もしこの想いを青子に伝えたならば俺は余計青子を辛くさせるに違いないだろう。
どうして俺は青子と出会ってしまったんだ??
残酷な運命。
けれど。
この俺が諦めるなんて言葉を知るはずもなく。
君と出会えたことは俺にとって最高の運命。
だからー・・・
常時~always~ 5
コイツ・・・今なんて言った?
――快斗を許す方法をくれないの?――
それって方法があれば許すって事なのか?
・・・期待どおり期待していいって事なのか?
方法――俺はソレが何なのか痛い程わかってるつもりだ。
ただ本当に言っていいのか、本当に青子は俺を・・・キッドを許せるのか。
このまま彼女の優しさに甘えていいのか。
甘えることでどんな危険が待っているのか。
ドアの前で俺が随分と考えこんでいたその時、
「・・・行かないで。」
「ー・・・っ!」
青子の消えてしまいそうな小さな声が俺の耳に届いた。
俺はいてもたってもいられずに青子を抱き締めていた。
「・・・ゴメン・・ゴメンな青子。」
抱き締めている華奢な体・・・・でも大きな愛しい存在に囁いた。
呼吸を整えてゆっくり・・そしてしっかりと次の言葉を口にした。
「俺が怪盗キッドだった。騙しててごめん。・・・でも盗みを楽しんでたわけじゃない・・・それだけはわかってほしい。」
そう言うと青子が腕の中で動きだした。
そして少し俺との間に隙間を作ると涙を拭って俺の目を見て口を開いた。
「青子・・・騙されたんだってすごく怒った。」
「・・・ごめん。」
「泣いたんだよ。一晩中。」
「・・・ごめん。」
「・・・絶対許せないって・・・思った。」
「・・・・。」
段々と口調が変わって。
「・・嫌いになるって・・思・・・った。」
青子が俯いた。
「・・けど嫌いになんかなれなくて・・・どうして?って悲しくて辛くて・・・」
青子は俯いたまま、また涙を零し始めた。
小さな体は微かに震えていた。
俺の服をぎゅっと握り締めてゆっくり顔を見上げてきた。
その瞳は涙で潤んでいた。
「・・・なのに好きでしょうがないのぉ。」
再び俺はただ青子を抱き締めていた。
青子も俺の背中に腕を回してきた。
力を強くする。
「・・ごめん。ごめん、青子。」
青子の気持ちに答えたい・・・けど答えていいのだろうか?
彼女はそれを望んでいるのだろうか。
俺はただひたすら謝っていた。
「・・・もぉ謝らないで。もぉ聞きたくないよ。」
青子が声を零した。
でも俺には君に謝る事しかできない。
青子の気持ちは凄く嬉しい。
これ以上に幸せな事はないだろう。
けれど、もしその気持ちに答えてしまったら?
青子はまた辛いものを背負う事になる。
こんな優しい奴にそんな思いを二度もさせるなんてこっちも辛い。
いっその事自分の気持ちを隠してしまおうか・・否・・・俺にそんな事が出来る訳がない。
今この瞬間、この大きな瞳から足の爪先まで全てを自分のものにしたい。
そう思ってしまっているのだから。
俺が青子を包みたい。
「快斗・・青子許してあげるからね。」
「・・ごめん。」
「快斗・・・。青子もぅごめんは聞きたくないって言ったでしょ?それに今のに答えるのはごめんじゃないよ?」
許してくれるんだな。
気持ちに答えていいのか?そうだな。
許してくれるならこう言わないとな。
「・・・ありがとう。」
「・・うん。」
それから俺達はどれくらい抱き合っていたのだろう。
けどお互いの存在を確かめ合いながらその暖かさに癒されていた。
しばらくしてから青子が口を開いた。
「快斗、青子まだ快斗に何も聞いてないよ?」
「・・今はまだ全ては話せない。でもいつかちゃんと言うから・・・それまで待っててくれるか?」
「うん。でも危ない事はしないでね?青子昨日本当にビックリしたんだから・・・ねぇ、お父さんには言えない?快斗が何のために泥棒をやっているかなんてわからないけど・・・・悪いことをするためにやってるんじゃないってことはわかるよ?けど、だったら警察に協力してもらうとかー・・・」
