ぼくのだいじなボブ
- T. コーウィン、上杉 隼人
- 講談社
- 1000円
livedoor BOOKS
書評 /海外純文学
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なんかこの本、妙に縁があるような感じがしてしまってるんですよね。このブログで新刊案内出した時にちょっと余計なことを書いてしまって、それを講談社の担当の方にコメント書いていただいて、気になっていたら「本が好き!」の献本リストにラス1となっているのを発見して。…ということで、読ませていただきました。
私たちはシェルターさんが犬の里親を募集しているサイトを毎日のように見ているんですよ。シェルターさんというのは、保健所で処分されそうになっている犬や、飼育放棄してしまっている飼い主から犬を保護して、新しい飼い主を探す活動をしている方たちのことです。今は犬禁止のマンションに住んでいるんで飼えないんですが、いつか環境が整ったら、私たちはペットショップではなく、シェルターさんの犬を譲っていただこうと思っています。それで今からチェックしてるんですが(気が早すぎ、笑)。
で、そういったサイトを見ていると、犬の来歴紹介で、とんでもない飼い主のことが話題になっていたりします。ふと立ち寄ったペットショップで、ヌイグルミ感覚で子犬を買い、買ったはいいが吠えるとか、噛むとかといった子犬なら当たり前という行為を理由にして、外につなぎっぱなしにして散歩も連れていかない、餌もろくにやらない飼い主、世話が面倒くさくなって、なんかそれっぽい理由をつけて飼えなくなったと保健所に連れていって殺処分してもらおうとする飼い主、そして、人間関係がつらいだとかなんだとかで、まったく罪のない犬を虐待する飼い主……。
この「ぼくのだいじなボブ」の飼い主は、そこまでひどくはないかもしれないけれど、やっぱり飼育放棄してしまっているような人なんです。ボブは洗ってもらえないから臭くて汚くて、辛い状況のため眉間に皺が寄ってしまっている、だれが見てもかわいいとはお世辞にも言えないゴールデンレトリーバー。そんなボブが、隣の家に住んでいて、大切にしていたゴールデンレトリーバーを亡くしたばかりの「ぼく」ことトム・コーウィン(ミュージシャン)を新しい飼い主に選んで、幸せをつかみとるというお話。「ぼく」がボブを飼うことにしたんじゃなくて、ボブが「ぼく」に飼われることにしたんです。
この本はすべて実話です。というか、本のために書かれた文章ではなく、ボブが幸せの中で亡くなったことを知らせるため、友人に出した手紙(メール)がそのまま本になったのだそうです。だからとっても短くて、帯に「10分で読めて…」と書いてあったりします。ハードカバーだけど文庫本サイズで、見た目は日記帳みたいです。実際、余白というか、空白ページがたくさんあるので(犬のワンポイントイラスト付)、読み終わったらカバーをとって、日記帳にしても良いんじゃないかと思います。
なんか変にドラマティックな話にしてあったりとか、犬の擬人化がされていたりとか、そういう演出、小細工は一切ありません。事実がシンプルに、でも思いを込めて書いてあって、けっこうジーンとしてしまいました。犬を飼ったことがある人なら、犬が辛い時、寂しい時に、どんな目をしているか、知っていますよね? 犬が嬉しい時、どんなに目が輝くか、知っていますよね? そういうことを思い出しながら、いったん飼いはじめた犬は死ぬまで面倒見なくちゃいけないと、それが当たり前だとあらためて教えてくれる本でした。
ちなみに、日本では年間で5,60万匹(100万近いという話も)の犬猫が殺処分されています。ちょっと前ですが、来日した映画「レーシング・ストライプス」の監督の方が、犬や猫はペットショップで買わずにシェルターから引き取るようにしてくださいと熱く訴えていらしたのが強く印象に残っています。
『ぼくのだいじなボブ』の紹介HP
http://www17.ocn.ne.jp/~h-uesugi/mostlybob.htm
翻訳者、上杉隼人さんの英語のHP
http://getupenglish.blog.ocn.ne.jp/getupenglish/