ちょっと先にいる。(高1新蘭) | S w e e t 

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主に名探偵コナンのノーマルカップリング(主に新蘭)を中心とした二次創作ブログです。
イラストや小説をひっそりと更新中。
気の合う方は気軽にコメント下さると嬉しいです。
※一部年齢指定作品も混ざっていますのでご注意ください。



気付いたら。


いつもそうなんだ。






ちょっとにいる。






「きゃー、工藤君!!」



「かっこいい~!!!」



「工藤君、こっち向いてーーー!」




いつもより早く部活が終わったから、少しだけ幼馴染の部活姿でも観てみようかとサッカー部のいるグラウンドにやってきた時、グラウンドの前の人だかりから聞こえてきた名前にはっとした。



誰がカッコいいって?



その人だかりは見事に女の人だけだった。

同じ学年の人だったり、先輩だったり。

そしてその人たちの視線を追うと。

そこにいたのはなんと自分の幼馴染だった。







高校の始め。

高校生探偵としてのデビューを果たした新一は高校でもあっという間に有名になった。

テレビなんかにも出ちゃったりするし、事件の時はわざわざ警察から捜査協力にって迎えが来たりするし。

普通の高校生じゃありえないことにみんな興味津津。

それだけじゃなくてサッカーも超高校生級の実力で、頭もよくて、女優の母から受け継いだ容姿。

正直完璧なんだと思う。

中学生の時からなんとなく女の子から人気があるんだとは思っていたけれど。

高校に入ってそれはより一層はっきりとしたものへと変わっていった。


でも私にとってはただの推理オタクなんだけどね。



けどいつの間にか新一は私の知ってる新一じゃなくて。

みんなの工藤新一になっていて。




ずっと幼馴染で。

一緒にいて。


お互いのいいトコも。

お互いの悪いトコも。

ちょっと恥ずかしいトコも全部知ってる。



知ってると思ってた。



でもこうやって離れた所から新一の存在を見ると。



何だか全く知らない人みたいな、そんな気がしちゃう。




そう。




気付いた時。


君はちょっと先にいっていた。





「・・・・・っ。」




何だかその場にいたくなくて踝を返した時。





「あっ、・・・・蘭!」





ドキッと思わず身体が跳ねた。

そしてそのまま佇む。




「おーい!聞こえてんのか!?」




一向に振り向かない私に更に声が飛んでくる。





ドキドキ




グッと唇を噛んでゆっくりと振り向いた。






「あっ、こっち向いた!今帰りか?俺も今終わったんだ、一緒に帰ろうぜ!」




フェンスに手を掛けてコチラに笑いかける新一。

顔にちょっと砂汚れ。


軽く汗ばんでる姿が妙に男の子に感じた。




「・・・・・・・あ・・・・っ。」




返事を返そうとした時、グサッと突き刺さる視線。

さっきまで新一に声援を送っていた人たちが一斉にコチラを見ている。

その視線は新一に送っていたものとはまるで違っていた。


思わず口ごもって何も言えなくなってしまった。




「今すぐ行くから門で待ってろよ!」




新一はそんな事に気付かずそのまま部室へと戻って行ってしまった。





一向にコチラに向く視線がなくなる事はなくて私はいてもたってもいられなくてそのまま門まで走り出した。







:::




