2018年3月1日、広島えびすテーラーというオーダースーツ専門店を広島市中区鉄砲町にオープンしました。
話の始まりは数年前に遡ります。
ファストファッション全盛のアパレル業界において、シンプルさや早さは重要な課題です。
ご存知のように、オーダースーツはオリジナリティを自在に表現でき、なおかつ体にぴったり合うのでとても人気ですが、例えばオーダースーツについても「お店に行かなくてもできる」「スマホで簡単に注文できる」といったオーダースーツは一種のブームのようになっています。
ここ広島でも、この数年のうちにたくさんのオーダースーツショップが出来ました。
実は、オーダースーツの販売は販売店側にもとてもメリットがあり、余分な在庫を抱えなくて良いなどの理由もあって、最近では大手紳士服チェーン店も足をそろえて進出してきている分野です。
その多くはやはりメリットを活かし、シンプルに、早く、簡単に、スーツをオーダーできるお店がほとんとです。
しかし、洋服屋さんはそれだけで本当にいいのでしょうか?
多くのオーダースーツ屋さんは、バンチブックと呼ばれる生地サンプルからスーツを選んでいきます。
中には3DのCGを見ながら決めていく場合もあり、それはそれで、テクノロジーを活かしたとても素晴らしい動きなのですが、洋服屋として果たす責務は果たして本当にそれだけで十分なのだろうか、と考えるようになりました。
自分自身、スーツを一着作るときにはとても悩みます。裏地はどれにしようか、ボタンはどれにしようかといった外見的なものも当然ながら、今回は夏用なのでパットを薄くして柔らかなイメージに仕立てよう。そのためには肩幅を少し狭くしてみようか、そうなると背中がきつくなるので背幅はゆとりを持とう・・・などと考えることが多く、でもとても楽しいんです。
話をしながら、生活パターンや着用場面をイメージしながら最適な1着を作っていく。それがスーツ作りのはずです。
もちろん忙しい現代においてスピードや時間はとても重要です。
でも、ビジネスマンの戦闘服とも呼ばれるスーツを作るとき。このスーツを着て、どんな仕事をしよう、どんな人と会おう、どんな生活をしよう、、と考える時くらい非日常の喧騒を少し忘れてゆっくりとした時間を過ごすことが出来ないか。
このような理由から「オーダースーツ専門店 広島えびすテーラー」のオープンに至った次第です。
コンセプトは「心が躍るオーダースーツを安心価格で」です。
特徴は、店内を埋め尽くすリアルな大きさの生地です。通常のバンチブックと呼ばれるサンプルももちろん準備していますが、それに加え人一人分のスーツに必要な生地をたくさんストックしていることが大きな特徴です。
その他にも滞在時間を、できるだけ楽しんでいただける工夫をしており、接客テーブル、コーヒーカップ、お客様にお名前を記入いただくペン1本、どれをとってみても一つ一つに思いやバックストーリが詰まっています。
例えば、お選びいただくボタンを入れてあるボタンケースは、廿日市の一枚板テーブル職人さんに無理を言って作っていただいたものであったり、アンティークのシンガーミシンや実際に使われていた糸巻機、参考の本1冊にいたるまで、ご滞在時間をゆとりをもって十分過ごしていただける工夫が随所にございます。
きっとオーダースーツを作る楽しさというものを再認識、再発見していただけるのではないかと思います。