博士号所持者1人を育てるのに投入される国費は、1億円から1億5000万円と推計されています。

日本では、この博士号所持者(博士)のうち、なんと1万人以上が定職を得られず、就職難に苦しんでいるといわれます。

 

率直に言って、これは国家的な損失です。

ちょっと強引に考えれば、1億円×1万人で、1兆円もの損失です。

 

そもそもなぜポスト(雇用数)に対して博士が増え過ぎてしまったかといえば、

1991年、当時の文部省が「1991年から2000年までの10年間で大学院生を2倍に増やす」と目標を立て、大学院を整備したことに起因します。

彼らは、ある意味では国の方針で作られた博士たちなのです。

 

私は、国の成長戦略として、科学技術をはじめ教養に長けた博士を大量に求めた、この方針は間違っていなかったと思います。

 

しかし、せっかく国の予算を増やして育ててきた博士の就職先が用意されていないのであれば、本末転倒です。

結果として海外への頭脳流出が発生しており、国益の観点からも深刻な問題だと感じています。

 

当初の予想通りには企業採用枠や教授ポストが増えなかったのであれば、

国が需要を創出し、増えた博士の供給を吸収するべきです。

 

すなわち、「研究職を希望するすべての博士を大量に雇用できる研究機関」の新設が急務です。

 

博士とは、研究のプロフェッショナルです。

本来、博士号の数だけ、研究の需要が存在するのです。

はじめは大掛かりな施設を用意できずとも、新技術について、ひたすら構想を練る機会と時間を与えるのでもよいでしょう。
 
『50年、100年先に実用を目指す未来志向の研究であれば、なにを研究しても構わない』
私は、そんな理想的な環境を研究者に用意することが国の責務であると考えています。
 
かつてSF小説『楽園の泉』に宇宙エレベーターを登場させた作家のアーサー・C・クラークは、
宇宙エレベーターは、誰も笑わなくなってから50年後に実現する」と述べたことがありました。
 
そしていま、経済産業省の『技術戦略マップ2009』には、
「宇宙エレベーターの実現は2050年頃」との記述があります。
 

技術の基礎研究は、なかなかすぐに利益が出るものではありません。

そんな研究にこそ、国家百年の計で取り組む必要があります。
 

飛行機のない時代、インターネットのない時代、誰が未来を予想できたでしょうか。

 

未来はやってくるものではなく、作るものです。

そして技術には、一番乗りした国や企業が総取りするという側面もあるのです。

 

企業が利益になりそうだと考え始めたときには、すでに遅いのです。

 

突飛なアイデアの現実化のため、日々の研究に地道に取り組む博士たちの力を十二分に発揮できる「箱」を用意することは、国益に叶うことであり、世界に貢献することでもあります。

 

なお、「文系の博士号所持者はどうするのか?」と訊かれる向きもあるかと思いますが、同じ研究施設に吸収する形でまったく問題ありません。
 
博士号とは、専門分野に関わらず、どんな研究にも「博士」として取り組むことができる者に授与される学位だからです。
 
文系博士と理系博士に、少なくとも新技術への基礎研究にあたっての本質的な違いはないのです。
先のクラークが良い例ですが、文系的な素養や法律学的な素養が技術の基礎研究に必要なシーンなど、いくらでもあるでしょう。
 
すべての博士号所持者の叡智を結集し、存分に活躍してもらえる場を作って参りたいと思います。

 

すぎむら慎治

 

★町工場を経営する職人の父の背中を見て育つ
★明治大学 政治経済学部 政治学科 卒業

★日本テレビの情報バラエティを制作
「国民クイズ 常識の時間」(司会:古舘伊知郎・爆笑問題)等を担当
★日本初のネットTV局「USEN-GyaO」の企画立案と番組制作をプロデュース
★政治の道を志し、石井議員の事務所を叩く
クツ磨きとカバン持ちの書生生活を経て、私設秘書として仕える

★私設秘書、公設第二秘書、公設第秘書として、多方面にわたり政治の事務方を担当する