0401 flat 青桐ナツ | あなたの隣のマンガさん。(Ver.5)

0401 flat 青桐ナツ



★★☆
お菓子作りが趣味の高校生・平介のもとに
忍耐の幼児
従兄弟の秋君がやってくる。
平介の超マイペースで
自分本位な日常の中にあって
秋君はやけに心騒がす存在ですが・・・

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美しい物語です
それも現代的な美しさ
これを一言でいうなら”未満感”です
”未満観”ってなんだ?と思ったそこのアナタ
ワタシが今、適当に作りました
ハイ、すみません。

どういうニュアンスかといいますと
このマンガさん
大雑把にくくると
主人公の成長物語なんですが
それが”未満”な成長物語なんですね
成長しきらない
成長らしきモノは見えるけど
完成しないんです
成長イコール完成とも思ってない
そんなのまだ物語が途中だからじゃん
とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが
それは違います! (キリッ

一般的な成長物語は基本的に親目線です
もっというと上から目線
もっともっというと
無知蒙昧なる読者をワタクシ作者が啓蒙してしんぜよう
作者側にはあらかじめ
”これが正解、正しい道だ”というゴールがある
しかしこのマンガさんはそれがないんですね

問題が発生する

悩む

なんとか回答を出す

ここまではこれまでのマンガさんと同じですが
このマンガさんのすごいところは
主人公たちが出した回答が
ほんとうに正解かは明らかではない
というよりも
正解なんて作者さんにもわかってない
あってるかもしれない
間違ってるかもしれない
でもそんなのどうでもいい
悩むこと
それこそが成長かもしれない・・・
でももしかしたら
成長なんかいらないかもしれない
なんて
正答未満でいっぱいです

この”正解を出さない”スタンスがまた
新たな魅力
違った一面をこのマンガさんに与えている
恋するリーダビリティです
正解が出ない不完全燃焼感が
もやもやと晴れない心を生み出し
晴れない心がすっきりを求めて
次のページ次のページへと手を出させる
心がかき乱される
気になる
このマンガさんで心が埋まる
これってもしかして恋!?
ってなっちゃうんです
これもやはり
未満感が成せるワザですね

ほんとにこの作者さんのセンス
物語を編んでゆくバランス感覚
すごいですね
心情に深く踏み込みすぎない
人物を完全なイイ人にしてしまわない
画も薄くしすぎない
押しすぎず引きすぎず
全てが絶妙なバランスです
何がすごいって
この作者さん
これを計算でやっているようには見えない
天然も天然
天然小悪魔系ですね
それゆえにまあ危うくもあります
天然の人は
天然だからいいんであって
意図してやったらあざとくなりますから
危ういバランスで組み上げられた
今の妖しい魅力が壊れてしまう
この作者さんにはこのまま
”未満感”のまま成長してもらいたいです



追記
すごい面白いんですこのマンガさん
コミックブレードでしたっけ?
このマンガさんの連載元は
ほんと素敵な作品であるだけに
これだけは言わせて!
編集さんはちゃんと仕事をしてください!!
このマンガさんのいちファンとして
ちょっと苦言です
えー、これだけじゃ意味がわかりませんね
何に苦言かといいますと
この作者さん
非常に優れたセンスの作者さんでありまして
それだけにその感性のまま
本作品を描いているように
見える
つまり「マンガ」としての形を
理屈で意識せず
勢いで描いているように見える
そのためか
月間連載時は気づけなかった
一話一話のページの繋がりが
単行本化の際におかしくなる
あるいは悪くなるという
実務上の問題が発生しております
切れ目が明確ではない
これは編集さんの責任ですよ
編集さん(担当さん)が
どこまで作品に関わるべきかという問いは
これまでもこれからも
常にマンガさんについて回る問題だと思いますが
少なくても新人さんなど
実務に疎い作者さんに
ネーム(フォント周りの方)の基本、単行本のつくり
印刷所との関係や有能なアシスタントさんの斡旋、
果ては税金や保険関係等々
ただ描いていればいいというのではおさまらない
商業マンガの世界にまつわるジョブトレーニングを
仕込む必要はあるんじゃないかと
素人なりに感じます





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