焼き尽くされそうなほどの

熱い焔は・・・いつまでたっても俺の中に燻ぶったまま

畏敬・憧れ・恋慕・愛・憎しみ・哀・友愛・嫉妬・慈愛・・・・

あなたを想うとき常に伴ってきたであろう

感情の数々

相反する心のバランスを保つことが

もう・・・限界だと俺に問いかける

抑えきれない情念はきっとあなたを困らせる

わかってはいるが・・・どんな言葉を口にしても

自分の心中にいる存在を押しのけてまで

普通の幸せを手に入れたいなどとは

到底・・・思えないんだ







ねぇ・・・大野さん

・・・・・もう、智くんとさえ

呼べなくなってきた俺等の関係は

以前のように屈託なく笑いあえていた

あの頃に向かって・・・

もう一度、走ることは出来ないのだろうか?




・・・・大野さん、

・・・・大野さん、




あなたが俺を呼ぶ声が今も

頭に響いている

翔ちゃん・・・・・って

その、甘えるような声色で

俺の焔を・・・消してくれないか?

燃やし尽くして灰になるまで

・・・・・サトシ

















言葉になんて出来るわけがない




俺の中の芽生えた初めての感情は

行き場を求めて彷徨い始める

俺の身体を駆け巡る甘く締め付けるような

感覚は・・・

どこまでも俺の心を捕らえて離さない




思い描くたびに温かくあふれ出る

君の声が聞きたい

今すぐにでも・・・・

俺を呼ぶ君の声が・・・







・・・・オオノサン




いまの距離を表す哀しい呼び名




・・・・・オオノサン




なぁ・・・ショウくん




もう一度・・・サトシくんって




呼んでくれないかな?




甘く熱い口づけのような

メロディーで・・・・




ショウ・・・・




呼んでよ・・・俺の名前を





















そんな想いを抱えて

顔を合わす瞬間・・・

こわばる口元が今の自分を物語る


同じように・・・

ショウくん・・・

君の口元も俺と同じように

ぎこちなく固まっている









チラチラと見え隠れする

期待と・・・不安


いっそ・・・

楽になってみようか?


想いを伝えて


万が一想いが叶ったのなら

そのときは・・・・



思い切り抱きしめよう


記憶に刻み込むように

きつく・・・・・








「・・・・・大野さん、あの、今度の月曜日・・・時間とれる?」



「えっ?・・・」





動きを止めた俺の脳裏に

あり得ない光景が膨らむ

哀しいほどの幸せな光景が・・・・・




「なに言ってるの、その日ZEROじゃん、無理すんなって」


「・・・・無理してなんかいないよ!」


あまりの声色驚き振り向いた俺に









「・・・・大切な話があるんだ・・・相談に・・・のって欲しくて」




それは、今までに見たこともないほどに

憂いを帯び・・・事の重大さを思い起こさせた

と、同時に先ほどまで思い描いていた・・・・

小さな期待はもろくも崩れ去り・・・・

哀れなピエロの薄笑いだけが

自然と俺の表情を作り出しいく・・・・



「・・・・・俺、寝ちゃうかもしれないから、ついたら起こして」



「大野さんの家に行ってもいいの?」



「・・・・翔くんの・・終わる時間まで外で待てそうに・・ないから」


「あっ・・・そうだよね・・・ゴメン、・・・でも・・・」


「でも?・・・」


何かを言いたげな翔くんは一度も俺を見ようとはしない


それも・・・もうだいぶ慣れたけれど


「でも、なに?」


俺はわざと輪をかけて追い立てる


「・・・・もし、起きなかったら、家には入れないなって・・・」



・・・・・まぁ、あり得るかな、でも翔くんが来るって分かっていて

眠れるわけ無いじゃん・・・・






あっ!



「なに?俺んちの鍵でも渡しとけばいいの?」



思い切って・・・・そう言ってみた


困った顔が見たくて・・・



「・・・・そうして・・・もらえるなら」




「えっ?」



意外な答えに俺の方が戸惑っていた


そんな気さらさら無かったのに


握りしめた鍵の行方を・・・・



翔くんの横顔を見ながら


考えていた・・・・・



綺麗な横顔を見ながら・・・・・