写真
ここは俺が居候している毛利探偵事務所。
その自宅の俺の幼馴染である毛利蘭の部屋だ。
俺がここにいる理由。
それは現在台所で昼食を作っている蘭に先程まで読んでいた雑誌を、部屋に置いてきて欲しいと頼まれたから。
小・中・高と成長するとともにだんだんに訪れなくなってしまった彼女の家。
それなのに今はこうして彼女の部屋にまでなんの抵抗もなく入ってしまう。
そんな自分一つ溜息をつく。
本棚の雑誌のスペースに頼まれた雑誌を戻した。
ふと、後ろにある机に目をやると
いつか蘭と行ったトロピカルランドで一緒に撮った写真を見つけた。
そっと手に取る。
写真の中の俺と蘭は無邪気に笑っていた。
あの時は自分がこんな事になるなんて思いもしなかった。
近くにあるスタンドミラーを振り返る。
写真の俺と今の俺を見比べる・・・。
この事実を知らされると、無償に逃げ出したくなる。
小さな体、小さな手・・・これは本当に俺のものなんだろうか・・・。
一度手に入れてしまった、高校生の体と体力、高校生探偵としての充実感。
地位と名声。
今の自分を、本当に無力に感じる。
写真の中で笑っている蘭を指でなぞった。
この体になって知りたくても、知ることの出来なかった蘭の気持ちを簡単に知った。
聞いた時は本当に嬉しかった。
自分が幼い頃からずっと大切に想っていた子も、自分と同じ気持ちだったんだから・・・。
けれど未だにその気持ちに答えてやれない・・・。
どうしようもなく大事で
どうしようもなく好きで
どうしようもなく愛しいのに・・・
彼女を泣かせて、悲しませてしまうことが一番辛いのに・・・・
無力だ。
どうすれば蘭は笑う？
そんなのわかってる。
誰かに聞くまでもない。
“いつか・・・いつか必ず絶対に・・・死んでも戻って来るから・・
それまで蘭に待ってて欲しいんだ・・”
決して嘘じゃない。
だからそれまで・・・・・
「コナンくーん！！！お昼出来たよぉー！！」
「はぁ～い！！！」
写真を机に戻し、蘭の元へと駆け出す。
写真の中だけでもいいから・・・無邪気に笑ってて・・・。
いつか必ず、本当にその笑顔を取り戻してみせるから。
Ｆｉｎ
：：：後書き
前サイトでの最初の作品です。
うわーーー。
痛い。
痛すぎる。
恥ずかしい・・・・。
これでも修正したんですが・・・・
ものたりない一作です。
２００４．０８．１９ 作品
２０１０．０６．０６ kako
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