先日、立川志の輔の牡丹灯籠を聴いた。この話、「牡丹灯籠」という名前は怪談噺としてほとんどの人が聞いたことがあると思うが、詳しいことは知らないのではないだろうか。私も知らなかった。この日、志の輔師が解説もしてくれた。


この噺は、落語界の中興の祖、三遊亭圓朝作ということは有名だが、明治17年に今はなき人形町の末広で15日間連続で口演したのが最初だそうで、たまたまそこに来ていた二人の速記者によって速記本として残しているという。つまり全編は1日2時間の口演X15日=30時間の長編なのだ。


その超大作を志の輔師は、前半の40分で相関図を使って、出演者の人間関係及び全体の半分以上のあらすじを説明。休憩をはさんで後半の90分の口演で牡丹灯籠を完結した。


私は好みがうるさいので聴く噺家に偏りはあるが、年間に10回以上は落語会などに足を運ぶ。しかし、終始見るものを釘つけにくれる口演に出会うことは1年に一度あるかないかなのだが、この日がそれであった。以前に書いた、柳家三三の「金明竹」以来である。


怪談噺という噺の性格上、全体的に暗くなりがちであるところを、志の輔師は途中に、師独特のくすぐり的な表現を盛り込み、聴く者の肩の力を抜いてくれている。


さすが立川志の輔、圧巻だった。