4. バタ足指導の ウソ・ホント | 水泳道のブログ

4. バタ足指導の ウソ・ホント

「つま先まで足を伸ばして腿から蹴りなさい」
これが従来のバタ足の指導方法です。


この指導をするとつま先まで必死に伸ばして蹴ろうとします。
もちろん、水圧によって、ヒザは軽く曲がるということが前提の練習なのですが、指導員に言われたことを守ろうとすればするほど前に進まないキックになってしまいます。
しかも、非常に無駄な筋肉の動きをさせてしまうことになってしまいます。


推進力に使用するのはほとんどが足の甲だけであり、しかも水を蹴っている瞬間だけなのです。
水泳道のブログ-バタ足の足の動き


太ももが身体の縦幅を越えた瞬間から水の抵抗を受け、推進力の妨げになってしまいます。
太ももの形状と角度からすれば、さほどの抵抗は受けませんが、それでも無駄になります。


ですから、腿から先を伸ばしてキックの練習をさせるのは、正しくない指導方法だと水泳道では考えています。
従来からの指導方法が、いつまでもまかり通っているのは、その指導方法に疑問を持ったとしても、誰も意義を唱えなかったからです。指導者もわかっていたはずなのに、それを信じて、変えようとして来なかったことに起因します。


腰掛キックという練習があります。

ところが、あの練習のように腰が固定されている状態で足をキックしても水中と同じように水を蹴ることは出来ません。


本来であれば無重力状態に近いしかも身体の支えがない状態で足をキックをすれば、腰が固定されていないために、足を蹴ったときに、腰は固定されず反対方向に動くのはずです。不要な練習をすることで、身体の筋肉は間違った動きを覚えてしまう可能性があります。

そこで、水泳道ではこの自然な腰の状態をキープするため以下のような練習をします。

つまり、既存の練習方法として必ずと言っていいほど、繰り返されてきた腰掛キックは省くと言うことです。

※腰掛キックを無駄な練習だと言っているのではなく、例えばつま先が伸びていない子供に自分の足の形を見せるために腰掛キックを利用するのは、大変良い方法だと思いますが、従来のように、腰掛キックで筋トレよろしく「1234!」「1234!」というような練習はしないという意味です。


さてキックの練習ですが、まずプールサイドにヒジを掛けさせる肘掛キック。そして手をつけさせる壁キック。この両方を中心に説明します。どちらの場合も指導手順や注意すべき点は同じです。


水中で足を蹴らせるときには、小さな野球ボールを足の甲で蹴るようなつもりで水を蹴らせます。
身体の幅を超えない程度に軽く足を曲げさせ、つま先で蹴りながらしっかりと足が伸びるようにと教えます。
※その時に水中深くまで蹴らせないことがポイント。あくまでも小さくです。

指導者は、水中に両手の手のひらを上に向け、手の平を蹴らせるようにします。
この時に、水面を蹴らないようにさせてください。(初心者なので多少は仕方ありません)
力の弱いときは「はーい!もっとしっかり蹴って!!」と指示を与えます。


ひとつひとつのキックを意識させ、はじめから早く蹴らせる必要はありません。
はーい!ポーン!ポーン!ポーン!ポーン! 蹴ってぇ!蹴ってぇ!蹴ってぇ! そうそう!!
こんなタイミングでよいのです。


蹴るためには、戻す動作が必要ですが、これは教えなくても自然に出来るようになります。
なぜなら反対の足を蹴ると、体を支えるためにはじめに蹴った側の足は自然と反対の動きをするからです。

蹴る動作に集中することで、自然にスムーズに腰の動きが出来ていきます。
特に細かい指導をしなくても、蹴るために最低限必要な太ももの筋肉を使うようになります。
このときヒザを伸ばせということも言いません。

必要なのはしっかり蹴るということを指示するだけです。


手の平に神経を集中させて蹴らせるようにすることが重要なのであってヒザを伸ばす指示を出すことはあまり重要ではありません。
後は小さく蹴ることを意識させることで、ヒザを大きく曲げなくなります。

※但し、つま先は伸ばして足の甲で蹴らせることを意識させます。(ここが一番重要です)


◆キックの指導のポイント


1)過去の教え方は綺麗に忘れよう
2)ヒザを曲げるなは言わない。
3)出来るだけ小さく蹴らせる。
4)力を抜かせて蹴る時だけ力を入れさせる。
5)手の平を蹴らせる(蹴るという感覚を教える)

この指導をするだけで、驚くほど早くバタ足をマスターさせることが出来ます。
出来た子には、ビート板を持たせ、早速25メートルを泳がせてみましょう。

※子供達がバランスを崩してひっくり返らないように監視をすることは必要です


自分が水の上で前に進んでいるという感動を子供達が身体全体で楽しんでいるのを確認することが出来るはずです。

前に進まない子供がいたら、壁キックの時と同じように、手の平を蹴らせるようにしてみてください。
そのとたんに前に進み始めます。

この指導方法を実践したら、これからの水泳指導方法が180度変わります。


この方法は、子供に腰の動きなどの違いが生じることへの迷いを与えません。
小さく、強く、足の甲で蹴るというたった三つの注意点に集中できます。
しかも、強くは手のひらをキックすることで、体が覚えます。足の甲もそうです。
大事なのは小さく、そして強く蹴ることだけです。


ビート板を使用する練習に入ったら、水面を蹴らないように注意してあげてください。
水面をいくらキックしても、あまり推進力にはなりません。(蹴らないよりはましですが)
あくまでも水を蹴るということを教えます。

最初に覚えたキックが正しければ、正しい癖がそのまま身につき、指導者も苦労せずに済むでしょう。
前に進む感覚がわかれば、後は自然と足首が柔らかくなっていきます。


自分のキックに自信がない方へ

ビート板を使用してのキック練習をしても前に進まない人は、自分のキックが上のポイントを意識していたか確認してみてください。誰もが教える『腿からつま先まで伸ばしてキックしろ!』という言葉を信じで練習してきた自分にショックを受けるでしょう。


今日からあなたは苦痛だったキック練習が楽しくなるに違いありません。
なぜなら、ウソのように前に進む感覚を楽しめるようになるからです。
早くキックをする必要はありません。ゆっくりでも十分に前に進むことがわかります。


これからは、ひとつづつ丁寧に蹴るという動作で前に進む感触を楽しんでください。