「気」と量子論 光は波か、粒か? | すずき院長のブログ

「気」と量子論 光は波か、粒か?

「気」は生命エネルギー? で述べたように、日本における「気」の概念は中国の道教思想に始まり、漢方、鍼灸、気功などの東洋医学によってもたらされた。


東洋医学の入門書には、「気」は生命エネルギーであり、人体の「気」の流れの停滞が疾病を発症させるとあるが、その実体は科学で解明されていない。


一方、ドイツで発達した振動医学は「気」の滞りの改善を目指す治療医学であり、大規模な研究施設もあるという。西洋のドイツで東洋の「気」の流れを真正面から研究し、日本の西洋医学では「気」の存在すら認めないというのも皮肉な話である。


ヴィン・フリート著『ドイツ発「気と波動」健康法』によれば、振動医学を確立したパウル・シュミット氏は量子論における波動に「気」のヒントを得たという。


「気」を探求する上で量子論を避けて通るわけにはいかないようだが、物理は余り得意ではない。そこで、素人向けの入門書である佐藤勝彦著『「量子論」を楽しむ本』に沿って話を進めることにし、ややレベルの高い『図解雑学 量子論』の解説を一部引用した。活字が苦手な人はイエンスチャンネルの動画『猫と月とサイコロ』 が分かりやすい。



光は粒か波か?話はここから始まる。


まず粒(粒子)と波(波動)の基本から。


人体を含めたすべての物体を究極まで分解すると電子やクォークなどの素粒子になる。つまり、すべての物は物質の最小単位である素粒子の固まりということになる。


ところが波は違う。サッカーで湧き起こるウェーブは動く物体のように見えるが、実際には人が順番に立っているだけである。同様に、海の波は水が、音波は空気が振動して伝わる。つまり、波は状態であって、波という物質が存在するわけではない。


以上を念頭に置く。



さて、今から300年前、ニュートンは光が物体に影を作ること、太陽光は振動する媒体がない宇宙から飛んでくることから粒であると主張し、ホイヘンスは光が交差しても素通りするから粒ではないと反論した。

200年前、トーマス・ヤングは光を二重スリットに通すとスクリーンに干渉縞(かんしょうじま)が出現することを示し、光が波の性質を持つことを明らかにした。これは大変重要な実験なので、追って詳しく説明する。


その後、電磁気学において光は電磁波の一種、つまり波として分類された。



光は波である。


波の高さを振幅、波の長さを波長、1秒間の波の数を振動数と呼ぶ。太陽光も燃える炎も振幅と波長の異なる光の束である。光の強さは振幅に比例しながら連続的に変化するが、光の色は波長もしくは振動数で決まる、これが物理学の常識であった。


ところが100年前、その常識に変化が生じた。製鉄業が盛んであったドイツにおいて、溶鉱炉の光の強さと温度の関係を波長ごとに測定していたマックス・プランクは、苦心の末、


   E光のエネルギー= h(プランク定数)×ν(振動数)


という式を導き出した。


簡単に言うと、光のエネルギーは連続した値を取る波ではなく、とびとびの値を取る粒の固まりという発想にたどり着いたのである。そして、エネルギーの最小単位(hν)を「量子」と名付けた。これが「エネルギー量子仮説」であり、量子論の幕開けであった。


少し補足すると、光のエネルギ-はアナログではなくデジタルで表されること、デジタルで表されたエネルギーの最小単位が量子であるとイメージしてもよい。



ここでアインシュタインが登場する。


彼は「エネルギー量子仮説」に影響を受け、光をとびとびの値のエネルギーを持つ粒と考える「光量子仮説」を発表した。アインシュタインは「相対性理論」で有名だが、実は「光電効果」の謎を解いた業績でノーベル賞を受賞したのである。


少しややこしい物理の話になるが、できるだけ簡潔に説明する。


光電効果とは金属の表面に強い光を当てると電子が飛び出す現象を指す。この現象には、強い光を金属に当てると飛び出す電子の数が増える、振動数の大きい光を当てると飛び出す電子のエネルギーが大きくなるなどの特徴があった。


ところが、光を波と考えると、光のエネルギーは振動数とは関係がないので、振動数の大きい光によって飛び出す電子のエネルギーが大きくなる光電効果の説明がつかない。


アインシュタインはこう考えた。


光電効果は光の波ではなく、光の粒(光量子)が電子をはじき飛ばす現象である。強い光は光量子の数が多いので飛び出す電子の数が増え、振動数の大きい光は光量子1個のエネルギー(hν)が大きいので飛び出す電子のエネルギーが大きくなると。


日常で言えば、太陽光発電ができるのは、強い光に含まれる多くの光量子がソーラーパネルの金属表面に当たって多くの電子が飛び出すから、紫外線が皮膚に日焼けを起こす理由は、振動数が大きく強いエネルギーの光量子がメラニン産生細胞を刺激するからである。



まとめよう。


とびとびの値を取って変化する物理量の最小単位を量子と定義する。


プランクとアインシュタインは光エネルギーの量子化(連続的な量をとびとびの数値で表すこと)を行い、波である光に粒としての性質があることを明らかにした。


このように、量子論では常に物質の粒子性と波動性が問題になるが、一方で物質波(すべてのものは振動している)という概念があり、これが振動医学に強い影響を与えたらしい。


すべてのものは振動している?


量子論の不思議な世界を少しだけ覗いてみることにしよう。