Who... | S w e e t 

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主に名探偵コナンのノーマルカップリング(主に新蘭)を中心とした二次創作ブログです。
イラストや小説をひっそりと更新中。
気の合う方は気軽にコメント下さると嬉しいです。
※一部年齢指定作品も混ざっていますのでご注意ください。


これからもずっと私の想いが


これからもずっと俺の想いが


あなたに届きますように


君に届きますように


二人離れていたあの日々のあの夜・・


月は遠くで泣いていた


二人の代わりに・・・泣いていた




Who...






「新一の馬鹿!!もう知らない!!」


工藤邸のドアから泣き叫んで飛び出す蘭。


「ら、蘭・・・。」


新一は追おうとするものの足が竦んでしまった。
自分に追う資格があるのか不安になってしまったからだ・・・。
こんな自分にー・・・。


どうしてこんな事になっているのかさかのぼること一時間前。
今日は二人の想いが通じ合ってちょうど一ヵ月。
そのささやかなお祝いを・・・と二人は下校中に計画し工藤邸へと足を運んだ。
特別な事などしなくていい・・・新一がいて蘭がいて・・・
互いの存在を確かめ合えるだけでそれだけで十分。
しかし新一はある事を考えていた。
新一は蘭にまだ言っていない最大の秘密がある。



それはー・・・
自分がコナンだったという事。
もちろん新一はずっと前にその事を蘭に打ち明けようとしていた。
それは自分の躰を取り戻し蘭に自分の気持ちを伝えたあの日。
しかし蘭をやっと安心させてやれるという実感を得た瞬間、
もしコナンだったという事を話したら、その実感が幻になってしまうのではないか・・・
実際、死にはしなかったが一度は危険だと言われたこの躰はもう本当に安心なのか・・・そんな恐怖に襲われてしまい言い逃してしまった。

それを知れば蘭はずっとそのことを背負いこむことになる。

これ以上蘭を悲しませるようなことはしたくさない。

させたくない。

けれどこのまま蘭を欺きとおす自信もない。

寧ろもう隠しごとなどしたくないのだ。
その後哀の検査を受け完全に安心とは言えないが検査の結果はほぼ安全圏だという太鼓判を貰う事はできた。

何より。

蘭はその事実を受け入れることが出来るのだろうか?


言おう、言おうとすればする程もう一つの不安な思いは募る一方で・・・
そして曖昧な日々を過ごしてあっという間に一ヵ月という月日が過ぎてしまった。


この一ヵ月間はあの日々を全て埋め尽くしてしまったのではないかという程、
お互い傍にいる事を求めた。
新一は自分の腕の中で嬉しそうに微笑む蘭を見る度に自分には秘密があるという罪悪感で胸を痛ませた。
蘭はこれ以上にない程の幸福を素直に喜んでいた。
そんな蘭を見るとこのまま秘密にしておきたいという思いが新一の頭を支配し始めた。
言わなくてはいけない・・そう思うのに・・・
そしてついにそんな自分に決着をつけようと決心した。


それが今日。


「・・・新一が帰ってきてもう一ヵ月になるんだね。」


「そうだな。」


家につき落ち着いた二人はいつも並んで座るソファに腰掛け今日も寄り添って言葉を交わす。
自然と蘭の肩に回される新一の腕。
蘭をそっと抱き寄せて・・自分を見る蘭の唇に小さくキスを落とす。
赤くなりつつ笑う蘭はとても綺麗で・・・
新一はもう片方の腕も使って蘭を自分の中に閉じ込めた。


