電磁波を測る、高周波の測定は至難の技! | すずき院長のブログ

電磁波を測る、高周波の測定は至難の技!

はじめに

最近、携帯電話の基地局建設に対する反対運動が増えていますが、電磁波問題に関
する社会の認知度は依然低いのが現状です。何故なら、家電製品に囲まれ、携帯電
話を使い続けても、殆どの人が身体に何の不具合も感じないからです。

例え一部の人が電磁波の過敏症状を訴えても、厚労省が病名として認めないため健
康被害の実態調査もされていません。総務省も環境省も現行の規制値で問題なしと
し、電力会社も携帯電話会社も何の対策も立てず、家電メーカーも電源プラグの極
性を明示することさえしません。電磁波に対する危機意識が生まれる状況にはない
のです。

改めて日本の規制値を見ると、低周波で電界は
3000V/m、磁界2000mG とありま
すが、これは人間に
刺激作用が起こるか否かで設定された数値で、それ以上の意味
はありません。小児白血病に関する多くの論文が 34mG の磁界環境を問題にして
いることを考えれば、
スウェーデンMPRⅡが示した電界 25V/m、磁界 2.5mGという
ガイドラインが妥当な数字であることが分かります。

日本の電子情報技術産業協会(
JEIDA)もこれに習ってパソコンなどの画像端末
VDT)に対して
電界 50V/m、磁界 2.5mGという推奨値を示しています。つまり、
日本には 2500mG 2.5mG という千倍も掛け離れたダブルスタンダードが存在す
ることになります。

次に、
高周波に対する規制値を考えましょう。

基地局や携帯電話などの高周波は、電力密度として 1mW/c㎡、SAR値で 2W/kg
基準となっています。これも人間に発熱作用を起こすか否かで設定された数値で、
それ以上の意味はありません。

世界を見ると、イタリア、スイス、ポーランド、ロシア、中国などでは電波規制を
日本の百分の一程度に抑えています。一方、地域や民間団体ではさらに厳しい規制
値があり、オーストリアのザルツブルグ市では室内で  1μW/㎡、屋外で 10μW/
という基準を設けています。

特に、生物と環境の間の相互作用を重んじるドイツ建築生物学会(バウビオロギー)
では 0.1μW/㎡ という厳しい基準を示しています。日本の規制値である 1mW/c
1000μW/㎡ですので、ザルツブルグ市の室内基準の一千万倍、ドイツ建築生
物学会の基準値の一億倍強い電波でも容認しているわけです。
信じられない話ですが、これが事実です。

以上を踏まえて、今回の本題に入ります。


高周波の測定

家電製品の電磁界はトリフィールドメーターなどの簡易測定器である程度の目安が
付きますが、高周波の電磁波(電波)を測定することは容易ではありません。発生
源が無数で、周波数も様々だからです。

一般的に人体への影響が懸念される電波は800メガヘルツ以上のパルス変調高周波
で、スマホ、タブレット、WI-FI、携帯基地局、コードレスホンなどがそれに当た
り、通常のラジオ波やテレビ波(アナログ、地デジ、BS放送)はそれに当たりま
せん。

エレクトロスモッグメーターなどの高周波測定器は、電子レンジから漏洩するマイ
クロ波やスマホ、コードレスホン周囲の電波の大凡の強さを測ることが可能ですが、
測定範囲が広く、800メガヘルツ以下の電波(アマチュア無線など)も拾ってしま
います。

特に携帯基地局からの電波の影響を調べるには、指向性アンテナを搭載し、かつ
800メガヘルツ以下の高周波をカットできる高性能の測定器が必要になるためプロ
の測定士にお願いしました。ここでは、結論だけを簡単に述べます。

携帯基地局が多い地域のマンションの8階の窓際で100700μW/㎡、1階の窓際で
1630μW/㎡と大きな差がありました。或る一軒家の2階部分では0.4μW/㎡と計
測されました。

