BSプレミアムで放映されている「山田洋次監督が選んだ日本の名作100本」
5月29日(日)は、1973年の映画「恍惚の人」でした。
監督 豊田四郎 脚本 松山善三 出演 森繁久彌、高峰秀子、田村高廣…他
茂造(森繁久彌)は老妻が死んで以来、ますます老衰が激しくなる。
他家へ嫁がせた自分の娘の京子(乙羽信子)の顔さえ見忘れていた。
息子の信利(田村高廣)の顔も忘れ、暴漢と錯覚して騒ぎ出す始末。
突然家をとび出したり、夜中に何度も昭子(高峰秀子)を起こす。
恍惚の人というのは、あまりいい言葉ではありませんが、ボケ老人のことなんだそうです。老人性鬱病とも書かれていました。
痴呆症やアルツハイマーというような病気って、現代病なのかと思っていたのですが、実は40年も前に、このような形で問題提起されていたんですね。
番組の中で紹介されていたのですが、この84歳の痴呆老人の役を森繁久彌さんはなんと、当時40代で演じています。ビックリです。森繁さんって、コメディーとか、ふざけた役ばかりしているのかと思ってましたが、やっぱり名優さんだったんですね。
痴呆の父親を支える主婦昭子を演じているのはこのシリーズで、毎週のように登場している高峰秀子さん。二十四の瞳から浮き雲、そしてこの作品と、名作には欠かせない素晴らしい女優さんですね。
家族ではあるが、精神病院に預けるしかないという絶望感…
ある雨の日、道端で向い側の塀の中からのぞいている泰山木の花の白さに見入っている茂造… 美醜の感覚は失われていないと思った期待感…
その夜、ちょっと目を離した隙に湯船の中で溺れてしまい…
便所に閉じ篭もり、畳一面に排泄物をこすりつけ…
期待と絶望の中で翻弄されるのは、昭子(高峰秀子)さんばかり…
ラストでの頬を伝う涙には、こちらも思わず…
これからの高齢化社会、痴呆症を含む介護との戦い…
家族でできることって… 自分ができることって…
もう、今では映画だけの世界ではないこの問題。
女性だけに任せられないと言うことはわかってはいるのだが…
心配ばかり膨らんでしまいました…