Super Furry Animals、9枚目のアルバム。1年半と割と短いインターバルでドロップされた新作である。その前作「Hey Venus」は、かなりポップな音を鳴らしていて個人的には好きだったんだけど、従来のファンはどう受け止めたのか気になる作品でもあった。
さてこの新作、前作のポップさとコンパクトさはそのまま継承されつつ、彼ら独特のいびつな音楽観が良い具合に音に反映されていて、個人的にはかなりツボな音である。
なんといってもうれしいのは、かつてあった「切れの良さ」「フットワークの軽さ」が復活していることである。
個人的にはあの大傑作「Rings Around The World」以降、質は高いんだけどなんとなくオーバー・プロデュース気味であったような感をずっと抱き続けていた。なんとなく小難しくなっちゃってるというか、ダイレクトに楽しめないようなところを感じていた。
しかし、このアルバムにそういうところは全くない。もうすんなり感じるままに楽しめるアルバムである。彼ら特有のリフレイン・メロディーが炸裂する極上のロックチューンがこれでもかと続くので、なかなか途中で聴くのをやめられないような中毒性のあるアルバムに仕上がっている。
特にInaugural Tramsのあっけらかんとしたポップに感激。こういうのをずっと待っていた。また、壮大なスケールを持ったCardiff In the Sun、中近東チックな妖しさを秘めたThe Very Best Of Neil Diamondなどスーファリにしかできない局所的ロックンロールが全開。よく幅広い音楽性が評価されるバンドであるが、ここまで自分たちの音へと昇華しているバンドはいないだろう。
ジャケットでピート・ファウラーや田名網敬一が描いているような奇天烈だけどめちゃくちゃ生命力のあるような、こんな音楽をこれからも期待したいし、今後はもっとこう、「思いつき一発」のような更にセンスだけで作ってしまうようなアルバムも聴いてみたい。
おすすめ度★★★★☆(16/05/09)