「・・・新一?」

「・・蘭・・俺・・。」


新一は言おうと試みるがどうしても口がうまく動かない。


「・・・どうしたの?」

「・・・・。」


暫く沈黙がつづく。
蘭は不思議がりながらある事に気付く。


「ねぇ新一・・・お祝いするっていっても冷蔵庫の中何もないんじゃない?」

「え?」


蘭の肩に埋めていた顔をばっと上げる。


そういえば昨夜全てのものを使い切ってしまい買い出しに行かないと・・と考えていた事を思い出す。


「・・まだ六時前だし・・買い出し行くか。」

「そだね。」


蘭はクスクス笑いながら新一の腕からすり抜ける。
一気に温もりを失う感覚。


あぁ・・まただと新一は思う。
蘭は確かに今ここに存在していて自分の目の前にいるのに、
一瞬何もなかったように感じてしまう。


「新一何食べたい??」


ニッコリ笑って問う蘭。


「・・・・・ハンバーグ」

「またぁ?本当好きね。」


玄関で蘭が新一に背を向け座り靴を履きながら呆れ口調で言葉を返す。
好きなんだから別にいいだろ?と新一が更に返そうとした時・・・、


「そういえばコナン君も好きだったな・・ハンバーグ。好きなものも一緒なんて本当似てるわよねコナン君と新一。」


ズキッ


新一は胸に小さな痛みを感じる。


「コナン君がいなくなってもう三ヵ月かぁ・・ずっと連絡ないなぁ~新一何か聞いてないの?」


背を向けていた蘭がゆっくり新一を振り返る。


「・・・・・。」


何も言えない新一。

そんな新一を疑問に思った蘭は首を傾げて名を呼ぶ。


「新一?どうしたの・・さっきから元気ないね。」


立ち上がって新一の服を掴んで心配そうに見上げる。


そんな顔で見るなよ・・
俺、お前に隠してる事があるんだ・・
心配してもらう資格なんかないんだ・・


新一がそう思った次の瞬間・・
新一はついに口を開いてしまった。

















「・・・俺が・・・コナン・・・だよ。」

















「え?」





蘭が目を見開く。





「江戸川コナンは・・俺・・・工藤新一だったんだ。」





「・・・・コナン・・君が・・新・・・一?」





「・・あぁ。」





中々飲み込めないのか蘭は少し眉を寄せる。


「・・・何で・・なん・・・で?」


そう言う蘭の俺の服を掴んでいる手から震えている事が伝わってくる。


「なんで今まで黙ってたの?」


その問いに答えた新一の返答は新一自身驚くものだった。








「言わなくてもいいかなって・・。」








案の定目付きの変わる蘭。





「・・・何よ・・それ。」





「・・私が・・新一がいない間どんな想いだったか知ってたんじゃない、知ってて・・黙って“何度も違う”って否定したくせに・・今になってそんな・・・。」





蘭の新一を睨み付けていた瞳から涙が浮き上がってきた。





「言わ・・なくてもいい・・って・・そんなにどうでも良かった事?」


「ちがっ・・・・!」


「ひどいよ・・。」


そう言った蘭の悲しみをためた瞳から一つ・・・二つと零れ落ちる涙。


最も最悪な裏切りを知らされた気分になる蘭。


「・・・・。」


新一は何も言わず、ただじっと蘭の瞳を見続ける。


「なんで・・何も言わないのよ。」


「・・・・。」


やはり反応を見せない新一に激怒した蘭は・・・





「新一の馬鹿!!もう知らない!!」





そして今に至る。


工藤邸を飛び出した蘭は大分走ったところで速度を緩めて立ち止まった。

まだ六時前だがもう冬の半ばであり辺りはすっかり暗くなってしまっている。

自分の体を吹き抜ける風にどうしようもない冷たさを感じる。

しかしそれ以上に冷たく痛んだ心。

やっと逢えた自分の大好きな人。

その人が実は一番近くにずっといて・・自分を守ってくれていた。

すごく嬉しいはずなのにとてつもなく悲しみを覚えるのはなぜなのか。




“言わなくてもいいかなって・・・”




まさかこんな言葉が返ってくるとは思わなかっただろう。
この言葉をどう受け取るべきなのか蘭にはわからない。

今の出来事を思い出せば思い出す程嫌になる。

この言葉は新一の本心だとしたら・・

今こうして想いが通じ合えた事が虚しくなる。

こんな大事な事を話そうとしなかったという事は自分は新一にとって本当はどうでもいい存在なのではないか・・





:::


私が辛い時は誰が傍にいてくれてた?


