れました。ハプニングもパフォーマンスの中に組み込んでしまう懐の深さがジャズ。サポートを務めた新鋭ジャズメンの力量もさることながら,加護さんのジャズへの情熱と成果がはっきりと示された訳です。
 その後も,決まった作法でジャズを歌うのではなく,才気溢れるシンガー~俳優「加護亜依」の感性とフィルターを通した自由な飛躍感に満ちたジャズ・ボーカルとパフォーマンスを存分に披露してくれました。
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 ボーカルのみならずMCも聴き応え十分でしたが,中でも印象的だったのは「ずらし」について。一般的な音楽の拍をオモテと言いますが,少しリズムをずらしてウラの拍にアクセントをつけるとシンコペーションがおきます。これを身振り手振りで丁寧に説明した上で,「生活の中にもずらすのが定着しちゃった」とオチをつけて会場をさらに盛り上げました。具体的には,会話のなかでいつもじらして答えたり,本来のタイミングより先に答えたりしているそうです(これはアンティシペーション)。ジャジーだなぁ。ジャズへの真摯な傾倒ぶりと取り組みに脱帽です。そういえば俳優さんは役を演じるために撮影期間はその人物になりきると,よく聞きますね。真のプロフェッショナリズムここにありです。
「ずらし」は楽器をやったことのあるジャズ・ファンは御存知でしょうし,聴き込んでいるファンなら身体で覚えているジャズ・リズムの基本要素のひとつです。が,ジャズに興味を持って聴き始めたファンならば,彼女に教えてもらうと何だか,もっとジャズを聴いてみたいと思ったのではないでしょうか。
 守屋純子さんが著書「なぜ牛丼屋でジャズがかかっているの?」でも触れられていましたが,巷でジャズが溢れているのに,そこからどっぷりとジャズつかりたいと思う人を増やすにはどうすればいいか。答えはここにもありそうです。実は加護さんもこの点について語っていましたが,詳細は近々行うインタビューで詳しくお聴きしたいと思います。
 最後にジェイコブ・コラー(ピアノ),高道晴久(ベース),二本松義史(ドラムス)のぶっとぶようなドライブ感漲る演奏に拍手喝采!(編集長・みもり)