Write About Love/Belle And Sebastian | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

Surf’s-Up フジロックでは最終日、ホワイトステージのトリを務めたベル&セバスチャン、4年ぶりのニューアルバム。前作Life Pursuitは軽快なポップソングを主としたアルバムで、「随分とカラフルになったなぁ」という印象があった。今作でもその前作と同じトニー・ホッファーがプロデューサーを務め、ロサンゼルスでレコーディングされている。


 ベルセバにロス・・・実に似合わない。前作もレコーディングはロスということで、あんなに開かれたサウンドになったのかなと思ったので、「今作も」という考えが頭をよぎったが、また違ったテイストのアルバムに仕上がっている。


 タイトルはWrite About Love。ベルセバにしてはあまりにもストレートなタイトルである。1曲目は、フジでもオープニングを飾ったI Didn't See It Coming。どこからどう見てもベルセバな、柔らかなメロディーとシンプルな演奏で、そこはかとない優しさが感じられる曲だ。決して過度に盛り上がるような曲ではないし、アンセミックというタイプの曲でもないが、アルバムの冒頭としては最高の曲だと思う。というのは、じんわりと染みこんでいく、そういう緩やかさこそが僕はベルセバの「グルーヴ」だと思うのだ。そういう意味では、とてもグルーヴィーな曲。


 そのような前作ではやや後退した柔らかさのある曲が今作には結構含まれている。Calculating Bimbo、The Ghost Of Rock School、そして個人的ベストトラックであるRead The Blessed Pagesなど初期の頃の素朴さを感じさせる曲があるのは昔からのファンとしてはすごく嬉しい。


 しかし、当然近作で培ってきた開放的なポップセンスを封印したのかといえば、そんなことはなくて、むしろ更に洗練された感がある。シンセポップ調のCome On Sisterや、前作の流れを汲んだI Want The World To Stop、フジでもコーラスの部分がシンガロングされたナンバーI'm Not Living In The Real Worldなどサウンドもメッセージもシンプルでポップな楽曲もしっかりと入っている。ラストを飾るSunday's Pretty Iconはシンセとギターがグルーヴィーに絡み合い、そこにややダークな歌声が加わるというベルセバ史上最もロックっぽいんじゃないかという曲。そういった曲がアクセントとしてとても効いている。


 また、今作では2人の女性ヴォーカルを迎えてデュエットしている。一人はあのノラ・ジョーンズ(と言っても、名前しか知りませんが)。Little Lou, Ugly John, Prophet Johnで、やたらと上手い女性ヴォーカルが入っているなぁと思ったら彼女だった。こういう本格志向とも取れるサウンドプロダクションもかつては似つかわしくなかったが、今のベルセバにはそういう包容力がある。


かつての魅力を失うことなく、新たなエッセンスを吸収しながらも、ベルセバは彼らにしか作れないポップソングを紡いでいる。このアルバムは「僕は僕自身でいる必要がある」という言葉を見事に実践している証明のような作品だ。


 ★★★★☆(3/11/10)