長女は時々仕事の帰りに自分でおやつを買いに行く事が有る。



10月中旬、いつもの様にお店に着いたと連絡はあったのだが


なかなか帰宅しないのでどうしたかと思っていた所に電話。



電話の主はなんと警察官。



「実は娘さんが売り物を食べてしまった様なんです。」


「えっ!売り物を食べたんですか?」


「ほかにも触ってしまったものもある様で、今から来られますか?」




彼女はちゃんと売り物と試食の区別は出来てるし


お金を払って物を買う事もきちんと分かっている。


だからこそ一人で行かせてるのだ。



勿論急いでいきました。



彼女が居たのは事務所とかでは無く別フロアの隅っこ。


警察官三人に囲まれた長女が私に気付き


「トイレ~~」と言うと


どこからか今度は婦人警官一人がやってきた。



警察官の数にも驚いたが、側には店の警備員が二人待機。


それを目にした私は少なからずパニック状態にあったと思う。



警察官から経緯を聞いていると


スーパーの責任者とやらがやってきた。


お客様からうちの警備員の方に

売り物を食べてる人が居ると通報がありまして

警備の者が確認に行った訳ですが、

従業員にも確認した所、他にも触っていたと言う事ですので

その分に関してもお支払いいただきます」


「はい勿論です。本当に申し訳ありません」


何度も何度も頭を下げる。



「じゃあ後はお店と話し合って下さい」と警察官は立ち去り


店の責任者と私と長女は売り場レジで商品の精算。



運ばれてきた大量のパック詰めを見て愕然とした。



これ全部触った?・・・・・売り場に出てたの全部じゃ・・・・・・



かき揚げにエビ天ぷら、かぼちゃに白身魚にちくわ等々。


合計約8千円。


長女の工賃の約一か月分。

「袋はありますか?」だって。 ここ、有料なんだよね。


持ってた袋になんとか詰め込み出口に向かうが


その後ろを一人の警備員がずーっと付いてくる。


誰かと連絡を取りながら、出て行くまでずーっと。


仕方ないのかもしれないが非常に気分が悪い。



持ち帰った大量の揚げ物。


大量の揚げ物で部屋は油臭く、

それだけでもう胸焼け。


次女は長女を責め立てる。

「何やってんの!馬鹿じゃないの!」


自分が責められてる様で益々落ち込む。


ため息ばかりつく私を見た三女は

「ため息ついたってしょうがないじゃん。

もうお金は払ったんだしさ。

あ、何か音楽でも聞く?何がいい?」と色々曲をかけだす。




家に戻ってしばらくして少し冷静さを取り戻した私は

思いきって店に電話をし、さっきの責任者に言った。


「従業員の方は触っているのに気付いた時点で

すぐ注意をしたんでしょうか。注意したのに触るのをやめず

食べてしまったのか、その時の詳細を知りたいんです」


「分かりました。ただ、シフトの関係で

すぐには返事が出来ないかもしれませんので」


ここで少しおかしいと思った。

すぐにきちんと説明が出来ないなんて。


その時の詳細をちゃんと聞いてないのか、と。



4日後に連絡が来ました。


「従業員に確認した所、従業員は見ていなかったと言う事で

ビデオで確認した所、何を触ったかという詳細までは良く見えないのですが

殆んどのバットに手は伸びてるんですよ。ですのですべて下げさしていただいた訳です。」


そして

「ビデオはお見せできないんですが」と付け加えた。



長女が売り場のモノを取って食べてる所は?


聞きたかったが


そうですか、分かりました。ご迷惑おかけししました。と電話をきった。




ジュースを買い終えた長女に声をかけた。

すると長女が騒ぎ出し、お客さんにちょっかいを

出しそうだったので警察を呼んだ。



しかし、警察を呼んで私が来るまでの間に

ビデオ映像を見るなどして

きちんと確認をとる事は出来なかったのだろうか。


もしもお客の見間違えだったり、勘違いだったとしたなら?


大手スーパーにしては余りにもずさんな対応ではないか。


それともこういう事って当たり前に普通の事?





ビデオ映像に長女が触ってる映像が無かったとしたら

ちゃんとそれを認めその事については謝罪してくれたんだろうか。


触ったものをお客さんに提供できないと言う店側の言い分はもっともだろう。
しかし、それなら最初の時点ではっきり言えばいいのだ。

触っていた可能性があるので店としては他のお客に提供できない。

なので売り場にあったモノについては買い取って頂きます、と。

私が買ったのは

「触ってたモノ」では無く「バットに並んでたモノ全部」なんだから。


そしてなにより、長女は健常者とは違って自分の気持ちをきちんと

言葉には出来ない。

勝手かもしれないが、もっと慎重に対応してもらえなかったのだろうか。



長女は最初食べてないと言った。


「食べたんでしょ?食べたんだよね?」「食べました」


「何を食べたの?」「分かんない」


「分かんないじゃないでしょ。何を食べたの?」「イカ」


「イカを食べたの?」「食べてない」


「じゃあ何を食べたの?」「エビ」


こんな感じなのだ。



何度かのこのやりとりで長女は「食べてない」と言わなくなった。


本当にしてない時はどんなにしつこく言っても

「してない」と言い続けるのだ。


間違いであってほしいと思っていたが、

今回の事は事実のようだ。


「お腹が空いた」

それが理由らしい。


娘がこんな事を仕出かすとは勿論思ってもいなかった。


でも、思いもよらない様な事をする事が有るのも事実。


信じたいけど信じ過ぎてはいけない。


ひょっとしたら長女は今までもそんな事をしていたのかもしれない。

店側の対応には不満が残るが

通報した人には感謝しなくてはいけないのかもしれない。



時には疑い、彼女の行動を観察しなくてはいけないと改めて思った。


長女自身も、間違った事をするとどうなるか


身をもって分かったであろう。