"Because The Night" Patti Smith | 誰にも騙されるな!Don't Take Any Shit From Anybody・・・

"Because The Night" Patti Smith

$誰にも騙されるな!Don't Take Any Shit From Anybody・・・

僕の住んでいるマンションから見える、
東京の夜景は格別なんだ。

東京タワーに
六本木ヒルズ、
羽田空港に離着陸する飛行機、
ホームランの時に打ち上がる、
神宮球場の花火だって見える。

10年もの間、僕はこのベランダでずっと
煙草を吸いながら、そんな夜景を眺めてきた。

スカイツリーがどんなに高くそびえ立っても、
比較にはならない想い出が
あの東京タワーにはたくさん詰まっている。
子供の時から、
今でさえ、
あのでっかいクリスマスツリーは、
ずっと僕を見守っていてくれた。

僕は辛いとき、ずっとベランダから「君」に話しかけていたんだ。

羽田空港に着陸するために
上空で待機している飛行機は
夜空にいくつも連なって、
蛍を観賞しているような、、、それは美しい光景だ。

あの光の中には、
ディズニーランドを空から見下ろして、胸ときめかせている人、
待っている人のために早く着陸しないかと、いらついている人、
明日からの厳しい商談に憂鬱な思いで夜景を見ている人、
田舎を飛び出して始めて東京に降り立ち、不安に苛まれている人、
色々な想いが詰まった光だと思うと、
ちょっとロマンチックな気分になる。

花火は神宮球場だけではなくて、
多摩川や府中、東京湾の花火大会も
遠くに眺めることもできる。

線香花火のように小さく、弱々しく見えるけれど、
遅れて聞こえてくる音は驚くほど力強くて、
東京で感じる数少ない昔ながらの風情。
不思議と心が騒ぐ。

やっぱり、花火は真下で、近くで見てみたい、、、
そんな衝動にかられてしまう。
花火の音は一人で聞くのは寂しすぎるね。

低く雲が垂れ下がった雨の日の夜は、
もやの中にサーチライトのように光の柱が並び立ち、
いくつもの斑点を天上に作り上げる。

その下には、渋谷、六本木、赤坂、、、
眠らない街がそこにはあり、数えきれない人々が蠢いている。

自分もその中で酔っ払い、大声を出していたのが見えるようだ。
ネオンライトに囲まれた雑踏の中、
人混みの中なのに何故かふと孤独を感じて
蟻のように小さな僕はその光の柱を見上げているのを、
もう一人の僕がベランダから見ている。
「何で寂しいんだろう?」

何もかもに絶望してしまった時、
いっそ鳥になり、
このベランダから
東京タワーまで飛んで行こうかと、思ったこともある。

星空は言った。

「君のポケットの中にある汚い札束を捨てればいいんだ。
 
 君と一緒に汚い札束を握りしめた奴らは
  
 まだあの光の柱の下で宴をしているよ。

 君が鳥になれたとしても、

 腐りきった奴らの酒の肴になるだけなんだよ」


だから僕はベランダに手をかけたまま、
鳥になるのを思い止まったんだ。

東京の夜。
孤独で冷たい。
贅沢で賑やかで
そして美しい。

わがままな僕は
一人になりたかったり、
大勢で騒ぎたかったり、
君と二人きりになりたかったり、
東京の夜の中で生きている。

Because the night belongs to lovers
Because the night belongs to lust
Because the night belongs to lovers
Because the night belongs to us