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アニリール・セルカン
宇宙エレベーター

宇宙飛行士候補者で、NASAとのプロジェクトに参加して宇宙エレベーターの設計・開発をおこなっている著者の本だけに、読むまでは、タイトルどおり「宇宙エレベーター」に関する開発のエピソードや、宇宙理論的な内容が書かれているのかと思っていた。
が、実際に読んでみて、ミゴトその期待は裏切られた!(といっても、いい意味で。)

もちろん、宇宙エレベーターの開発が現在どこまで進んでいるかについてや、宇宙理論にも触れられてはいるのだが、本書がユニークなのは、建築構法を専門とする著者の頭の中の引き出しが、そのままギュッと凝縮されたかのような展開になっていて、著者がたどってきた「経験という旅」、もしくは「想像の世界」を一緒に旅する、というスタンスをとっているところだ。

内容も、こども時代につくったタイムマシンのエピソードや、ショートストーリー、4次元の家のモデルや船のように水面を移動する都市のCG作品...etc.と多岐にわたっていて、創作のプロセスや思考回路がそのまま手にとるようにわかるようになっている。
まるで、ブログを一冊の本にしたような軽妙な語り口と、時々飛び出す超日本人的なたとえ話の数々は、思わず著者がドイツ生まれのトルコ人であることを忘れそうになるほど。

「人類は、人生のあらゆる困難に打ち勝つことができる。その気になりさえすればね。好奇心と創造力を発揮させなさい。彼らの目を開かせてやりなさい。目を覚ませ、ってね。」
著者の世界観そのもののメッセージも、あちらこちらに登場。

そして、終盤は思わぬ方向へと!?話がすすみ、ノアの箱船の科学的検証と竹内文書との関係性、出雲大社と古代マヤ・アステカ遺跡の建築的な共通点、古代メソポタミア・シュメール文明と遺伝子操作の技術、インドの古文書に登場する航空機ヴィマーナの科学的裏付け...などなど、まるでどこかの雑誌のような展開に...!(※念のため断っておくと、こういった内容が書かれているとは知らずに購入しただけに、さては、呼んでしまったかもと痛感!)
そしてすかさず、プロフィールを読み返して納得!
著者もまた「ムー」世代だった...。

【目次】

プロローグ 僕は旅のガイドブックを買ったことがない
第1章 宇宙の旅
・まだ見ぬ世界への好奇心を誰も止めることはできない
・未来へ延びる宇宙のエレベーター
・未来の僕へと続く扉はこうして開いた

第2章 次元の旅
・池の中の鯉 宇宙の中の人間
・宇宙の大きさは常に変化している
・サンタさんは異次元トラベラー
・4次元って本当に時間なの?
・宇宙のソトから見た揺らめく宇宙たち
・上から見れば、よく見える
・「4次元の女」はいいオンナ?

第3章 時間の旅
・タイムトラベルで時間を越える
・過去、現在、未来へと時を越える子どもたち
・時間の始まりはいったいどこなのか

Dimension Travel
・タイムトラベルは、もう一人の自分と出会う旅

第4章 歴史の旅
・知識の源泉はどこに眠っているのか
・シュメールの石盤が過去のヒミツを語りかける
・古代技術の結晶「ノアの箱舟」
・過去から未来へ……? 空飛ぶ夢の向かう先
・古の人々が残した知識
・滅びと進歩は、いつでも背中合わせ

第5章 原子の旅
Dimension Travel
・全ての旅は原子から生まれる

・旅の目的地は、自分で決める
・原子の旅は終わることがない
・人類の旅は、イヴで始まり、イヴで終わる
エピローグ 僕は旅のガイドブックを買ったことがない