「ああ、あの時の・・・・」横綱はすぐ思い出したようだった。
追いついてきたねえちゃん。
オレは、横綱にぶつかった。横綱は、がっしりオレを受け止めた。
オレは、渾身の力を込めて横綱の体を押した。
地面に投げつけてやろうと思った。
でも、横綱は山みたいにでっかくて、ずっしりしていて、微動だにしないんだ。
ちくしょう!!
オレは何度も何度も横綱に向かっていった。
横綱はでっかい胸にオレを思う様ぶつけさせ、力を入れて押すオレを受け止めた。
ちくしょう!!
がむしゃらに向かっていった。
力がなくなって、へとへとになるまで・・・。
くそーっ!
ちくしょうーっ!
ぶつかっていく度にオレをがっしり受け止めてくれる、
力強くて、暖かい、横綱の胸・・・。
「うわああぁぁん!ねえちゃーん」
「もういい、もういいよ、葉太。強かったね!ねえちゃん、見てたよ、葉太の強い所!」
「横綱!待ってろよ!オレが大きくなって、おまえを土俵下に叩き付けてやるからな!
それまで、引退するんじゃないぞ!」
横綱は、オレに手をあげて、ニッと笑うと去っていった。
とうちゃん・・・・・・。
オレ、とうちゃんってしらないけど、もしいたら、あんな感じかな。
それからしばらくして、横綱・かぼちゃ山の結婚パレードがにぎやかに行われた。
老いも若きも、みな、若い二人の前途を祝福した。
わたしは、遠くから、一目ふたりの姿を見ただけだった。
おめでとう。横綱。
おしあわせに・・・・・・。
わたしはいま、あなたと同じくらいしあわせです・・・・。