「第57回理学療法科学学会学術大会」報告 | Tatsumi Labo in Kio Univのブログ

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「第57回理学療法科学学会学術大会」報告

2012年4月22日に表記の学会が埼玉医科大学かわごえクリニックにて開催されました。当方は、午後の演題発表にて「Athletic Injury Rehabilitation Adherence Scale (AIRAS) の開発過程」と題する研究発表を行いました。トップバッターとして登壇しましたので、ある意味、重責であり、緊張しました。


タイトルにあるアドヒアランスという用語は、元来のコンプライアンスという考え方の反省から生まれたもので、患者さんが主体となり、自らの医療を自らが守るという自己決定の意思に基づいた行動を意味します。リハビリテーション医療において、メディカルスタッフが患者さんへの運動処方の効果を期待するには、患者さんのアドヒアランスに係る評価を欠いてはなりません。患者さんのアドヒアランスが高いほど、傷害回復や動作回復の見込みが高くなるからです。また、アドヒアランスは当方が専門とする心理学でもなおざりにはできない概念であり、メディカルスタッフと患者さんとの関係性や患者さんへの心理的介入の有効性を推定する際にも重要な観察指標となります。


しかし本邦では、コンプライアンスの観点に立つ研究や療法継続に関する研究については、若干数の論文が認められているのですが、アドヒアランスに係る行動査定の観点を広く捉えられたものはありません。そこで今回の研究発表では、欧米で開発されたアドヒアランス指標を基にし、現在浸透しかけている本来的なアドヒアランスの考え方に則した指標を開発することを目的としました。


この研究を推進するそもそものきっかけは、昨年、当方が投稿準備にある書きかけの原稿に目を通された某先生からの指摘を受けてのものでした。15年程前、臨床心理士である学生時代の恩師がこの方面の研究を最初に押さえておくことの大切さを説いていたこともあります。もっと早くからやっておくべきでしたが、当時は気づきがありませんでしたm(_ _)m


この研究は、共同研究者である英語科の先生による校閲を経て、理学療法学の先生の協力の下、データ収集に取りかかって頂いたことに始まります。今回の報告は小サンプルによる途中経過ではありますが、このテーマは実際に取りかかると実に奥深く有意義なものであることが分かってきました。また、当方が専門とする運動心理学の立場から、リハ領域(理学療法学)に参入することの意味をも感じさせられています。


今後の課題としては、きちんとした厳密な論文に仕上げることです。現場の先生方に有用とされるような指標(チェックリスト)の開発を射程に入れ、日々研鑽したいものです。


注:記事を引用される方は、必ず引用元(URL)を表記下さい。なお、本研究報告の詳細は、「理学療法科学, 第27巻第2号, 6頁」に掲載されております。