【「広報すぎなみ」 特別職・議員の期末手当を過小表示
「役職加算」を無視、6月分を「3・68月」分とゴマカして記載】

2015/12/24





 特別職職員(区長・副区長・常勤監査委員・教育長)と区議会議員の報酬・期末手当をめぐり、年末に発行された「広報すぎなみ」(12月1日付、2148号)が、期末手当の算出月数について、「加算率」を無視した小さな数字しか記載しておらず、読者に誤解をあたえかねない内容になっていることがわかった。

 取材に対して、記事を作成した職員課(手島広士課長)は、「総務省の様式どおりに記事にしている」として、改善の予定はないと述べた。

 問題の記事は「広報すぎなみ」12月1日号の2面と3面に見開きで掲載された「お知らせします/職員の給与と人事行政の運営状況」と題する特集記事。一般職職員の給与・期末手当について表形式で説明しているほか、区長ら特別職の給与・期末手当・退職手当も、一覧で説明されている。なお、12月議会で月額・期末手当の月数がともに、11月にさかのぼって増額する条例が成立しているが、記事は旧額のままである。

・区長(田中良) 月額給与:111万3100円/期末手当:計3・68月分/退職手当:1年につき100分の450

・副区長(
松沼信夫/宇賀神雅彦=敬称略、以下同) 月額給与:89万1900円/期末手当:計3・68月分/退職手当:同100分の306

・教育長(
井出隆安) 月額給与:76万4400円/期末手当:計3・68月分/退職手当:同100分の234

 特別職には常勤監査委員(上原和義=元会計管理室長、シルバー人材センター元常務理事からの天下り)もいるが、これは記載がない。

 誤解を与えかねない表現というのは、このうちの期末手当の月数だ。何も知らない人がこれをみれば、単純に給与月額に3・68月をかけた額が期末手当だと思うだろう。しかしちがう。「加算」があるのだ。加算とは、月額給料に一定の係数をかけて増やし、それを基礎額として月数をかけるというものだ。

 特別職の期末手当を算出するための加算について、「杉並区長等の給与等に関する条例」はこう定めている。

 
第5条 期末手当の額は、次に掲げる額の合計額に、3月に支給する場合においては100分の25、6月に支給する場合においては100分の167.5、12月に支給する場合においては100分の175.5を乗じて得た額に、給与条例の適用を受ける職員の例による支給割合を乗じて得た額とし、その支給方法その他支給に関しては、給与条例の適用を受ける職員の例による。

(1) 給料月額に地域手当の月額を加えた額
(2) 前号の額に100分の20を乗じて得た額
(3) 給料月額に100分の25を乗じて得た額


 なんのことか、読者諸氏はおわかりだろうか。私は何度も読み返し、役所の職員にきいてはじめて理解できた。年3回、計3・68月分が期末手当である。ただし、その「月」とは月額給与に(1)ー(3)の加算率をかけた額である。そういうことらしい。
 
 (1)の地域手当は14・5%。つまり月額の1・145倍の額だ。(2)はこの(1)に0・2をかけた額。つまり、0.229。(3)は0.25。合計すると1.624である。

 給料月額にこの1・624をかけた額を基礎額として、3・68月倍したのが、期末手当の額なのだ。わかりやすくいえば、

1.624☓3・68=5・97632月

 である。

 3・68月と5・98月ではずいぶん違う。区長で250万円以上の開きがある。

 なぜ、広報の記事に加算率を書かないのかーー。

 取材に対して職員課の職員は、「総務省の様式」を理由にあげた。同省のホームページをみると、たしかに職員給与などの公表用の様式がある。そのひな形をみれば、たしかに職員のいうとおり、特別職の期末手当については「加算」を書く欄はない。しかし、だからといって、あえて「加算」を書かない理由などあるのだろうか。

 さらに、12月議会で可決された報酬増の条例によって、広報誌で大々的に掲載した給与額や期末手当の月数も変わった。

 「当然、新年の広報では、あたらしい給与額について掲載するんですよね。その際、ぜひ加算のことも書いてほしい」

 職員課の職員にそう伝えたところ、驚くべき回答があった。

 「記事を出す予定はありません」

 なるほど。私は疑いを抱くにいたった。「総務省」うんぬんとはいいわけで、意図的に「加算」を無視して記事にしたのではないか。動機はありえる。区民に対して特別職の収入を低くみせるためだ。

 12月1日号発行時は議会の開会中で、増額する条例案が区長部局より上程されていた。それでいて加算も増額のこともあえて書かないのは、区民をだます「虚報」である。