隣を歩いていいですか -5ページ目

27.求めていたもの

「うん」

私は、不服そうな顔をしながら

とても小さな声でそう言うと


部屋を出て玄関まで見送ろうとした。


そして、廊下に出たのだけど

どちらともなく続けたキスは

止むことがなかった。


もつれ合うようにキスを続けた。


「今日は

キスだけでやめようと思ってたのになぁ」

そう言うと

私は、わがままな子供をなだめるような目で見て

ぎゅっと抱きしめた

そして、ベッドにたどり着いた


私は勝ったと思った。

言い方は悪いけど


彼とHをしたいというのではなく

私ともっと一緒にいて欲しい

私を求めて欲しい

気持ちを動かしたい

そう思ったからだ。


それに、次いつ会えるか分からないし。


こうして彼のぬくもりに包まれて…。



26.これで終わり?

彼から連絡が来たのは

前に会ってから10日後のことだった。


(今から会えないかな?)

こうして突然届くメールは

私たちの関係を主張しているようだった。

(いいよ)

彼の誘いには、いつだって応えるつもりだった。

(これから行くよ。20分後くらいになるかな。コーヒー入れてね)

そのメールの数分後台所でお湯を沸かしている自分が

少し好きになれた。


彼の到着を知らせるチャイム。


よく、鼓動が周りの人にも聞こえるんじゃないくらいのドキドキって言うけど

本当に彼に会っているときは、そんな感じがする。

まともに彼の顔が見れない。

一緒の空間にいられることが嬉しかった。

一緒にコーヒーを飲みながら

テレビを見ていた。

しばらくして

彼は、勤務先からだと言って

何回もブルブル震えてランプを点滅させる

携帯を手に、メールを打っていた。


その彼の姿を、なるべく見ないように

疑う心も持たないように。


ようやく一段楽したのか

並んで座る私を膝枕にした。


そうして、何度もキスを重ねた

何分も続いたように思えた。


でも、彼は私の頭をポンポンと撫でて

「今日はこれで終わりな」

そう言うのだった。



25.抑え

それからしばらく、お互い連絡を取ることはなかった。



…いや


私は取らないようにしていた。

彼は取る必要がなかった。


と言ったほうが正しいのかもしれない。


私は彼と会い、ホッとした反面

会えないときはメールもしていたい。

日常のたわいないこと

例えば、おはようやおやすみの言葉を交わすこと…

そんなことがしたい欲も出てきてしまった。


でも、私たちの関係はセフレ。

そうできる存在ではないことは分かっていた。

もう絶対、彼には嫌われたくない。

重荷にもならないように。


彼にのために…と思ってることが

私を都合のいい女にさせていってるのかな…?


24.確認

今となっては、とてもとても珍しく

お昼に彼からのメールが受信を知らせた。


(お前のこと傷つけてない?やっぱりやめとこうか。)


だったら、他に私を救う術があるって言うの?

彼の優しさも、私には響かなかった。


(大丈夫だよ。お互い望んだことやん)


少し突き放すような言い方しかできなかった。

たった1日で、戻りたいと甘える気は全くなかったし

言ったところで戻れないことも、ちゃんと分かっていた。


別れるでも、付き合うでもない宙ぶらりんな関係。

もちろん私はそんなこと望んではいない。

でも、2人の妥協点の中にセフレというものがあった。


(そっか。ならいいけど)

こうして、お互いが再確認しあったのだと思う。


23.二回目のsex

彼はゆっくりと私に近づいてキスをした。


何度も何度も重ねた唇は、心地よかった。

例え、私に気持ちは向いていなくても

今、私の目の前にいるのは

私の大好きな人。


一緒の空間にいることができる

それだけでよかった。


彼の大きな手や太い指も好きなところの一つ。

その手が、私を気持ちよくさせていった。


ただ、気持ちだけが、少しついていかなかった。


事が終わると、特にゆっくりすることもなく

彼は

「じゃぁ、帰るね」

そう言って

とても、とても長い一日が終わった。


求めていたものは

きっと、こういうことなのだったけど

本質的には違っていたのだろう。


でも後悔はしていない。

寂しさと不安は精一杯埋めることができた。