誰が肩を貸してくれて・・こっそり涙を流させてくれた?


お母さんとお父さんが別居する事になって凄く辛くて、悲しくて、苦しくて、そんな時・・


傍に居て肩を貸してくれたのは・・


大好きな幼馴染みが居なくなった時、一人強がる私を励まして、


黙って傍に居てくれてたのは・・?


喜びは誰と分け合った?


空手の都大会で優勝を決めた時、一番に「オメデトウ」をくれたのは・・


サッカーの試合で活躍した幼馴染みに「オメデトウ」を・・その幼馴染みは・・


幼馴染みから貰った喜びを一緒になって喜んでくれたのは・・


数えきれない程のいろんな事に


一緒に悩んだり考えたり笑ったり怒ったり悲しんだりそんないろんな事に手を取り合ってきたのは・・誰だった?


思い出すと・・本当にきりがない。

悔しいけど・・




全部・・・





全部が新一とコナン君。





そしてそれは同じ一人の人。





それが分かっているのに・・





私はまたあの日々の・・あの夜を繰り返してしまうの?


本当は最初から認めてるの。許せてる。


それなのに・・意地っ張りだから・・。


あの言葉のせいで新一を信じれなくなってしまっている。


新一はそんなひどい人間じゃないってよくわかってるじゃない。


ねぇ、私・・今、辛いよ。


泣いちゃうかも・・。


また・・そばにいてくれる?


もうあんな夜は二度と繰り返さない。


二人は離れて・・でも本当は近くて・・・


それを知らずに過ごした・・あの日々・・あの夜。


あの頃、私の代わりに月が泣いていた。


でも、もう泣いたりしない。


また“誰か”が傍にいてくれる。


また肩を貸してくれる。


代わりに泣いてもらう必要はない。



そうだよね?


いつのまにか今来た道を私は走りだしていた。


新一・・もう離れたくないよ。


不安に思ったのなら、聞いてみればいい。


何もしないうちから逃げちゃいけない。


本当は凄く恐い。


けどちゃんと向き合って話したい。


伝えたいことがあるのなら今伝えなくちゃいけない。


それがわかっているのだから。







:::



今俺・・何て言ってた?





“言わなくてもいいかなって”・・?





どうしてあんな言いかたしたんだ?
あんな思ってもいない事・・


いや・・


違う。


本当は本心でもあるんだ。
やっと手にしたこの蘭との関係。
話したら壊れそうで・・それが恐くて・・
このまま言わなくてもいいんじゃないか・・
そんな甘えた思いがあったから。
正直に話せばいいことだったんだ。

結局のところ
俺が蘭を信じてなかっただけじゃないか。
蘭が真実を知ったからといって
離れて行ってしまう奴な訳がない。
そんなの誰より一番俺が分かっているんじゃないか・・。
なんでこんな事今更気付いてる?


本当の強さってもんを教えてくれたのは・・誰だ?


無理をして・・辛いのを隠して強がる・・それは強さなんかじゃない。


強さってのは・・自分は辛いって・・表にだすこと。


自分に・・みんなに正直になる事。


それを知ったのはアイツの“強がり”を知ったから。


優しさは誰が伝えてくれた?


違う立場からアイツを見るようになって・・


自分がどれだけアイツに想われていたのか知った。


俺の知らぬまにたくさんの優しさをくれていた。


優しさを与えてくれたのはアイツ。


そして俺にそれを伝えてくれたのは・・もう一人の俺。


どんなに先に希望が見えなくても


前に進もう・・歩き続けようとしたのは・・


アイツが待っててくれたから。


アイツが俺は戻ってくると諦めないでいてくれたから。


そのすべてを決して忘れない。


忘れられるわけがない。


アイツに抱いた愛しさ。


傍にいって髪を撫でてやる。


抱き締めてやる。


それがやっとできるようになったのに


また・・それができない日々を繰り返すのか?道に迷い初めてしまうのか?