一方、スマホでは受信時で600μW/㎡、通話中で300μW/㎡前後でしたが、コード
レスホンは受信時で20万μW/㎡、通話中で2万μW/㎡もの高値が計測されました。
因みに、電子レンジ使用時に漏洩するマイクロ波は、機体から5cm60万μW/㎡、
30cm2万μW/㎡、1m離れても2000μW/㎡というとてつもない値になります。


高周波の測定と評価

問題はこれらの値をどう評価するかです。
冒頭でお話したように、日本の電波規制は1mW/c㎡ 即ち 1000μW/㎡ですので、
電子レンジで 60万μW/㎡ 暴露されようが、部屋で常時 700μW/㎡ の電波を浴
びようが法的には何の問題もないわけです。

しかし、多くの研究者が引き合いに出すザルツブルグ市の規制値、室内で
1
μW/㎡ を基準にすれば、スマホで300倍、コードレスホンで2万倍、電子レンジ
では60万倍にもなります。

ドイツ建築生物学会では0.1μW/㎡以下は問題なし、5μW/㎡以上で問題あり、
100μW/㎡以上で非常に問題ありとしていますので、少なくとも都心部のマン
ションの高層階は要注意、スマホやコードレスホンも短時間の通話が望ましい
わけです。

電子レンジから漏れ出るマイクロ波はパルス変調波ではありませんが、電力
密度が尋常ではないため注意の対象となります。


高周波の電磁波対策のポイント

● 携帯基地局の多い都心部のビルの高層階は電波の通り道になっている
可能性が高いので、電磁波過敏症の人には低層階または一軒家が適し
ている。

 特殊なカーテンにより外部からの電波を遮蔽することは可能だが、
室内で発生する高周波(電子レンジ、コードレスホンなど)の逃げ場
がなく乱反射するリスクもあるのでプロの測定士に相談した方がよい。

● スマホの通話はイヤホーンやスピーカーホンの使用でパルス波暴露
のリスクが減る。耳に当てて直接話すときは短時間とし、受信時と
発信時は特に電波が強いので身体から離しておく。

● コードレスホンはスマホより遙かに電波が強いので長電話は禁物。
その殆どがファックス付き電話に付属する子機なので、コード付き
電話の単品
に変え、ファックス機能付きのプリンターを利用すれば
リスクは大きく減る。

● PCとプリンターの接続にはケーブルを、家族のPCネットワークには
コンセントLANを用い、その他のWI-FIも使用しないことでパルス波の
リスクを減らす。

● 電子レンジは低周波の電界・磁界と漏洩するマイクロ波のすべてが
極めて高く、電磁波の三冠王とも称される。調理中は決して覗かず、
最低1m以上、妊娠女性やお子さんはさらに離れること。

 電磁波防護グッズについては、金属繊維などを織り込んだ特殊な生地
などの製品を除けば、シール、カード、アクセサリーなどの防護グッズ
の効果は疑わしい。


最後に一言

一口に電磁波の問題と言っても、低周波の電磁界(送電線や家電製品)と高周波
の電波(スマホやWI-FI)は全く別のもので、対処方法も異なります。家電製品の
電磁界対策は前回記事で少しまとめましたが、空中を飛び交う電波については、
正直、逃れようがないのが実情です。

最近、PC
の機能がスマホやタブレットに急速に移行し、それに伴い基地局やWI-FI
が日本中で激増しています。とは言え、その利便性は勿論、災害時にも欠かせない
ツールでもあり、今更、規制しろというのも現実的ではありません。

ただ、近い将来、電磁波の海(エレクトリック・スモッグ)による健康被害が大き
な社会問題となることは疑う余地がなく、そのことは心の隅で認識しておくべきで
しょう。個人的な見解ですが、人生の半分を費やす自宅だけは、少しでも電波の
発生と暴露を減らすように心掛けてください。

                 (このシリーズはひとまず終了します)