クリミア侵攻と北海道、そして尖閣 | An Ulterior Weblog

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いま、ウクライナの内部の革命に乗じて、ロシアがクリミア半島を軍事制圧している。


おそらく、日本の多くの人は今の時点で心配するのはソチのパラリンピックに参加する日本人選手団のことだろう。

いや、それを心配するならまだしも、ソチ五輪が終わり、全く遠い国のお話として何も気にとめていないというのがほとんどだろうと思う。

しかし、それで済めばいいがというのが私の感触である。


話はずっと遡って第二次大戦の終結後、連合国軍による枢軸国の戦後処理が行われる。当時のソ連は領土支配に遅れてはならじと終戦間際に、日ソ中立条約を一方的に破り、南樺太に進軍、それは降伏宣言後も止まらず、千島四島に及び悪事を働いた。

樺太をソ連領としたのは連合国軍のソ連に対する報酬的なものとしてヤルタ協定の基づく密約によるもので、ソ連が奪ったのは千島四島だけではなく南樺太もなのである(戦後の日本側の領有権主張と国際法的な意味での領有権が一致するかどうかは見解がわかれるところ)。これは北海道の人たちもあまりきちんと認識していないように思われる。


さて、その戦後処理の中で、ソ連は北海道の一部も領有権を主張している。これはアメリカによって阻止される。つまり、敗戦国には一切の権利はない。あとは戦勝国間の妥協の出方ひとつで左右されるものなのだ。それが戦争というものなのである。勝てば官軍で好き放題にできるのだ。


時代は一挙に進んで、1990年前後に共産圏があちこちで綻び崩壊する。ソ連が終わりを告げる。ソ連時代、各地にロシア人の移住政策をとってきたことがこのとき多くの火種を残す。独立した地域に残った多くのロシア人はそれまで支配側にいたのと逆に虐げられる立場となり、本来の民族との軋轢が絶えることがない。表に出ていないだけの話で、これはバルト三国や旧ユーゴの国々で現地の人々から聞いた。

かくも民族問題は根深く簡単には解決がつかない。移民政策は国情がいいときは問題ないが、ひとたび不安定になると手のつけられない問題となる。


いま、ロシア、すなわちプーチンは何をしているのか。エリツィンのあとを引き継いだプーチンは強硬路線で動く。側近を固め、情報統制に力を注ぎ、暗殺も辞さない。リトヴィネンコやポリトコフスカヤが殺されたことは世界的に有名である。

チェチェンでの戦争やアパート爆破事件を自らしかけたりと交渉という手段ではなく自作自演的に理由づけを作って汎ロシア国家建設へと力づくで向かっているのではないかと思える。今回のクリミア進軍もその一環に過ぎないと思えてならない。親ロと反ロを識別し、親ロならいいが反ロとなった途端に猛攻撃をしかける。

事実、ソ連時代と同じく、今回のクリミア進軍ではロシア人を送りこんでもおり、その保護の目的の裏付けを自ら強化するようにしている。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYEA2200120140303

ソ連は日米安保が結ばれてしまったために、自国のそばに米軍基地がたくさんある状態を防ぐことができなかった。日本まで共産圏を拡大することに失敗したのである。


そして長く領土問題では日ソ間で決着をみずにいる。それが今、安部首相とプーチンの蜜月関係で明るい兆しが見えているという方向で報道されている。

しかし、プーチンは平気でよく嘘をつく。侵攻軍についてもしらばっくれている。そして目的遂行のためには冷徹だ。それで、敵対したのがコーカサスの国々である。もともとこの地域の共和国は極端な反ロではなかった。不合理にも妥協してきたことも多々ある。しかし、エリツィンが共産主義大国の不甲斐ない状況に対する民の不満を逸らすために戦争をしかけてからこの地域はずっとおかしくなったままだ。実は今も戦闘が続いている。報道されていないだけだ。報道を強権でねじ伏せているのがプーチンだ。

欧州には天然エネルギーをかなり供給している。いざとなれば小うるさい欧州諸国の首根っこを掴むことは簡単である。しかも、すぐ背後にいる同じ国連安全保障常任理事国である中国は現在、親ロで特に非難声明は出していないようだ。尖閣や南沙諸島を奪取したい中国はある意味、同じ穴の狢と言っていい。少なくとも邪魔はしないから、プーチンとしても踏み切れたのだろう。

