あれは・・・・いつのころだったか
いつも俺を気にかけてくれていた優しい先輩
その枠を越えてしまったことへの罪悪感・・・・・
誰にも言えない思い・・・・・
そんな不安定な青臭かった時の記憶・・・・
「・・・・・翔くん、どうした?」
・・・・・なんでもない!

「なんでもなくないでしょ?・・・・」
・・・・・・俺の事はいいから!

「翔くん、?どうした?」
・・・・・どうもしない。
「そう・・・・・ならいいけど」
・・・・・・・俺のことは気にしないで!
「・・・・・・・・。翔くん、」

「・・・・・・ねぇ、翔くんこの頃さ、」
・・・・・・・いい加減、子供扱いやめてよ!!
「・・・・・・そんなつもり、」
・・・・・・・放っておいてくれ!!!!
「・・・翔・・・くん。」

「わかった、・・・・・無理するなよ」
すれ違いざま、か細い声で囁くように
立去る背中を見ることもせず
意固地になっていた・・・・あの頃
今ならわかる・・・気がする
もう遅いけれど・・・・・
・・・・・・翔くん、
・・・・・・翔くん!!
・・・・・・翔くん?
もう・・・・・俺を呼ぶ声が聞こえなくなって
初めて気づく・・・・・
離れている距離がもどかしい
あなたの、そばにいる仲間にすら苛立つ
つまらない意地を張って
大切な人を失くしてしまった
その思いから抜け出ることは・・・・
出来なかったんだ

あれから7度目の夏・・・・・
どんな時間を過ごしてきたのだろう
あなたの周りには・・・・・いつも華がある
あなたが望まなくても
あなたを必要としている人たちが常にあなたを守る
その中に入りそびれた俺は・・・・・
ただ遠くから
他の人に向けるあなたの笑顔を
眺めているだけ・・・・・・
俺の存在すら気づいていないかのように
あなたは・・・・俺を通り越して
視線を合わせようとはしないんだ
俺の・・・・理論は
間違ってなんかないと、そう・・・
思う度に
心は空回りを始める
あの時の感情に流され無いように
必死で守ってきた俺の中の常識は
あなたの存在の前では無意味だと
思い知った・・・・・・
それは・・・・恋なのか
愛なのか・・・・それとももっと別のものなのか
最早・・・・確かめるすべなどない
初夏の訪れとともによみがえる
苦い思い出は・・・・・
年を重ねるごとに鮮明になっていく
「・・・・・俺は、つくづく阿呆だな(苦笑)」
・・・・・・・・翔くん
いまだに耳の奥に響く柔らかい声・・・・・
・・・・・・・・翔くん
そうだった、少しだけ鼻にかかる最後の韻が好きだった
こそばゆい響き・・・・・
「・・・・・翔くん、」

えっ???
「翔くん・・・・・・」
なんで・・・???

俺は・・・・・夢でも見てるのか??
あの人の声が俺の名前を呼んでいる
懐かしい響きが広がる・・・・・
「翔くん・・・・・・翔くん・・・・・」
「・・・・・・・・・。」
向き合ったあなたの瞳には
今にも泣きそうな自分の顔がはっきりと
映し出されている・・・・・・
この瞬間は俺だけを映し出してくれている
「・・・・・翔くん、話があるんだ」
思わぬ言葉に我に返る
「・・・・・話?」
「そう・・・・翔くんには一番に伝えたかった」
「伝えたかったって・・・・なに・・を?」
のどの奥が乾きうまい具合に声すら出せていない
「・・・・・・渡米するんだ、明日」
「えっ?」
「だから・・・・・このままじゃいけないって思ってね」

「・・・・・・今日、時間あるかな?」
真っ白な頭で俺が出した答えは・・・・・・