The Morning Bendersの2nd。2006年、カリフォルニアで結成された4人組で、GirlsやGrizzly Bearらと共にツアーをしていたこともある。今USインディの中でもかなりの注目を集めている存在である。残念ながら、日本のフェスには来ないみたいだけど。音楽性もGirlsやReal Estate、Avi Buffaloらに通じるものがあって、サーフ・サウンドを自分のフィルターを通して繊細な色づけをすることで、青春期の気持ちの揺れ動きを表現している。
今作はRough Tradeに移籍してのリリース(Mystery Jetsと一緒だ!)となった。そして、Grizzly Bearのクリス・テイラーが共同プロデューサーとしてクレジットされている。そして、このアルバム、アナログ・レコードを意図した部分があり、SideAとBでそれぞれ5曲ずつに分かれている。ジャケットもちょいレトロな感じで、昔のビーチの様子が描かれている。
そんな感じで、パッケージングはどうにもノスタルジック。肝心な音の方はどうかというと、オープニングのレコードのスクラッチノイズから壮大なイントロへ、そしてギター、ハーモニー、ストリングスが波のように押し寄せてくる、Excusesが圧巻。ずっと続いてほしいと思わせるくらい甘いメロディーを中心に、とてつもないサウンドスケープを描いている。よく、「ウォール・オブ・サウンド」という言葉が使われるが、彼らの場合は音を幾層にも積み重ねることはないし、重厚なサウンドばかりを使っているわけでもない。
それでも、ついつい「ウォール・オブ・サウンド」という言葉を使いたくなるのは、一つ一つの音が聴き手の想像力をかき立てるような「刺激」を持っているからだと思う。60、70年代風のレトロなロックやサイケ、シューゲーザーなどからコラージュしていることは明らかだし、すごく目新しいものではない。しかし、こういった音を確信的に散りばめている印象は受けない。変な話、本当に「これだ!」と思って鳴らしているのだろうか?というような微妙な「揺れ」を感じるのだ。そのことが実像の見えにくい音の「壁」のように感じられるのである。それ故、いろいろな解釈が出来そうだし、日によってその印象も変わりそうな「幅」のある作品になっていると思う。
個人的に好きなのは前述のExcuses、同様に目の前にバーンと広大な風景が現れるStitchesといった曲。あと、60年代クラシカル・ポップ風のCold WarやエモーショナルなPromises、All Day Day Lightといった個性的な曲もアルバムの中で突出することなく、スパイスとして効いている。
おすすめ度★★★★☆(24/07/10)