グリズリー・ベアの新作。隆盛を極めたブルックリン系の中心的存在としてリリースした3作目「ヴェッカーティメスト」は、その年のベストアルバムに軒並み選ばれた。聞けば聞くほど奥深く感じられる繊細なレイヤーサウンドは見事としかいいようがなく、当時の聞き手に刺激を与える作品として大きく評価された。
それから3年。各メンバーのソロ活動を経ながら制作されたニューアルバムは中断、再開を繰り返す中で自分たちが求めているものを発見し、そこからは一気に出来上がったという。各々が繊細な感覚を持ったクリエイターであることを考えると、その着地点を見つけることはなかなか難しいだろう。
まず、1曲目Sleeping Uteの泥臭くエモーショナルなテイストに面食らう。どことなく性急さを感じさせるギターアンサンブルが楽曲に緊張感をもたらしている。続く Speak In Roundsも似たテイストで、メロディーがより前面に押し出された印象。Adelmaで一息入れつつ次のYet Againは彼らの楽曲の中で最高にメロディーが立った1曲。前作まではメロディーに到達するためのルートを巧妙にアートに描いていたのが、今作ではストレートに、メロディー本来のダイナミズムを味わえるようになっている。
前作は多彩なアイディアを楽曲に凝縮させていたが、今作は共通認識となるアイディアを絞り込み、そこに向かって直情的に向かっていくような感がある。それ故のこのエモーショナルさ、なのかもしれない。圧倒的なサウンドスケープはここではやや後退気味ではあるものの、代わりにはんぱない骨太感,洪水のようなサイケデリアがアルバム全体を貫いている。個人的ハイライトは狂気がかったストリングスが美と危うさを醸し出すHalf Gateと旅立ちへの覚悟を組曲的に歌うSun In Your Eyes。このラスト2曲は圧巻。
★★★★☆(01/12/12)