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先程からどれくらい悩んでいるだろう。
携帯のリダイヤルボタンを押してある名前を見てはまた電源ボタンを押して待ち受け画面に戻る。
どうしても通話ボタンが押すことが出来ない。
ベッドに寝転がりクッションを抱きしめながら大きくため息をついた。
:::
つい先日。
想いが通じた彼に。
どうしようもなく会いたくなってしまった。
きっと一時的な衝動なんだと思う。
けれど。
この想いは彼の気持ちを知った今、簡単に止める事が出来なくなっている。
彼の告白を受けたことで曇っていた心は一気に晴れた。
しばらくの間はその事実だけが十分に私の全てを満たしてくれていた。
でもきっとわかっていたこと。
もうこれだけじゃ足りない。
新たな問題が生まれてしまった。
「会いたい」
それはただ一言の願い。
ねぇ。
今どこにいるの?
私とあなたは同じ気持ちなのでしょう?
だったら・・・・あなたは私と会えない事をどう感じているの?
会いたい、そう思うのは私だけなのでしょうか。
愛しいあなたを想って求めているのは私だけ?
なぜ平気であなたは私のいない場所に姿を消しているの?
ほら、まただ。
心は満たされていたはずなのに。
今はギュッと締め付けられている。
会いたい。
会いたい。
あなたの声が聞きたい。
あなたの笑った顔が見たい。
あなたに触れたい・・・・。
自分でも驚くくらい。
私はあなたを好きになっていた。
ねぇ、今どこにいて。
誰と話しているの?
何もわからない。
どこにいるかもわからない。
私に知る権利はない?
彼は私の特別。
だからきっと自分は彼の特別・・・のはず。
もう一度携帯を眺める。
今度こそ押してしまおうかとリダイヤルを開いた時ー・・・
パッと画面が変わり着信を知らせた。
着信相手はー・・・
ドクンと胸が疼く。
「・・・どうして。」
目頭が熱くなる。
ねぇ、もしかして通じた?
私があなたの事を考えていたことは届いてくれた?
胸が熱くなる。
震える指で通話ボタンを押す。
通話口にゆっくりと声を送る。
「・・・もしもし。」
「・・・・・よぉ。」
少し照れたような。
ちょっと控えめなその一言が耳の奥に静かに響く。
その声が聞きたかった。
意識していないのに、涙が一粒頬をつたったのを感じた。
「・・・・・寝てたのか?」
「ううん、起きてたよ。」
「・・・そっか。」
「・・・・・・・・・。」
涙のせいで声が揺れたから寝ていたと勘違いしたのかな?
そうじゃないの。
嬉しいの。
うまく会話が続かない。
沈黙が流れる。
でも嫌じゃない。
先程とはうってかわったかのように胸がすっとしていた。
でもドキドキしてる。
ねぇ、どうして電話をしてくれたの?
「・・・・・・・あのさ。」
「うん?」
言いづらそうなあなたの声が動く。
「いやっ・・・・あっそういえば、このあいだー・・・」
けれどそれは違う方向へと変わったよう。
しばらく彼の話を聞いていると。
「・・・・・・。」
再び沈黙が訪れた。
無理にそれを破ろうとはしない。
耳に彼が微かに動く音、息づかいが伝わってくる。
それだけでなんとなく彼は近くにいると錯覚した。
「・・・・・蘭?」
「・・・・・何?」
彼が私の名を呼ぶ。
身体の中心に何かが走る。
ただ名前を呼ばれただけなのに。
それだけで私はこんなにも胸を躍らせているよ。
「・・・・・本当はこんなこと言いたくて電話したんじゃなくて・・・・さ・・・。」
「え?」
「・・・・・別に用事があったわけでもなくて・・・・。」
「新一?」
何を言われるのだろう。
ドクドクと脈打つ速さが増していく。
「蘭の声・・・・・聞きたくなって。」
ドキン。
全身が震えた。
キュウっと心が苦しい。
そんなこと言われたらー・・・
「・・・・・・っ私も新一の声聞きたかった。」
ねぇ。
私のわがまま聞いてくれる?