なお、ウクライナのクーデターは西側が仕掛けたという意見もあるようだが、疑問に思う。出た動きに支援はしただろうが、仕掛けたのではないだろう。1つはロシア側からこの手の責任転嫁の談話が上がってないようなのと(グルジアのときには反論しており、実際にグルジアが挑発していた)、仕掛けたとしたら有効な対抗策を準備しておくものだからである。現状、有効手段を全く打てていないし、展望もない。むしろ、エネルギー問題などの多大なリスクを被っている。明確に有利な流れをもっていない中でこのようなリスクを冒す意味がない。シリア内戦で行動に出られなかったことが今回の進軍を許した。プーチンは欧米が何もできないと見透かしたのだ。逆にロシア軍の侵攻と半島掌握は組織立っている。ウクライナのクーデターを仕掛けたのはむしろロシア側ではないかと思えるほどである。(実態はどうもこのようだhttp://blogos.com/article/81519/ )


戦後処理の中で手にできなかった北海道という極東の拠点を、合法的に樺太や千島からロシア人を大量に経済的にいまひとつの北海道に送り込み、そのロシア人を保護するとの目的で進軍して来ないという保障が未来永劫無いなどとは間違っても言えないのである。

それをやりかねないのが嘘つきのプーチンという男なのだ。我が国のボンボン首相など赤子のようにあしらうことぐらい朝飯前である。今はニコニコ親しい関係で親ロの可能性を残している日本。それでロシア人が多く入った後で、もし反ロとなった場合、あるいはそういう政権ができた場合、黙ってみていることはないだろう。そのとき在日米軍は自衛隊とともにはたして動いてくれるのだろうか?


「ウクライナはよくわからないが、まさか日本に」と思う人は多いだろう。しかし、ユーゴ紛争のときには即座にNATO軍は動き、空爆をしている。なのに、今回は明白な侵攻を全く傍観している。相手が直接の大国であるロシアだからだ。オバマとて直接ロシア軍とやりあって傷が浅くて済むなどとは思っていない。同じことはイランやイラクも同様だ。小国にはすぐ派遣するが大国には手を出さないのが大国だ。国連は無力なのはこれまでもよくわかる通りで、ウクライナの新政権が大きく譲歩する、あるいはクリミアの割譲ということでもない限り終結は見込まれないだろう。もし割譲となった場合、それは次はどこにしかけて広げるかということになるのである。とりあえずはプーチンの元妻の地元でロシアから飛び地になっているカリーニングラード周辺と推定している。いま、バルト三国は非常に警戒しているはずだ。その次は中央アジアかそれとも極東なのか。。。(プーチンは2年前に極東開発省を創設している)


私がプーチンなら思う。アメリカを追い出し、極東を押え、さらに高度な生産技術を持つ日本を手に入れたら、ロシア帝国連邦にとってこれほどの繁栄の源となるものはない。そのためにはまず親ロになるようにしむける。いずれ、全体が手に入るなら、いま、千島四島を渡すことぐらいどうということはない。ここを日本に戻し、日露で共存し、ウラジオだけでなくカムチャツカ含め軍備を増強、反ロを示したら再度、四島を拠点に動かし始めればよい。

中国はロシア帝国拡大には邪魔である。しかし、人口が多すぎる。自国への引き込みは無理だ(ロシア人は日本人は好きだが中国人は嫌っている。チャイナタウンも政策的に抑えている)。ならば、一時的にせよ友達になって、一緒にユーラシア大陸を支配することにしよう。日本は1つの共和国の位置づけで十分だ。要は彼ら日本人は友達になってくれるのか敵なのか。

プーチンはロシア人としての誇りが強い人間なのだろう。ロシアをぼろぼろにした欧米列強を憎んでいる。自分たちをぼろぼろにしたやつらを逆にぼろぼろにしてやる番だと。そのためには手段は選ばない。だから問題なのである。


それより、日本にとってさしあたっての脅威は今はロシアと関係のよい中国がこのどさくさに紛れて尖閣を自分の領土にしようとしかけてくることだろう。以下は本当かどうかは何とも言えないが、中国人民解放軍にとって尖閣が重要であることには変わりはないようである。

http://nikkan-spa.jp/596028

アメリカも世界で好き勝手に戦争をしかけていたのを我々は指をくわえて黙っていた。ベトナムしかり、湾岸しかり。その前は英仏だった。今度はロシアや中国がその代わりをやろうとしている。

ちなみに19世紀のクリミア戦争では、主戦場の黒海だけでなく、英仏の海軍がカムチャツカ半島に進軍している。また、どさくさ紛れにアメリカのペリーが日本に開国を迫ってやっても来ている。外交と戦争とはこういうものである。