Pearl Jamの通算9作目のアルバム。すでにあちこちのメディアで取り上げられているように、全編即効性のあるメロディーに溢れた会心の作品である。トータルタイムも37分と非常に短い。
前作でアグレッシブな表現を取り戻した感があったが、今作ではアグレッシブさはそのままながら、骨太のロックグルーヴも十二分に楽しめる内容となっている。ここで、「楽しめる」と書いたが、今作は聴いていて気分がどんどん高揚してくる。Pearl Jamの作品を聴いてこんな気持ちになることはほとんどない。なのに、今作は何も考えなくても無条件に楽しめてしまうロックアルバムになっている。
クラシカルなロックソングを主体にしているが、こんな風に小細工の全くない正統派サウンドは、今の時代にすごく新鮮に聞こえる。個人的なことになるが、自分が小中学生の頃は、曲調はバラエティーに富んでいながらも、ストレートで強烈な歌メロを持った楽曲が並んだアルバムを聴くと心踊った。そして今作にも同じようなテイストを強く感じる。
オープニングの[Gonna See My Friend]はヴォーカルをいかに魅力的に聴かせるか、そんな視点から書かれたのではないかと思うくらいエディーがかっこいい。あっけらかんとしたメロディーの「The Fixer」に至ってはサビが「イエー・イエー」なんだもん。
序盤はこれでもかというくらいドライヴ感のあるロックで引っ張っていくが、かと思えば、時々「Just Breathe」ではInto The wildのサントラを彷彿とさせる、メロウなフォークナンバーもしっかり聴かせる。Just Breatheと名付けられたその曲は、ともすれば内省的に見えるかもしれないが、決して下を向いてはいない。真っ直ぐ前を見据えている。
個人的なハイライトはこの「Just Breathe」から「Amongst The Waves」「Unthought Known」とややテンポを落とした曲を挟んでから発射される最もパンキッシュなナンバー、「Supersonic」。僕にはこの曲がアルバムの中で「決定打」の役割を持っているように見える。いつの頃からか、アメリカの苦悩と同調するようにPearl Jamの表現も重苦しいものとなっていった。そこには彼らなりの誠実さももちろんあったわけだが、受け手に強いる部分も大きく、僕も「Vitalogy」以降のアルバムは積極的には聴けなかった。
雑誌のインタビューで「昔はキャッチー過ぎるものはボツにしていった」と語っていたエディ。そういったことで、自分から湧き上がってくる怒りをよりリアルに表現しようとするのは理解できるが、ここまで素晴らしいアルバムを作ってくれると、それは単なる「憑き物」に過ぎなかったことがわかる。
自分たちの音楽がこんなにも伸びやかで、多くの人にとって力を与えるんだということをようやく自覚してくれた今のPearl Jamは無敵だ。もっともっと聴きたい。
おすすめ度★★★★☆(09/10/09)