この記事は2014年9月14日に投稿された記事に加筆・修正を加えたものです。
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こんばんわ。
今日も1日お疲れ様でした。
さて、私は『殺人出産』を読みました。
村田沙耶香さんの短編集です。
表題作の『殺人出産』の他、『トリプル』、『清潔な結婚』、『余命』の4編が収録されています。
けれど、長さがまちまちで、『殺人出産』が100ページくらい、
『トリプル』と『清潔な結婚』が30ページずつくらい、『余命』はわずか数ページです。
別の話ではあるのですが、どれも今の生活の延長上にある、
もしかしたら訪れるかもしれない未来のようで、テーマとしては一貫したまとまりのある本でした。
殺人と出産。
人を殺すことと、人を生むこと。
対極にあるような言葉がつながってタイトルになっているので、どんな話かと思ったら、
10人産めば、1人殺してもいい、という未来のお話でした。
男でも女でも、一人を殺すために「産み人」となり、
その「産み人」が人工授精をしてどんどん子ども産んで人口減少にはどめがかかる。
「産み人」がセンターに預けた子どもを引き取って育てることが主流になり、
出産する人は少なくなり、自分の子どもがほしいと思っても、
自然妊娠ではなく、人工授精によって子どもを授かることが一般的になる未来。
歪んでいて、ぞっとします。
ただ、ここに書かれている未来はあながちあり得なくもないところが怖いです。
今、人工授精で産まれてくる子どもの割合はどんどん増えています。
男性に人工の子宮を取り付けて出産する研究が成功した、という海外の話。
人口減少で地方の街が消滅するから、早急な少子化対策が必要だという話題。
いつか、この物語の世界に行き着くのかもしれない。
少なくとも、技術的にはそうなってもおかしくはない。
そして、出産のための強い動機となるのが殺意。
好きな人と家族を持ちたいという愛情でもなく、自分の遺伝子を遺したいという意志でもなく。
「そんなに一途に誰かを殺したいって想い続けることができるなんて」
始めの方でそういうセリフがあって、それは一途に誰かを好きで居続けられるって素敵、
という恋愛小説にありがちなセリフと似ているように思えてしまえました。
愛情と憎しみは紙一重とも言うし。
誰かを殺したいと思ってしまうこと。
それは程度にもよるけれど、誰でも1度は抱くことのある感情なのかもしれない。
でも、それをぐっと押さえているのが理性なわけで、
それを抑え切れなくなってしまったら、そこかしこで殺人事件は頻発する。
人を殺すことが正当化されてしまうのは絶対によくないことだと思うのです。
実際、この物語でもこのシステムに違和感を感じている人が出てきて、
生きること、人を殺すことの罪の重さを、作者は書きたかったんじゃないかな、と思います。
他の3編も、今の社会問題を真っ向から取り上げていて、いろいろ考えることが多い本でした。
ただ、苦手な人は読んでいるのがすごく大変な本だとは思うので、取り扱い注意です。
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詳細はこちら。
→殺人出産
明日もいい日になりますように。
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