(続き)

その談志にも一つだけ評価できることがある。それは後に続く立派な弟子を輩出しているという功績である。具体的には、ご存じ志の輔、談春のツートップを先頭に、人気急上昇の談笑、談志に自分の奇才を継ぐ男と言われた志らく、私の赤丸付き注目株の生志などがいる。立川流全ての弟子を知っている訳ではないが、私見ながら、この5人は抜きんでていると思う。



東京だけで噺家が400人近くもいるが、一師匠の弟子で、お客を呼べる魅力ある噺家を5人も育てた例はないと思う。落語協会と対立して、脱退後、ユニークな「立川流」を創設したのだが、その特徴の一つが、「二つ目昇進には、落語50席と都々逸・長唄・かっぽれなどの歌舞音曲、真打昇進には、落語100席と歌舞音曲を習得しなければならない。」というものがある。昔は当たり前のことだったのかもしれないが、噺家の数ばかり多い中、こういう昇進基準を設けて厳しく育てたのは特筆してよいだろう。



もう一つの特徴に「上納金」制度があるが、これには批判もある。ついでながら、ご存じない方の為に説明させて頂く。

立川流にはABC3コースがある。Aコースは落語家、Bコースはビートたけし他の芸能人を中心とする有名人、Cコースは一般人で構成され、それぞれ昇進基準が異なる。(説明は割愛。)

入門者には、落語立川流への上納金の納付が義務付けられている。

Aコース:入会金10万円、前座・見習・二つ目は月2万円、真打は月4万円。(但し真打で会費総納入額270万円に達したものは満了となる。)

Bコース:入会金10万円、月々2万円

Cコース:入会金2万円、月々5千円



談志には談志なりの考えがあってのやり方なのだろうが、どうなのだろうか。Bコース、Cコースはお遊びみたいなものだからどうでもよいが、売れるまでには年月を要する修業中の弟子には相当の重い負担だっただろうと思う。実際に、弟子は「これで上納金を払わずに済む。」と嬉しそうに話していた。



家元(と呼ばせている)談志亡き後、立川流はどうなるか、というのが落語ファンの気になるところである。やはり噺家は寄席という本来のホームグラウンドでやりたいという思いが強いはずだから、私は落語協会に戻るのではないかと、期待も込めて考えていたが、そう簡単では無さそうである。



大変長くなりました。ずっと心に思っていたことなのでこの機会に全部吐き出しました。故人を悪く言うのが本意ではありません。昔のまま、数少ない実力派として、君臨していて欲しかったのです。私には、あんな風に嫌味に変貌してしまった談志が残念でならなかったのかもしれません。

心より故人のご冥福をお祈り申し上げます。