The Soft Pack/The Soft Pack | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

Surf’s-Up The Soft Packのデビューアルバム。 簡単にバンドについて紹介すると、サンディエゴ出身で現在はロサンゼルスを拠点に活動。元々はムスリムスという名で活動していたが、バンド名にばかり注目されることになり、The Soft Packへと変更。既にブリーダーズ、ザ・ラスト・シャドウ・パペッツ、フランツ・フェルディナンドらのサポートアクトに選ばれている。ここまでは実に順調にキャリアを積み上げていると言えるだろう。


 で、肝心の音であるが、これが実に爽快なギターロック。NY直系のアンダーグラウンドな香りもあるし、リバのような歌心のある直球ロックンロールもある。モダン・ラヴァーズのようにラフなビートを突き詰めた曲もある。ストロークス、テレヴィジョン、R.E.M.などのバンドがそうであったように、時に直情的に、時に官能的に聴き手を刺激し続ける。


 全10曲で、トータルタイムも30分ちょっとと短い。アップテンポの曲がひたすら続いていくが、根っこにあるのはそのシンプルさだ。コード進行もさほど複雑ではないし、曲ごとのリフや、ビートなんかも実にシンプルだ。余計な手を加えたりしていない。計算されている感じも全くない。自分たちが信じているものが明確にあって、それだけを由としてロックンロールを作り上げている。今、複雑化の一途をたどっている中でこういう構造はややもすると物足りなく写ってしまうかもしれない。


 しかし、ここで奏でられる能動的ギターロックは、斜に構えたリスナーを瞬時に置き去りにするだけの瞬発力に満ちている。プレイボタンを押したら、あとは身を任すだけ、それでいい。それで全てが事足りるくらいのメロディーがあり、ギターがあり、リズムがある。当然センスもあるのだろうが、シンプルなものに突き動かされるというのは聴き手にとっても実に心地よいものだ。そんな最高にかっこいいデビューアルバムだ。


 おすすめ度★★★★☆(16/02/10)