NMEの50 BEST NEW BANDS OF 2010の第一位に選ばれたユニット、Best Coastの1st。LAで同じバンドに所属していたベサニーとボブの2人組。ちなみにユニット名は西海岸は最高という意味を持つ。
その名の通り、カリフォルニア系のサーフ・ポップを基調にローファイなギターサウンドを聴かせる。雰囲気は60~70'sのガールズ・ポップに近いものがあるが、リヴァーヴのかかったギターサウンドの使い方は、シューゲイザーやグランジなどの洗礼を受けた後であることを感じさせるような熟知振りを伺わせる。
また、ベサニーの艶っぽさとけだるさが同居したようなヴォーカルもこのサウンドと実に相性が良い。初めて聴いたときは、Johnny Boyのようだと思った。強烈なフックを持つメロディーに、女性ヴォーカル、ウォール・オブ・サウンドの影響・・・彼らは今何をしているのか、好きだったんだけどなぁ。
話をBest Coastに戻すが、アルバムを聴いて思うのは非常に楽曲自体がナチュラルなテイストを持っていることだ。ふと鼻歌が浮かんできて、あれよあれよという間に出来上がったんじゃないかと言うくらいシンプルなテイストを持っている。と、同時に作り込む余地がないくらいに自然な美しさがある。
オープニング、Boyfriendの気だるいギターロック、いかにもなガーリィ・ポップ、Crazy For You,Summer Mood,これまた王道のサーフ・ロックWhen The Sun Don't Shine,Each And Every Dayなど、直球をビシビシと投げ込んでくるようなアルバムの展開もなかなかいい。あえて似たようなテイストの曲を並べることで、アルバム全体を1曲のようにしてしまおうという狙いがあったようだが、あまりそういう感じはせず、とにかく良い曲が並んでいるなという印象を受ける。
そして、サウンド・プロダクションもこのメロディーの物語を微塵も損なうことなく、これまたナチュラルな味付けに徹している。ラウドでハードなギターサウンドが所々で顔を出すが、普通求められるエッジ感みたいなものはない。では失敗しているのかというと、そうではなくて、あくまでここにある恋の物語を構成する1ピースとして存在しているのだ。ここは好みが分かれるところかもしれない。物足りなく思う人もいるだろう。
しかし、自分はこの「思いのままに作った」無造作感のあるサウンドがたまらなく好きである。暖かさや刹那感、ノスタルジックなどなど、感情の一つ一つが勝手に音になっていくような、ある種の必然性みたいなものがあっていい。
★★★★☆(11/12/10)