五郎、 吾輩も猫である
中田 安則は早稲田を出ている。それだけが唯一の自信である。生きている根源である。
人生は辛い。とにかく辛い。嫌になる。新橋の焼き鳥屋で飲むホッピーだけが唯一の安らぎである。
へべれけに酔っぱらって角を曲がる。JRの武蔵境駅から十分ばかり歩くととある静かだけが取り柄の路地裏に都市銀行から借金を背負わされ買った二十三坪ほどの家がある。
借金の総額は三千万ほどである。
どうしてそうなったしまったのか、大隈重信に訊いてみようか。
本当は全く働きたくないのである。とにかく働きたくない。仕事が嫌なのである。とにかく嫌である。
しかしながら妻の奈々枝は結構な美人である。