「わりっ、待たせた!」



あれから10分もしないうちに新一は門までやってきた。



ユニフォームから着替えて制服を身に纏った新一は走ってきたのかまた少しだけ汗ばんでいた。

まだ少しだけ顔に砂汚れがあるのを見つけた私は鞄からタオルを取り出して新一に差し出した。




「・・・・顔、汚れてるよ?」




「え?・・・まじ?どこ?」




新一は顔を触るけど一向にその汚れに触る事がない。

私はじれったくなってタオルを持った手を伸ばして新一の頬の汚れをふき取った。


くすぐったそうな新一に目を細めた。



「はい、綺麗になった。」


「・・・・っ・・・・サンキュ。」




私は何だかそのまま新一を見ていれなくて背中を向けて歩き始めた。



「あれ?・・・・蘭?」



いつもと違う私に不思議そうな新一。




だって。




なんか。



いつものような自分でいられない。




「あっ、そういえば蘭に休んでた時のノート借りてたよな、写し終わったから返すー・・・」



少し後ろで新一がゴソゴソと鞄をあさりだした。

私は何も反応出来ず新一の少し先を黙って歩き続ける。

鞄を持つ手に自然と力がこもっていた。



「お、あった、コレだー・・・・っと!」




ポトッ




慌てた声が聞こえてきて振り返ると新一の開いた鞄から何かが地面に落ちた。




「・・・・・・・・。」




透明なフィルムに可愛らしいハート柄がプリントされているラッピング袋に包まれたカップケーキ。



新一はそのまま何も言わずに拾って鞄にしまった。




「・・・・・・・・。」




私はその場に固まって動けなかった。



そういえば今日はどこかのクラスの家庭科の実習でカップケーキを作ると誰かが言っていた。

それもこの実習は女子だけの選択科目だからこのカップケーキを作れるのも女子だけだ。


つまり、新一はこのカップケーキを・・・・・女の子からもらった。



そういうことだ。


「・・・・ホラ、このノートだよな?」



佇んだ私の目の前にノートが差し出される。




ドクン


ドクン



胸のざわつきがおさまらない。



“俺のファンだって子からもらったんだ、すげーだろ?”



そうやって誇らしげに、ちょっと生意気に自慢される方が数倍良かった。




何も語られない沈黙程今の私を惑わすものはなかった。




“何ソレ?”




たった一言の疑問さえも声に出来ない。





返ってくる言葉を考えると怖かった。






だって、私達はただの幼馴染だから。





落とした時点で何も言わずに隠すように鞄へとしまった新一の行動が全てを物語っている。





いくら幼馴染だからといって何でも触れていいわけじゃない。





「・・・・・・・うん。」





ただそう言ってノートを受け取る事しか私には出来なかった。





その後も新一が隣で何か話していたけれど、一切耳に入ってこなかった。





グランウンドで新一に声援を送っていた女の子達。

その女の子達から向けられた視線。

新一の鞄からこぼれおちたカップケーキ。

何も言わない新一。




その映像が何度も何度も頭の中をぐるぐる回って何だか息苦しい。







「・・・い・・・・・・ん・・・・おい!蘭!」




突然大きな声で呼ばれてはっとする。



驚いて新一を見ると眉間に皺を寄せた機嫌の悪そうな新一がいた。



気まずくて視線を逸らすとー・・・




「・・・なんでそんな不貞腐れてんだよ?」



「え・・?・・・・あ・・・・べっ別に、不貞腐れてなんか・・・・。」




突然のことにソワソワと視線を泳がせていると予想もしない新一の表情が目に入ってきて、口を閉ざしてしまった。




「・・・・俺、何かしたか?ずっと面白くねー顔してるぜ?」




いつも自信満々な新一からは想像も出来ない程の弱い顔。





新一が悪いわけじゃない。



寧ろこれは私のただの独りよがり。





ただ、悔しいんだ。




ああやって、素直に新一に声援を送って。

アナタが特別ですって言える事が。




羨ましいんだ。



自分じゃない誰かが新一に何かをプレゼントしている事が。

それを新一が受け取っている事も。



悲しいんだ。



何も言わずにいる新一が。

まるで知らない誰かみたいで。



さみしいんだ。


自分の夢を叶えていく新一が。

どんどんどこか遠くへ行ってしまうんじゃないかって。





私は、まだこの胸の気持ちに気付いただけ。




何も出来なくて。



ただ幼馴染って距離に甘えてる。






ずるい。



ずるい。




私はずるいんだ。






「・・・・おい、蘭?」





え?





ポロッ



どこまで私は卑怯なんだろう。




もう頭はめちゃくちゃだった。




新一の顔が滲んだ。






「・・・・・・・っ。」






そっと新一の袖を片手で掴んだ。




「え・・・蘭?」




新一の影が私の俯いた顔を更に暗くする。



ぐっと力を入れた。





ねぇ。



この手はいつ届かなくなりますか?






