婦人科で治療を始めて一年たった頃、通学途中にひどい腹痛に襲われた。
とにかく、痛くて、吐き気がして、冷や汗が出てきて。
何がなんだかわからなかった。
救急外来に運ばれた。
パニック障害を疑われた(おいおい・・・)。
ちょっとびっくりして、婦人科で治療を受けてるって話をして、注射を打っているって話した。
それで婦人科医がやってきた。
それが排卵誘発剤だってその医者に説明されて初めて知った。
おじいちゃんは自発排卵をさせるために、一時的にホルモンを充填し、それからしばらく薬をやめるっていう治療をしていたみたい。
理論的には人間には恒常性があるから、ホルモンが増えて、それで減ると、減った分を補おうとして、脳下垂体が働き出すらしい。
でもこの療法は反応のいい若い間しかできないし、長い間行うと薬の反応が悪くなってしまい、妊娠をしたいって思った時に打つ手がなくなってしまうって。
そのお医者さんと話し合ってやめることにした。
後でわかったんだけど、そのおじいちゃん婦人科医さんはこの地域で有名な不妊治療の方だった。
そのままあのおじいちゃん先生の受診を続けてればよかったのかもね。
私はその総合病院のお医者さんを主治医にした。
その先生の考え方はおじいちゃんと真逆。
「今すぐ妊娠したいって思わなかったら、子宮が小さくならないように消退出血だけ起こしておこうね」
そういってノアルテンだけをくれた。
その頃はピルが発売されていなくて、PCOSの治療はすんごい大変だった。
妊娠できますか?
そう聞いたら、
「それはそのときに考えよう」
そういって、仮面のような笑顔を浮かべた。
おじいちゃんは妊娠できるって言い切ってくれたのに。
正直すぎる若手のお医者さんの対応がつらかった。
あー、ずっとひとりなんだ。
赤ちゃん抱っこするのは無理なんだなー。
この時、私は20歳。
幸せな夢を見る資格がないんだと思いこむことになる。