昨日の続きです。

土木学会編“日本の土木地理”の本が発行されたのは1974年(昭和49年)です。

その直前をざっと振り返ってみると、1972年には田中角栄元首相が“日本列島改造論”を発表してベストセラーとなり、全国各地で開発ブームが巻き起こりました。これが土地投機と地価の暴騰を招く結果となった一因でもあるわけですが。


また、1973年10月には、第四次中東戦争の勃発をきっかけに、アラブ産油国が原油の供給量を削減して始まったオイルショック(石油危機)というのがありました。

原油価格が一挙に4倍に跳ね上がり、灯油や生活必需品を買い占める動きも広がって物価は急騰しました。

列島改造ブームによる地価急騰で急速なインフレーションが発生していたところに、オイルショックにより相次いだ便乗値上げなどで、さらにインフレーションが加速されました。


1974年には、国内の消費者物価指数が23%上昇し、公定歩合の引き上げが行われたため、企業の設備投資などが抑制されました。

その結果、1974年はマイナス1.2%という戦後初めてのマイナス成長を経験し、高度経済成長がここで終焉を迎えたわけです。

“日本の土木地理”の原稿は、ちょうどこの頃執筆されたもので、高度経済成長時代の延長線上で書かれたものと思われます。


ここでは、土木学会編“日本の土木地理”の目次を抜粋して、その内容を紹介します。

1.土木地理学の成立:
①エクメーネについて、②地理学の出発とその発展、③土木事業・技術・工学、④土木地理学成
立の可能性

2.地形と土木構造物:
①清水トンネルと新清水トンネル、②天草五橋、③関門橋、④青函トンネル、⑤本州四国連絡橋


3.気候と対応:
①琵琶湖・淀川流域の特徴、②沖縄の台風、③凍上・凍害、④積雪地域における除雪・排雪・融
雪など

4.土壌の特性とその対応:
①北海道の泥炭とその対策、②関東ローム、③マサ土の特性と対策、④九州のシラス対策、⑤吉
野川流域の崩積土と対策

5.土地利用と食料生産:
①愛知用水、②有明干拓、③八郎潟干拓、瀬戸内の塩田

6.エネルギー獲得の地理的条件:
①国産資源「石炭」、②奥只見ダム群、③梓川の水力開発、④エネルギー需給と火力発電、⑤原
子力発電にかける期待、⑥地熱エネルギーの開発と利用

7.海岸線と商工業港:
①横浜港、②神戸港、③鹿島港

8.国土と交通:
①新幹線鉄道への歩み、②高速道路時代へ、③関西国際空港

9.都市:
①江戸から東京へ、②東京から大東京へ、③大東京から首都圏へ、④変革期の東京

10.災害対策:
①台風被害の概況、②利根川の水害と対策、③伊勢湾台風の被害と対策、④新潟地震と対策、⑤
三陸津波と対策

11.まとめ:付表

以上のように、内容的には今見ると、時代遅れのものもずいぶんあります。しかし、それは日本が戦後歩んできた道のりでもあり、今の日本があるわけです。
これらのことについて、今日書いても総花的になってしまうので、また機会を見て、当時の現状
・計画と現在ではどう変わっているかなど、トピック的に取り上げて書いていきたいと思います