損益分配と現金分配 | よく分かるSPC(特別目的会社)の会計・税務

よく分かるSPC(特別目的会社)の会計・税務

不動産証券化によく使われるSPC(特別目的会社)にまつわる会計・税務を分かりやすく解説しています。

SPCで稼いだ利益は投資家に分配されます。

この分配には、「損益分配」「現金分配」がありますが、「何が違うの?」と聞かれることが往々にしてあります。

会計を知らないと今一つピンとこないかもしれないので、簡単に会計のルールをご説明します。



会計は、ざっくり言うと取引を記録することですが、「取引を記録する」とはどういうことでしょうか?

不動産投資のブログですから、不動産投資の取引を例にしてみましょう。

不動産投資で投資家が求めているものは賃料収入ですね。

賃料収入を生むには、オーナーと入居者が賃貸借契約を結ばないといけません。

契約すると、晴れて月々の収入を得ることができますが、通常の賃貸借契約では、賃料は前金であることが多いです。

賃貸物件を借りたことがある人は分かると思いますが、翌月分を今月末までに払うといったものです。

投資家サイドでは、この今月の入金をまず記録しますが、受け取った段階では利益でもなんでもありません。

翌月になって初めて投資家の利益となります。

これを発生主義といいます。

翌月になって初めて利益を得る権利が発生するのです。

それまでは単なる前受金であって、むしろ預かっているだけのお金、つまり、今月は相手のものということになります。



さて、これを分配で考えてみましょう。

1年間で1000万円の賃料を得る契約があったとします。

簡単にするため、経費は0円とすると、1年間でSPCが稼いだ利益は1000万円になります。

ここで言う利益とは、先ほどの「発生主義」による考え方になります。

つまり、お金をもらっているかどうかは関係なく、契約上、収入を得る権利を持っていれば、それは利益として捉えます。

SPCで1000万円の利益が発生したわけですから、その利益を投資家に分配しないといけません。

この発生主義で捉えた利益の分配を「損益分配」と言います。

お金をもらったかどうかに関係なく発生する利益ですから、「損益分配」=「お金を分配する」ことにはありません。

これに対し、実際にお金を投資家に払うことを、「現金分配」と言います。

どうでしょう?

違い、分かりますよね?



この違いが、税金計算上は非常に重要になります。

詳細は別の機会に解説しますが、投資家に対して損益分配をした場合、投資家はそれを自分の利益としてカウントし、法人税や所得税の計算対象に入れないといけません。

お金をもらってなくても、利益に対する税金について納税義務が発生します

お金をもらっていない損益分配で税金を払うのです。

理不尽ですよね。

でも、税金とはそういうものなのです。

まあ、普通は損益分配と現金分配はほぼ同時なので、あまり心配する必要はありませんが、違いは十分に理解しておく必要があります。



ちなみに、現金分配に対する税金はどうなるか?

現金分配時にSPCによっては源泉徴収という形で税金を取られます。

この場合、税金を引かれたあとの残りの金額を投資家は受け取ることになります。

何だか税金の二重取りのように思われるかもしれませんが、ここで源泉徴収された税金は、損益分配で計算した税金から控除することができますので、ご安心ください。

ただし、損益分配に課せられた税金から控除できるかどうかは、各々のタイミングによります。

タイミングによるズレが生じることもあり、その場合は翌年の税金から控除といったことも起こりえます。

このあたりは少し説明が必要になりますので、また別の機会に。

まずは「損益分配」と「現金分配」が違うものだということを理解してもらえればと思います。




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本ブログでは、SPCに関する予備知識のない方でもスラスラ読んでいただけるような文章を意識して書いています。
結果として、法律上の詳細な説明を割愛したり、表現が多少雑になったりすることがありますが、実際の投資にあたっては、専門家の助言を得て実施するようにしてください。