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特集

アキバを支える中小企業
超ニッチビジネスの成功者たち

オタクの聖地・秋葉原は、「こだわり」「ニッチ」「小ロット生産」など、中小企業が生き残るための方法論に満ちている。実際、アキバを歩いてみると、当地の経済活動を支えている中小企業の熱気と迫力をひしひしと感じとることができる。

◎経済アナリスト 森永卓郎


「なぜアキバ市場は魅力的か」

 中小企業の店が数多く集まる秋葉原。おそらく全国で最も活性化している商店街といえる。なぜそれが実現されたのか。それは、「時間軸」でも「空間軸」でも懐が深い、という秋葉原ならではの特徴からだろう。

 秋葉原はもともと戦後の闇市からはじまった。1960年代には家電、70年代にはオーディオ、80年代にはマイコン、そして90年代のマルチメディアを経て2000年頃から「萌え産業」が主役となった。ふつうの街なら、産業の主役が代われば、それ以前の産業は姿を消していく。ところが秋葉原の場合は、前の主役もしっかり残っている。これが「時間軸」の懐の深さだ。電子パーツを売る小さな店が健在だし、裏秋葉原と呼ばれる地区にはブルーシートに商品を並べた怪しげな路面商もいる。ある意味、闇市までも残っているわけだ。 

 そして、「空間軸」の懐の深さというのは、つまりオフィスや店舗の賃料の安さである。時代に取り残された産業でも、その家賃の安さによって何とか経営が成り立つし、新興のベンチャー企業も容易に進出できるのだ。秋葉原UDXやダイビルが建設されて再開発が進んだ秋葉原駅周辺の賃料はさすがに上がったが、少し離れれば都心としてはまだまだ安い。

 また、秋葉原に出店している人々は共存共栄の意識が高く、「新参者」に対しても心を開いている。2005年にヨドバシカメラの大型商業施設が進出するときでさえ、商店街は歓迎ムードだった。ふつうなら進出反対運動が起きても不思議ではないのにである。そうした雰囲気だから、秋葉原には様々な人や企業が集まってくるのだろう。

 今年6月に起きた無差別殺傷事件によって誤解されがちだが、本当は秋葉原は都内の繁華街きっての健全な街である。渋谷や新宿と比べれば犯罪件数はずっと少ない。夜9時を回れば真っ暗になる街なのだ。その健全性を支えているのは、店を営む中小企業と、「オタク」と呼ばれるアキバ系ユーザーたちだ。彼らは、変わり者扱いされることが多いが、実際はすごく優しくて誠実。法令遵守の意識も高い。そうしたオタクたちと中小企業の両者が盛り上げているのがアキバマーケットなのである。

見えにくいアキバの市場規模

 秋葉原がビジネスを展開するうえで魅力的な街であるのは確かだが、実はそれを裏付ける具体的なデータ(統計上の数字)は誰もよく分かっていない。以前、浜銀総合研究所が「萌え関連(オタク)市場」の規模を日本全体で888億円と推計したことがあるが、この調査においても実際のところ個々の産業がどれだけの売上を出しているかは正確には捕らえきれていないといえる。「コミック」「映像(アニメ)」「ゲーム」「パソコン」といった産業ならまだしも、現在の中核的なアキバ系ビジネスである、いわゆる「萌え産業」になると本当によく分からないのだ。

 統計的な数字をつかみにくいのは、まず第一に、企業の規模が小さすぎるという理由がある。たとえば萌え産業を代表するカテゴリーの1つにメイド関連ビジネスがあるが、それに携わる企業はどこもみな小さい。メイド関連ビジネスとは、秋葉原の代名詞ともなったメイド喫茶をベースにしたもので、最近では「猫」「妹」「女中さん」といったように喫茶店という業態を残しながらキャラクターを代えていく展開だったり、「メイド足つぼ」「メイド眼鏡」「メイドバーガー」など、業種を代えた展開をしている店もある。ちなみに他にも、萌え産業と呼ばれるもののカテゴリーには「コスプレショップ」「同人誌ショップ」「オタクライブハウス」などがある。

 なかでもコスプレショップは、数人のスタッフで回している店ばかりだし、そこに商品を供給するコスプレ衣装製造業者ともなると社員がたった1名というのが当たり前。だから業界団体もできないし、地域の商工会にも入らない。とてもじゃないが、売上統計などは集められない。

