Broken Bells/Broken Bells | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

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 ナールズ・バークレーのデンジャー・マウスと、ザ・シンズのジェームズ・マーサーによるユニット、ブロークン・ベルズの1st。デンジャー・マウスと言えば自分が真っ先に思いつくのが、BeckのModern Guiltでの仕事。ベックの持つ「歌心」を壊すことなく、そこに肉体的な生命力を与えるバックトラックを作り上げていた事から考えても、この二人がアルバムを作るということがすごく楽しみであった。



アルバム全体のトーンはダークでスペイシー。アップテンポな曲もほとんどない。しかし仄暗い音空間の中で、2つの才能は眩い光を放ち続けている。ファーストシングルとなったThe High Roadで幕を開ける。まさにあいさつ代わりの1曲でもある。ダークテイストの中に儚くメランコリックなメロディーがじんわりと拡がっていく。そしてシンプルに終わるかと見せかけ、終わりの方で新たなメロディーを展開するという組曲的な構成になっている。


 この曲だけにとどまらず、どの曲も普遍的な素晴らしさと豊かなアイディアが凝縮されている。ジェームズの素朴なメロディーはここでも抜群な冴えを見せている。一方ブライアンの方は、必要以上の音を一切使わずにシンプルかつクールなバックトラックを構成することに終始している。アコギやアナログシンセを多用したサウンドであるが、実際ここでは生の楽器だけを使ったらしい。それだけに、どの曲にもほのかな暖かみが感じられるのもこのアルバムの特徴だ。そして、生の音から伝わってくるヴァイヴレーションが最高。一つ一つの音の立ち位置がしっかりしていて、ベースラインにせよリズムにせよ楽器そのものの音の響きにも耳がいく。そして、改めてその良さを思い知らされるようなところもある。そこが面白いし、まさかブライアンのトラックからそんなことを考えさせられるとは思いもよらなかった。


 聴き所を挙げるのは本当に難しい。ボーナストラックを除けば10曲と、パッケージングまで実に完璧。全く飽きることなく聴き通すことが出来る。完成され過ぎな感も確かにあるが、ここまでふたつの才能が相乗効果を見せた作品はなかなか無いと思う。


おすすめ度★★★★★(15/05/10)