「・・・・なんでもっ・・・・・・・・なんでもない・・・・なんでもないの。」



「なっなんでもないって事ねーだろ?・・・どうしたんだよ?」





新一の反対の腕が私の肩を掴んで顔を覗いてくる。




真剣な瞳に気付く。





だめ。



今はその目で私を見ないで。







「・・・・・・っ。」





ただ、怖いんだ。





いつ、「離レロ」って言われるか。





「蘭!言いたい事あるならちゃんと言えよ!」






あぁ、君はどうしてそんなに真っすぐでいられるんだろう。




あのね、あなたは私にとってただの幼馴染なんかじゃないんだよ。





「っ違うの・・・ただ・・・・なんか新一が知らない人になったみたいで・・・・びっくりして・・・・。」




「知らない人?」




「どんどん進んでいく新一が・・・・遠くにいっちゃったみたいで・・・・・・なんか・・・・さみしくて・・・・。」




「・・・・・・・・・はぁ?」





途切れ途切れに真剣に告げた言葉に返ってきたのは心底あきれた声だった。




「何、わけわかんねー事言ってんだよ?」




「なっそ・・・そんな言い方ー・・・・」




グッ



「へ?」




新一は私の手首を掴んでつめよってきて、こう言ったんだ。





「工藤新一の事を誰より知ってるのは毛利蘭なんだよ!」



「・・・・・・・え。」



「遠くにいくだぁ?じゃぁここにいる俺は何なんだよ?」



「・・・・・・・。」



「今この一瞬も時間は進んでんだ、俺とお前は一緒に進んでんだよ!誰だって同じなんだ。それにっ・・・それにー・・・・」




ものすごい勢いで口にする新一をただ見る事しか出来ない。

新一は空いてる方の手で頭をぐしゃぐしゃと掻き乱すとちょっとだけ照れくさそうに口を開いた。







「俺は今お前の目の前にいる!毛利蘭の目の前にいるのが工藤新一なんだよ!」





わかったかと新一は私の手首を掴んでいた手を振り払うとそのまま先を歩きだした。





呆然と佇む私。





「・・・・・・・・。」




新一の言葉が頭をぐるぐる回る。




そして辿り着いた答えに私は頬が緩むのを感じた。






「新一、待ってよ!」




そして私は笑顔を取り戻して新一の元へと駆け寄った。






そうだ。




だって私達は幼馴染じゃない。





今までどれだけ一緒に過ごしてきたか。








私は知ってる。







彼の幼馴染は私だけしかいないって事。






そして今ここに新一はいるんだ。







何も変わってない。





変わってないんだ。





思わず新一の横で鼻歌が零れた。





「あんだよ、さっきまであんなに機嫌悪かったくせに鼻歌なんか歌い出しやがって。」




「へへ・・・・だって、なんか嬉しいんだもん。」




「・・・・・・そっ・・・そーかよ。」





逸らした先の新一の顔は多分ちょっと照れてる。




それが何となくわかる。




この関係が私達だ。









「ー・・・ねぇ、じゃぁ・・・毛利蘭を一番知ってるのも工藤新一なの?」



「へ・・・・あ・・・・・・そっそーじゃねー・・・・・」



「あっでもやっぱりいくら幼馴染でも言えない事だってあるよね・・・やっぱりそうなると同性の友達の方が色々知ってくれてるのかな?私は園子かも・・・・。」



「・・・・・え?」



「新一もさすがに全部私に言えるわけじゃないでしょ?そうなるとー・・・坂本君とか?」



「ー・・・・・・・・・っ知るか!」





新一はそう言って怒ってどんどん先に行ってしまった。



「なっ何よー・・・そんな怒らなくても・・・・もっと仲のいい友達いるのかな?・・・・ま、いっか。」







ちょっと先にいると思っていた君は。



実はちょっと歩いたところで休憩して私が追いつくのを待っててくれていた。





追いついた時、多分君は笑ってくれる。




そう思うから。





いままでと変わらず。






私は私で君を見ていよう。





そう決めた。







おわり




:::あとがき


んー・・・


何が起きたんだろうか?


短編として書きはじめた時はsssくらいの話になるはずだったのに・・・・・


しかも中途半端に長くてまとめも悪いし・・・・


なんかお待たせしてこれって・・・・




情けない・・・・。



高1新蘭です。

あれ?新一って高校ではサッカーやってないんでしたっけ?

一年だけやってたっけ?

あれ?

ちょっと探偵デビューした新ちゃんい距離を感じた蘭ちゃんの心情。

そして好きという自覚も芽生えていて・・・・


蘭ちゃんい腕掴まれて潤んだ瞳でこんな弱い事囁かれたら男だったら告白の一つや二つしもいいと思うんだけど・・・

そうならないのが新蘭だと思う。



そして・・・蘭ちゃんの天然ぶりは・・・ちょっと新一に同情する(笑

私が動かした事だけど。

ちなみにカップケーキはどうなったのか。



蘭「ねぇ、さっきのカップケーキどうしたの?」


新一「あぁ?なんか気付いたら鞄に入ってたんだよ。」


蘭「えぇ・・・毒でももられてるんじゃないの?」


新一「何でだよ!!」


蘭「ホラ、新一に推理されて捕まった犯人が新一を恨んでこっそり・・・とか。」


新一「お前・・・・。」


蘭「警察の人に相談した方がいいんじゃない?」


新一「・・・・だったらお前が食え!」


蘭「きゃーっちょっとやめてよ!新一・・・あっ・・・ちょっ・・・やめっ・・・どこ触ってんのよー!」


ドカッ(ご想像にお任せします。)


蘭「新一のバカ!エッチ!変態!」


新一「・・・・・・うっ・・・・・そっ・・そうだよ・・・お前はこういう奴だよ・・・俺が一番よーく知ってるよ、ちくしょう!」



・・・だから何(^^)?




お付き合いありがとうございました。




2011.06.30 kako


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