人呼んで筍医者 田杉白玄 肝試し | kanotomiuozarainenkokidesuのブログ 人呼んで筍医者 田杉白玄

人呼んで筍医者 田杉白玄 肝試し

 女講釈師 源流斎巴(げんりゅうさい ともえ)は源の木曾義仲の妻、巴御前の末裔と称している。それが眉唾だろうが何だろうが騙されているのも江戸っ子の粋なのですが、納得しない野暮な客もいる。巴が講釈を始めようとすると「講釈師、見てきた様な嘘をつき、よう木曾の百姓女」と決まって声を掛ける。客の言葉にいちいち腹を立てていたら講釈は出来ないと解っていても堪忍袋にも限度がある。困りぬいて田杉白玄に相談に来た。「先生、あたしはこう見えても巴御前の末裔と名乗っておりますので男の一人や二人、懲らしめるのは造作もないのですが」「じゃあ懲らしめればいいじゃねえか」「でも先生、相手はお客様ですから手出しは出来ません。手出しをしたら講釈が出来なくなります」「講釈をしているところで懲らしめちゃいけないが場所を変えればいいんだ」「何処で懲らしめればいいんですか」「大勢の皆が見ている前がいいな、そのたちの悪い客は何て奴だい」「人はごろつきの平助と呼んでいる嫌われ者です。でも岡っ引きなどには、へいこらへいこらしているので、へいこら平助と陰口されてもいるんです」「それじゃあ平助を懲らしめても誰も源流斎巴を非難しないな」「皆拍手喝采ですよ」「それなら高座で巴御前が平家のへいこらの平助を肝試しに誘って怖気ずく平助を皆の前で懲らしめる講釈を演じろ」「どんな話をすればいいんですかね」「それは巴さんが本職だ、たとえが威張りくさっている平助を鬼退治の肝試しに誘うんだ。すると平助は鬼なんていないと言う。なら巴が鬼になる退治できるかと言うと、しゃらくさいと平助が怒って、その夜、肝試しが行われ平助が巴御前に巴投げで投げられ、馬乗りになった巴が平助を組み敷き、小便で濡れてるよと鼻を抓んでけらけら笑うという講釈をしてみな」「そうするとどうなりますかね」「平助は自分が馬鹿にされたと思い怒るだろう」「そうでしょうね」「そうしたらこう言うんだ、これは昔々の源氏と平家の話ですが何ならへいこらの平助さん、この源流斎巴と肝試しをいたしませんかと尋ねるんだ、するとな多分、女子供とやれるかと言うから、そうしたら皆さん平助さんは巴が怖くて怖気ずいているようですから許してあげて下さいと言うんだ、そうすればやってやろうというから、皆さん証人ですよ明日夕刻五ツ(午後七時頃)隅田堤で肝試し、巴は鬼の面を被って平助を成敗します。と言えばいい」「でも先生,、平助が小便しなかったらどうしましょう」「そうさなあらかじめ誰かに水を入れた手桶を持ってて貰って、投げ飛ばして馬乗りになったら手桶を受け取って褌の上かか掛ければいい。そして鼻を抓んで怖くておしっこ漏らしたのかいとけらけら笑って立ち上がれば終わりだ」「そうですか、やって見ます」田杉白玄先生の段取り通りとんとんと進み、隅田川堤は巴と平助の肝試しを見ようと大勢集まった。鬼の面を被った源流斎巴の講釈師のとおる声が響き渡った。「怖気づかず平助、よく来た」と叫ぶと巴、鬼の面をかなぐり捨て、平助の着物の襟を掴むやいなや自ら体を沈め両足に平助を乗せ放り投げる巴投げ、投げるやそのまま馬乗りになって手桶を受け取り平助の褌の上から水を掛けた。平助か細い声で「何しやがる」すると巴、鼻を抓み「平助、怖がって小便漏らしてる」とけらけら笑った。巴が馬乗りから立ち上がって帰ろうとすると平助「巴さん、帰らないでくれ、腰が痛くて立てねえんだ」「そうかいそれは気の毒だね。皆さん平助は小便だけでなく腰もぬかしたようですので褌をはずしてやりました。これから巴が担いで帰りますと言うと平助を背負って去っていった。「それからどうなった」と田杉白玄が巴に聞くと「どうもこうもありませんよ、女講釈師に投げ飛ばされて小便まで漏らしたんじゃ世間に顔向けが出来ないと平助、それからずうっと家にいて出て行かないんです」と巴は嘆いている。