いや・・道がどんなに遠いとしても


俺は決めただろう?


俺はためらっていた足をついに動かし走りだす。


もう二度と


月を一人で泣かせてはいけないんだから。


今度こそ全て話す。


そして今度こそ本当に一緒の日々を過ごすんだ。











二人は走る。


お互いの想いを届け様と・・。


自分の一番大切な人に逢いたい一心で。


新一が蘭の後を追って少しした所の角を曲がった時、


ふと見上げた夜空。








満月ー・・・・・・








視線を前へと戻す。





「・・・・っ。」





そして確信する。


もう月が泣く事はないと。





「・・蘭。」





「・・・新一。」





蘭に近づく新一。
蘭はその場に立ち止まる。
新一が自分のもとへ来てくれる事を望んで。
蘭の前に立つ新一。


「・・・ごめん。」


新一が一言告げる。


「・・・・・。」


俯く蘭。


「・・あんなこと言うつもりじゃなかった。」

「・・・じゃぁ・・何を言うつもりだったの?」


新一の言葉に小さく返答を返す蘭。


「俺がコナンだった事・・その間の事・・俺が思ってた事・・全て。」

「・・・言わなくてもいい事なんじゃないの?」

「・・・本当は言いたくなかった。でも・・大事な事だろ?」

「大事な事・・私なんかに言って・・・いいの?」

「蘭だから言うんだ。」

「・・っ全部?全部話してくれる?」

「全部話すよ。」

「なんでも?」

「なんでも言う。何でも聞いていい。」

「私怒る・・かもよ?」

「怒りたいだけ怒っていい。」

「・・・新一の事嫌いになるかも。」

「・・・また振り向かせる。」

「・・・・・っ。」

「もぉ、離さない・・ずっと傍にいる。」


この新一の言葉に瞳を潤ませ首を傾げて蘭が告げる。








「・・・泣いちゃったら・・・肩貸してくれる?」








その途端蘭を抱き締める新一。


「・・・胸貸してやる。」


「・・・本当はね・・嬉しかったの。新一がコナン君って聞いて。すっごくすっごく嬉しかった。」


新一の胸に顔を押し付けたまま蘭がゆっくり口を開く。


「けど・・言わなくてもいいかななんていうから・・・新一にとって私は別に特別な存在じゃないのかなって・・」


「・・蘭以上に特別な奴なんていないよ。」


月が二人を淡く・・・淡く照らす。








「もう一人の夜にはさせないから・・これからはずっと一緒にいよう?」


:::


今聞いた言葉は全部・・全部新一の本心だよね?

信じていいよね?


もうあんな夜が来る事は二度とないよね?

ずっと一緒だよね?

また辛い時は傍に居て肩を貸して。

そして静かに泣かせて。

喜びを一緒に分かち合って。

幸せを感じよう。

これからもずっと手を取り合って行こう。

これからもずっと私の想いが

あなたに届きます様に・・・

新一に・・届きます様に・・・。







これからもずっと俺の想いが

君に届きますように・・・

蘭に・・・届きます様に・・・。





その夜・・想いの通じ合った二人が


離れて過ごす事は無かった。


そして

月は二度と泣かないだろう。


Fin




:::後書き

前サイトにてキリリクとして書かせていただいた一作です。

またもやAyu words!こちらは「Who...」名曲だよね!本当!

しかし・・・ちょっと歌詞に頼りすぎてしまった・・・

でもいまさら変えてしまったり言葉をぬくのは違和感あったのであまり修正してないです。


実はこちら作品には続編があります。

それもこの後更新したいと思います。


「離れて過ごす事は無かった」の離れない夜って?


というこの部分をお話にしていみました。

大した話ではないですが・・

よかったらそちらも見てやって下さいね。


今からお風呂入ってくるので更新は23時半回るころだと思われます。



2004.10.09. 作品



2010.11.23 kako




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