 さらに、秋葉原のなかだけで完結する「循環経済」がより一層アキバマーケットの正確な市場規模を見えにくくしているという事情もある。たとえば希少性のあるレア物のフィギュアを中古店で売ったユーザーが、その売上代金を何に使うかというと、秋葉原の中古ゲームソフト店だったりする。さらに、その中古ゲームソフト店のオーナーが売上代金を持って仕事帰りに「トレーディングカード」(交換や収集を意図したゲーム用カード)の店で商品を購入するということが往々にしてある。つまりオタク人口率が極めて高い秋葉原においては、需要者と供給者が一体化しているケースが珍しくないわけだ。

 そもそも、他から見ると一体どこに価値があるか分からない商品ばかりを扱っている秋葉原を数字で評価しようということ自体、無理があるのかもしれない。秋葉原は特定のマニアだけに支持される「ニッチ中のニッチの商売」が成り立つ特異な市場。実際、1つのビジネスがどんどん大きく発展するのではなく、小さなものがどんどん生まれてくるような市場の展開がなされている。この先も、シンクタンクや調査機関が秋葉原を数字で評価するのは難しいのではないだろうか。

 そういう意味では、大企業が容易には入り込めないマーケットともいえる。極論すれば「一品モノ」ばかりが評価される街であり、資本力にまかせての安い大量生産品や均一のサービスでは上手くいかないのだ。

 大企業の大量生産品とは一線を画したものの典型例が、「ガレージキット」である。簡単にいえば、マニア向けに趣向を凝らした組立模型のことだ。金型ではなく、「ゴム型」を用いた複製方法などで生産される。金型とは違い、すぐに壊れてしまうゴム型ではせいぜい20~30個作るのがやっと。ガレージキットのビジネスは、いってみれば「原型製作者が自分と同じ思考を持つマニアと感動を共有しようという商売」と表現できる。こうした手間の掛かる事業は大企業には馴染みにくい。逆に、小回りが効く中小企業だから本領を発揮できる分野といえる。たとえ高額な商品でも自分が気に入れば躊躇なく購入するマニアがたくさん集まる秋葉原は、やはり中小企業こそが活躍すべき場所である。

オタクの心を共有するのが大切

 ただ、アキバマーケットへの進出を図る企業にとって何が問題になるかというと、オタクたちの気持ちがわからなければ適切な商品やサービスを提供できないという点だ。本当に秋葉原でオタク相手の事業をしようと思ったら、まず自分自身がオタクになるぐらいの気構えでやらなければダメである。いかに彼らが欲しがるものを提供できるか。これが勝負の分かれ目だ。

 今ではすっかり有名店としての地位を手に入れた、あるコスプレショップの店長は、最初はコスプレの右も左もわからずに商売を始めた。その店長が有能だったのは、来店客が「こういう商品を並べた方がいい」などと教えてくれた助言を素直に聞き入れていったことだった。それが、顧客を増やすうえで絶大な効果を発揮した。基本的にオタクたちは優しい。彼らに「自分たちの側の人間」と思ってもらえれば、親身になっていろいろ教えてくれる。

 とはいえその一方で、最近では必ずしもオタクをメーンターゲットにせずに、ライトユーザー(アキバ初心者)や観光客を相手にした事業をしているところも増えている。ここ2、3年、秋葉原は観光スポットとして国内外の人々を数多く集めている。そうした観光客をターゲットにしたお土産品でヒットを飛ばしている会社もあるし、外国人向けの免税店も多数できた。「萌え」という文字がプリントされたTシャツを店先で売っている電気店などは、間違いなく外国人観光客ねらいだ。

 最近では、秋葉原の主力産業が「萌え」から「観光」に移り変わるのではないかという見方も出ているが、それは今の時点ではまだ言い切れないと思う。それでも敢えて、中小企業にとって今後どんなアキバ系のジャンルが狙い目になるかを挙げるとすれば、「エンターテイメント」がまず1つ。アキバ発アイドル「AKB48」などのショーを開催するライブハウスなどができているのも、エンターテイメントの流れができつつあることの兆候だ。

 それともう1つの流れというのが、「オーダーメイド」である。たとえばコスプレショップでは最近、注文に応じてどんな衣装でもつくってくれる。おそらくこうした「あなたの好きなデザインで何でも作りますよ」というオーダーメイドが流行っていく可能性がある。また、むかしは秋葉原に飲食店が数えるほどしかなかったが、最近は増えており、それらがもしかすると1つの新しい食文化を創り出すかもしれない。

 秋葉原で主役になった産業が10年後の日本の主力産業になるとも言われている。「100年に1度の金融危機」で先が見えない時代である今だからこそ、アキバマーケットの動向には要注目だ。

(インタビュー・構成/本誌・吉田茂司)

(『戦略経営者』2008年12月号より転載)

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