あなたのベットの横には、必ずブランデーとグラスが置いてあった。

その反対の横には、私が、ほとんどいつも居た。


あなたほど仕事に対して真摯な姿勢で、たとえ一瞬でも狂ったようにのめり込む人を知らない。


その狂気の時間のあとは、眠るために、あなたにはお酒が必要だった。

私も常に傍に居たのに、お酒にはおよばなかったのだろう。


今もきっとあなたの枕元には、ブランデーの香りが漂っているのだと思う。

私はもうとっくに居ないのに、ね。


悔しいな~。


もし、私の横であなたがお酒で唇を潤すことをやめていたら?

どうなっていただろう、私とあなた。


もしかして、まだあなたの横に私が眠っていたかもよ。

その場所にいる自信を得た私が、あなたを守っていたかもよ。



ある女性作家のエッセイで、こんな文章をみつけたの。


「結婚というのは残酷なことだと思う。

結婚することがどういうことなのかというと、いちばんなりたくない女に、

いちばんなりたくない人の前でなってしまうということなのだ。」


ごめんなさい。私、妙に納得してしまったわ。


あなたと結婚なんぞ、しなくて良かった^^

いやあ、あなたほどの好きな人と、そう長くは日常生活は送れないと思う。


以前から、自分の中の恋愛と結婚は別だったような気がしてならない。

そういう言葉や議論が流行る前から、自分の中の確かな価値観みたいなもの。

どうしてそうなったのかは、わからないけど。


あなたと、今いっしょに生きていない理由がわかって、とてもすっきりした。

これであなたも、すっきりしたでしょう?


この間のあなたからの質問。

これが最も的確な答えだと思うのよ。

あなたには あなたの世界がある

私には 私の世界がある

オトナの私たちには それぞれの世界がある


そのことが 少し苦しく わずかに冷たく

でも少しだけ 私たちを楽にしてくれる


オトナだから騒がないし 乱れないし ついでに泣かない


今日あったことを ちくいち全部報告し合ったりなんて しない


いつから 私たちは 余分なおしゃべりをしなくなったのだろう

いつから 私たちは この寂しい沈黙に慣れてしまったのだろう

いつから 2人のオトナの心が離れ始めたのだろうか


手を伸ばせば お互い すぐそこに居るのに

沈黙という霧の中 もう見えなくなってしまった心たち


もうすぐ また さようならが来るのかもしれない