Conditions/The Temper Trap | Surf’s-Up

Surf’s-Up

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The Temper Trapはオーストラリア、メルボルン出身の4人組。今作がデビューアルバムとなる。海外ではBBCの「Sound of 2009」、NMEの「Hottest Bands of 2009」に選ばれるなど注目度の高いバンドであり、サマーソニック09にも出演する。一体なぜこのバンドが大きな注目を集めるのか?これがなかなか難しい。とりたてて斬新なサウンドスタイルではない。ただ、とりあえず彼らの曲を聴けば、その凄さは伝わってくるだろう。


 ファルセットボイスで鮮やかにメロディーを紡いでいくヴォーカル。派手さはないものの、時にソリッドに時に柔らかく曲の世界観に色づけをしていくギター。エモーショナルな響きを持つベースに変幻自在にリズムを刻み続けるドラム。 今時のバンドには珍しいくらい、4人の個性の主張が強いサウンドである。プレイヤーの顔が見えるというか、それぞれが合わせるというのではなくて、自分の意志の元に音を鳴らしているようなところがある。

 そして、この4人の創造力の豊かさが描くサウンドスケープの鮮やかさが非常に強烈なのだ。オルガンとハンドクラップから始まるLove Lostではソウルフルなヴォーカルとメランコリックなギターが見事に溶け合っている。続くRestでは、暗闇の中から突如炸裂するエモーショナルなギターと力強いビートが独特の緊張感を与えている。


Sweet Dispositionでは印象的なカッティング・ギターに乗せて、たおやかに歌われるヴォーカルが祈りのように聞こえる 。Deep Riverではイントロのアコギからエモーショナルなメロディーが壮大に展開していく。


 メロディアスなコーラスと共に疾走していくFader、4人のプレイヤビリティーが最も感じられるResurrection、ブレイクビーツを織り交ぜながら焦燥感を描き出す、シングルにもなったScience Of Fear、 最後のDrum Songで太古的なビートと官能的なギターがジャムセッション的な絡みを見せて、このアルバムは終わる。


 総じて言うと、余計な音が全くないというか、そもそも余計なものなんてはなから出てこないようなそんなテンションがどの曲にも漲っている。世界を射抜くために研ぎ澄まされた音、そんな風に僕には聴こえる。ちょっとスマートすぎるように聞こえるところもあるが、流行に左右されないタイムレスな魅力を持ったアルバムだと言って良いと思う。サマソニ行く人は必見でしょう。


 おすすめ度★★★★☆(02/08/09)