別にそれに頷いてくれなくていいの。
ただ私はこう思っていること。
知ってほしい。
叶えてというわけではない。
あなたを困らせたいわけではない。
ただ、素直な気持ちを隠したくないだけなのー・・・
「新一・・・・。」
「・・・ん?」
ドクンドクン
「・・・・会いたい。」
言ってしまった。
でもしょうがない。
だってあなたを想う気持ちは本物なんだもの。
こう望むのはおかしなことではないでしょう?
「・・・・・・・・。」
当然の沈黙。
フッ
笑みがこぼれた。
わかってる。
この願いにこたえはない。
「・・・違うの・・・気にしないで・・・・ただ・・・・ただね・・・・・っ」
おかしいな。
分かっていたはずなのに。
訂正をしようとしたら、何故だか目の前が滲んでしまった。
それが涙のせいだとわかったのはその何秒後だったのだろう。
「・・・蘭。」
「ごめん・・・私・・・・・っ止まんな・・・・うっ。」
ごめんなさい。
ごめんなさい。
こんなつもりじゃなかった。
新一。
やっぱり私はあなたが好きなんだ。
止まらない涙。
悔しい。
あなたを困らせることはしたくなかったのに。
「う~・・・・・。」
声を必死に抑える。
「蘭。」
その時だった。
少しだけ強い君の声が私の名を呼んだのは。
「・・・・・・俺も会いたいよ。」
「・・・・・・!」
「でも、ごめん。今はまだ帰れない、でも絶対に蘭の所に帰るから・・・・約束しただろ?」
「・・・・・・・・うん。」
「また電話するよ、出られない時もあるかもしれないけど・・・・蘭もいつでも電話してきていいから、時間だって気にしなくていい。」
「・・・本当に?」
「あぁ・・・・蘭は特別だろ?」
夢でも見ているのだろうか。
今電話ごしで話いるのは本当にあの幼馴染なのだろうか。
そしてこの言葉達は本物?
ちょっといたずらに笑ったその一言が胸を鷲掴みする。
ずるい。
こんな優しさ知らない。
どうしてあなたはこんなに〝好き"を積もらせるの?
また・・・・会いたい想いが増えてしまう。
けれど。
大丈夫。
私達は大丈夫。
「・・・・・じゃぁそろそろ切るな。」
「・・・・うん。」
「おやすみ、蘭。」
「おやすみ、新一。」
携帯を抱きしめる。
ホッと温かくなった心と身体。
瞳を閉じる。
浮かび上がるあの人の姿ー・・・
いつか本物のあなたに触れられる日を夢見て。
次に通話ボタンを押すのにそう時間はかからないだろうー・・・
おわり
:::あとがき
あれーーー?なんかおもいのほか長くなってしまった。
ショート・ショートのつもりが・・・・。
両想いになった二人のその後です。
両想いだとわかってからの別れ。
つらいねーーこれ。
やっと好きが届いたのに。
会えないって・・・。
酷すぎるぜーーー!!
こりゃ会いたくなっちゃうでしょうよ、声ききたくなっちゃうでしょうよ!
って思いながら書きました。
原作でもこんな展開あったりしないかなー・・。
たまにはラブのみの回があっても許されると思う。
むしろそれを望む。
読者として・・・絶対購読者増えるのに。。。。
ラブいのやってくれないかなーーーあーーーーじれったい!!!
ぐぉーーーーー!!
新ちゃんだいぶ素直にしてみました。
こんな風に言ってもらえたらキュンとするななんておもいながら書いたんですがいかがでしたでしょうか?
久しぶりの新作でした!!
よかったら感想待っています。
kako
新作最後まで読んでいただきありがとうございました!
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