チモシンβ4について | 株式会社AIJの開発者日記

チモシンβ4について

チモシンβ4について

バルジ領域と毛包幹細胞
本来繊維芽細胞などが存在する領域である毛根に上皮系のケラチン細胞が活発に活動するのか、といった疑問が、最近の研究によってその仕組みが明らかになりました。つまり、毛根にあるケラチン細胞(毛母細胞)は、もともとバルジ領域と呼ばれる毛根上部の膨らんだ部分に存在する幹細胞から毛根に移動してきたものである、ということが解ってきたのです。

このことは、発毛を促進するのに一つの指針を与えます。すなわち、バルジ領域の毛包幹細胞の毛根への移動を促進してやれば、毛根に毛母細胞がセットされ、その発毛を促進する効果が得られるであろう、ということです。
チモシンβ4は、まさにこの働きをする蛋白質なのです。


チモシンβ4の概略
チモシンなどの主に胸腺から分泌されるホルモンあるいはサイトカイン類は、リンパ系に関連して機能するものが多いのが特徴です。こうした中で、43のアミノ酸から構成されるチモシンβ4は、胸腺だけでなく、筋芽細胞、繊維芽細胞、甲状腺などでも分泌され、その作用は、主に繊維を構成する蛋白質であるアクチンの重合にかかわるものです。ただし、その他チモシン(β9、10、15)やVEGF、bFGFなどと共に血管新生にも影響を与えるようです。

チモシンβ4の働く仕組み
G-アクチンと呼ばれる微細繊維は、平行反応でF-アクチンと呼ばれる重合体を作ります。これは、他に反応要素がなければ、基本的には平行反応であり、その濃度によって、G体とF体の比率が決められます。しかし、実際はもっと複雑で、その他さまざまな要素が絡んでこの平行反応を制御しています。

ATP(アデノシン3リン酸)のついたアクチンは、F-アクチンに付いて重合反応を進めていくのですが、このアクチンにATPをくっつける働きをするのがプロフィリンという蛋白質です。ですから、プロフィリンが存在するとアクチンを高分子量化する方に反応を進めます。一方、G-アクチンと1:1で会合し、F-アクチンからG-アクチンを分離してしまう働きをするのがチモシンβ4です。ですから、チモシンβ4は、F-アクチン繊維を緩める方向に反応を進めることになります。
先ほど、バルジ領域に毛包幹細胞が存在し、それが毛根に移動することによって、毛母細胞になる、といった話をしましたね。ただし、バルジ領域に存在する幹細胞は、あふれるほどあるわけではありません。全体のほんのわずかな割合の細胞のみが幹細胞として機能することができるのです。
しかも、この貴重な幹細胞も、毛根に移動しなければ、機能を発現できません。そのまま残っていたとしてもいずれは、何らかの細胞に分化してしまって、せっかくの幹細胞としての機能も失ってしまします。

ここで、バルジ領域をチモシンβ4がリッチな環境にしたとします。すると、細胞を拘束していた繊維状蛋白質が上記の理由で緩みますよね。それで、拘束されていた細胞の自由度が増し、細胞移動が活発になるわけです。当然、毛包幹細胞の毛根への細胞移動も活発になります。
また、チモシンβ4にも血管新生を促進する働きもあるようです。血管新生による育毛効果については、別の題材を例にして説明します。