「・・・・・これは俺一人で解決したいことなんだ。警部を巻き込むわけにはいかねーよ。」
青子が不安そうな目で見てくる。
「・・でも・・もし・・・もしもだよ?快斗に何かあったら青子・・。」
「・・・バーロ。俺にもしもなんてあるかよ。心配すんな。」
口の端をあげて得意気に笑ってみせた。
青子はそんな俺を見て少しだけ安心した顔をしたが、また不安な色をした目になってしまった。
「・・・青子?」
「・・・あっあのね?青子・・その・・・。」
青子は俯いてしまった。
何だ?まだなんかあるのか・・えーと・・・
頭の中で今までの事を思い返す。
「あ。」
そうか・・・
俺は小さく笑って青子の手を握った。
「・・俺も青子が好きだぜ?」
青子は一気に顔を赤くした。
クスクスと俺が笑うと青子は赤いまま膨れた。
「笑う事ないでしょ?」
「・・・いや、可愛いなって思ってさ・・。」
何故だろう。
素直に言葉が出てくる。
「~なっ!?」
青子は更に赤くなる。
これ以上に愛しい存在があるだろうか・・・いやないだろう。
コイツのためなら何だってしてしまいそうだ。
青子と逢えた事は一番幸せな事だったんだな・・。
「~・・ねぇ。やっぱりまだキッドは続ける・・んだよね?」
「・・あぁ。まだやめるわけにはいかねぇんだ。」
「じゃぁ・・じゃぁ一つだけ青子と約束!」
青子が一生懸命俺に言う。
「・・青子はちゃんと待ってるから・・・だから必ず青子の所に無事に帰ってきて?お願い。」
「・・・わかった。約束する。」
青子はそれを聞くと嬉しそうな顔をして小指を差し出してきた。
「指切り!」
俺も自分の小指を青子の小指に絡めた。
「指きった!!」
青子が歌を歌い終わると同時に小指を通して引っ張りまた青子を抱き締めた。
いつまでも抱き締めていたい。
隣にいて欲しい・・。
「・・・快斗?」
あれ?そういえば・・・
「なぁ?何で俺がキッドだってわかったんだ?」
一体何をへましたんだ?俺。
青子の顔を見下ろすとまた赤くなっていた。
「青子?」
「~快斗が青子をマントで包んだ時!!!」
マント?あぁそういえば。でもなんでそれが?
記憶を辿っていくと一つの自分の言った言葉にいきついた。
“・・青子は俺が守るから”
「・・・聞こえてた?」
「うん。」
青子が顔を赤くした理由にも納得できる。
まぁ本心だし。
今更照れはしない。
しかし青子はそういう訳にはいかないようで赤くなって落ち着きがない。
可愛らしいというかなんというか。
自然と笑みが溢れてきてしまう。
目の前の愛しい存在を黙って見ているなんてやっぱり出来なくて・・
「でも、本当はねー・・・?」
傷つけて悲しませて不安にさせてしまったけど君は許してくれて・・
また鮮やかに色付きだす世界。
そして周りはスムーズな動きや音を取り戻す。
「絶望」から救い出してくれたのはやっぱり君で・・。
俺は全てが君から始まる。
これからの俺の帰る場所は君の隣。
俺の隣に常時居座るのは苦痛と悲しみじゃない。
俺の隣には常時君という愛しい存在が居座る・・・。
Fin
:::後書き
終わった・・・
結局ラスト変わっていません。
チューするところがカットされただけです。
なんかこのころのkakoの脳内ではとにかく
耐えきれずチューしちゃうっていう妄想が多かったんですよねー。
原作っていいとこで止められちゃう「あーーじれったい!」
ていうのが多いじゃないですか。
だからいっそ止めないよ、私はという反抗意識?ですよね。
今ではじれったさを作ることの大切さも学びましたが。(どんだけだよ
まー妄想世界だし、何しちゃってもいいんじゃないかってことで!
さーラストの青子ちゃんの台詞の続きは?
キッドの声が快斗で「青子」と呼ばれて。
それだけで十分快斗=キッドにつながったけれど・・・
でもそれだけじゃなくて・・・・・
ご想像にお任せします。
2004.10.26. 作品
2010.11.14 kako
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