「従軍慰安婦」は現代の「風俗店女性店員」発言や議場最前列での長時間にわたる居眠りなど、議員としての資質を問われる言動が目立つ田中ゆうたろう杉並区議が、生活保護者に対する塾代助成をめぐって「働かざる者食うべからず!」といったあからさまな差別発言をブログ上の記事で行っている。

 問題の発言は2014年1月7日付で田中議員が自身のブログに掲載した「生活保護世帯への過剰助成に異議あり」 と題する記事。生活保護世帯に対して杉並区が支給する塾代が多すぎると批判する内容だ。都と区の助成をあわせると上限30万円が支給される。一方、低所得者向けの都の貸し付け制度は上限20万円。生活保護世帯のほうが10万円多くもらえるのはおかしい、という意見である。
 
 支給と貸し付けを同列に論じること自体、クビをかしげざるを得ないが、田中氏はつぎのように述べて区の助成の中止を求めている。

〈区は「貧困の連鎖防止」と説明しますが、説得力はありません。働かざる者食うべからず!このことわざを深く肝に銘じてこそ、初めて、貧困の連鎖もまた真の意味で断ち切られる時が訪れるはずです。
 私は、何よりもまず自助・自立を尊びます。個々人が公に支えてもらうのではなく、額に汗して働く人が報われる社会を目指すべきだと考えます。生活保護は、最後の安全網として、これを真に必要とする人にこそ行きわたらせるべきではないでしょうか。〉


 生活保護を受給することがまるで悪いことであるかのような言い方にみえる。生活保護は憲法が保障する基本的人権を確保するための制度だ。当然、悪いことなどではない。事情あって生活に行き詰った場合のセイフティネットである。仕事によって生活が支えられるならば誰だって働くだろう。仕事がないか、病気その他の事情で働けないか、あるいは仕事があったとしてもとても生活を支え得る条件ではない―-など、それぞれ事情があって生活保護を受給している。

 しかし田中氏は平然と「働かざる者食うべからず」という。とても議員の立場で言うべき言葉ではない。市民にはみな生きる権利がある。田中氏の発言はその権利を否定しているに等しい。奴隷農園の農場主にでもなったつもりなのかもしれない。

 公的なお金で生活を支えることが「働かざるもの食うべからず」と非難されるのであれば、田中議員自身も同じ非難の対象になって当然だろう。1000万円を超す議員報酬と192万円の政務活動費。金額と政務活動費の使途には疑問が多く指摘されている。加えて家業の幼稚園・保育園業には億単位の公的資金が投入されている。

 それとも「自分は働いている」からもらって当然だとでもいうのだろうか。そうであれば、軍人恩給や年金暮らしの人たちはどうなのか。

 つまるところ田中氏はこう言いたいのではないか。

 〈貧乏人はもっと貧乏になれ、おまえらにやるカネなどない〉

 「杉並のトランプ氏」と呼ぶにふさわしいが、これもつまるところ、選んだ側の問題である。